宣告

 一番に浮かんだのは両親の顔だった。でも両親には説明があるから除外するとして、次に浮かんだのは親友だね、…ずっと一緒だから。急にいなくなられても困るかなって。だから伝え方とかもいろいろ考えた。言わないで喧嘩別れなんて、そんなのこちらがわの都合で、偽善で、私は美徳だとは思わないし。それでも、どうしようか悩んで親友の母親に相談した。そうやって、私はどこかで肯定されることを期待していたんだと思う。

「あなたは割り切って過ごせるからいいでしょうけど、うちの子はあなたがいつ死ぬか怯えながら生きなきゃいけない。それがどれだけ負担になるか、あなたは、考えてくれたのかしら。」


「…っ、いいえ。」

まっすぐに見据えられて自分がどれだけ楽観的に考えていたか思い知らされた。目の前にいる人は私ではない、いつも自身の子供を一番に考える親の鏡のような人なのだ。

「言うなら、あなたが病院から出られなくなってからにしてちょうだい。看病に行かないと会えないくらいになってからに。」



私がうなずくことで会話は終わった。正論だと、誰のエゴも混ざってないと、そう思った。

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