第3話 祭りの余韻と新たな訪問者

越後湯沢の朝はいつも清々しい。るんちゃんの「気まぐれ卵」も、昨日の祭りの喧騒が嘘のように静かだ。店の前を流れる小川のせせらぎが、心地よいBGMを奏でている。そんな穏やかな朝、店には珍しい客が訪れた。


「すみません、温泉卵を買いに来たんですが…」と、若い女性が照れくさそうに店の入り口に立つ。彼女は都会から来た観光客で、るんちゃんの温泉卵が評判を聞きつけて足を運んだのだ。


るんちゃんは親しみやすい笑顔で迎え、「いらっしゃいませ、どうぞごゆっくり」と案内する。女性は店内の雰囲気に心を奪われながら、るんちゃんと会話を楽しむ。


「越後湯沢は初めてなんですけど、こんなに素敵な場所だとは思いませんでした。温泉も楽しみなんですが、これが一番の楽しみでした」と女性は言い、手に取った温泉卵を眺める。


るんちゃんはその言葉に心からの喜びを感じつつ、女性に温泉卵の作り方や、なぜこの地で温泉卵が有名なのかを説明する。話の途中で、彼女は昨日の祭りで得た特別なレシピのことが頭をよぎる。もしかしたら、この新しい知識を共有することで、さらにお客さんに喜んでもらえるかもしれない。


その後、女性はるんちゃんの勧めるとおり、温泉卵を購入する。一つをそっと口に運び、その味に感激した様子で「とても美味しいです!この味は忘れられないですね」と満足そうに言う。


客が去った後、るんちゃんはふと考える。彼女の作る温泉卵が、遠くから訪れる人々にも喜ばれるのなら、もっと多くの人にその味を知ってもらいたい。その思いから、彼女はインターネットを通じて「気まぐれ卵」の温泉卵を販売する計画を思いつく。


この小さな一歩が、やがて大きな波紋を広げることになるとは、その時のるんちゃんにはまだ知る由もなかった。

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