第30話 ひまり16歳 4

 ひまりが2年生になった。桜の花びらも散り、葉桜になっている。もうすぐひまりの誕生日だ。

 産院の庭に咲く小手鞠の花に日が差してきれいだった日に生まれたから、こんなふうに人生に日が差すようにと名付けられたそうだ。以前、中学の入学の時の自己紹介で名前の由来を発表させられた時に、そんな話を聞いた。ご丁寧に幼少期の写真を張ってレポート提出までさせられ、写真をほとんどもってないひまりは、探すのに苦労した。斎藤一が託児所に問い合わせ、皆で写っているのを探して持ってきてくれた。お誕生会の花を頭に飾った写真は、気になって両手で花をさわっている様はとても愛らしかった。あのレポートはどこにしまってあるのか聞いてみなくては。

 とにかく、誕生日が近い。今年はなにがなんでもその日の夜のスケジュールが押さないように、17時には家に帰れるように頼んである。

 その日は内輪でパーティをする予定で、準備に余念がない。ホームパーティとはいえ、久しぶりに義顕や信康、こまちちゃん、ハウスキーパーの田代さん、ひまりと仲のいいコーディネーターのスズシロ、斎藤一や今年は氏真も来日するので、結構な人数だ。皆ひまりをかわいがってくれている。ありがたいことだ。

 ケーキも頼んだし、田代さんが張り切ると言っていたが、たまには一緒に楽しんでもらいたいので、ケータリングも頼んである。

 思えば、ひまりと一緒になって、7年になるか。ひまりの10歳の誕生日のすぐあとからだから。その時、俺は数えの21歳で兄になったつもりだったのに、いつのまにか父のような保護者面をするようになり、あるときは、兄弟で友達で今ではどんな関係なんだかわからない。もう手放せなくなっているのだから、こいつは俺の者だし、ひまりもそう思っているよな?ん?

 朝、起きたらおはようのキスで始まり、いってきますのちゅーをして、ただいまのハグとぶちゅっで、おやすみのおでこに、ほっぺに、耳の裏に唇を這わせ、後ろから羽交い絞めにして眠らないと、寝付けなくなっている。それ以上のことは、成人するまでお預けだが、(信康に犯罪者にならないよう会うたびに再三指摘を受けている)こんなことまでしているのだから、思いは通じ合っているよな。言わなくてもわかってるよな?

 それより今の問題はいまだに決まっていないプレゼントだ。去年は遅らばせながら、入学祝いと兼ねて携帯を送った。今時の高校生はなにが欲しいのか、見当もつかないので、取りあえず、手近にいたスズシロに聞いてみた。

「アクセサリーはどうですか?気軽につけられるようなプチネックレスとか、鹿さんの束縛欲を満足させるペアリングとか?幸いにここの近くにいくつかお店がありますよ。」

 撮影の場所が、南青山だったのは幸いだった。昼休憩の合間にスズシロに付き合ってもらい、一目で気に入ったペアリングを包んでもらった。いつでも身に着けていられるようにチェーンも付けて。

 ひまり、喜ぶかな。

 もうそれだけで、テンション上がりまくりで、

「今欲しいのは、デレ顔ではありませんよ。目力強めに、こっち目線で。」

と、長年の付き合いで気の置けるカメラマンに叱られる始末だ。

 

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鹿之助,惑い悩む憂う @hosigame

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