3ヶ月
琴寄 ひかる
小説家
「私、高校の現代文が一番好きだったなあ。」
窓を見ながら唐突に彼女はそう言った。
「どうして?」
不思議そうに見つめる私に目を向けて、それからふわりと笑う。
「ネタがポンポン出てきたから」
そっか、なんて当たり障りないことも返せずにその場は沈黙に包まれる。
小説家らしい、そう思った。高校を出てすぐに小説家としてデビューした彼女の名は世界にとどろき、羽ばたいている。
当の彼女はずっとこの狭いベッドに縛り付けられているというのに。
「どの授業が一番だった?」
「…森鴎外の『舞姫』」
ふわりとカーテンが揺れて、風がびゅうと部屋に侵入した。
「あれが一番浮かんだ」
にひっと笑う彼女。いや、それは私の推測である。おそらく、壁しか見えない窓の向こうには彼女の世界が広がっているはずだから。
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