越後湯沢の卵

第2話 温泉卵と秘密のレシピ

朝の光がまだ柔らかい中、るんちゃんは「気まぐれ卵」の扉を開けた。昨晩の祭りの疲れが残る中でも、彼女は新たな一日に向けて店を整える。昨日の祭りで話題になったのは、るんちゃんの温泉卵だけではなかった。地元の古老が彼女に耳打ちした、「幻の温泉卵レシピ」の存在が、彼女の心をとらえていた。

そのレシピは、昔からこの地に伝わるもので、特別な日にだけ使われるという。古老はるんちゃんにだけその存在を明かし、「真の温泉卵を極めたければ、そのレシピを見つけ出すのだ」と告げた。興味をそそられたるんちゃんは、その秘密のレシピを探し始めることを決意する。

今日は、その第一歩として、祖母が残した古いレシピノートを手に取った。ノートはほこりをかぶっており、長い間、触れられることはなかった。ページをめくる手が震える中、彼女はあるページに目を留める。そこには、「温泉卵—特別な日のレシピ」と記されていた。このレシピが、古老が言っていた幻のレシピなのだろうか。

るんちゃんは、ノートに書かれている指示に従い、特別なスパイスと温泉水を使って卵を茹で始める。卵が茹で上がるのを待つ間、彼女は店の前で常連客の老夫婦を迎えた。彼らはるんちゃんが卵を茹でているのを見て、興味深そうに話しかけてくる。

「るんちゃん、その卵、何か特別なのかい？」

「ええ、今日はちょっと試してみたいレシピがあって…」るんちゃんは話しながら、内心ではレシピが成功するかどうか、不安でいっぱいだった。

やがて卵が茹で上がり、彼女はそっと一つを割ってみる。中からは、いつもとは違う色と香りが立ちのぼる。一口食べてみると、その味は彼女の期待をはるかに超えるものだった。老夫婦も試食し、感動のあまりに言葉を失う。

「これは、ただものではないな…」

その日、るんちゃんは多くの客にその特別な温泉卵を提供し、皆から絶賛される。しかし、彼女の心の中には、このレシピをさらに深め、もっと多くの人に喜んでもらえるような温泉卵を作り上げたいという思いが芽生え始めていた。