第15話 苦難始まる 1

 こんなときに頼りになるのは、こまちちゃんだ、と3人が一致して呼び出した。

「こんばんわ。お久しぶりです。これ、頂き物だけど鮭とば、美味しいよ。飲もう。」

 ここで、鮭とばと、酒の用意をしようと台所に行ったら、いた。端っこに女の子。フリーズしている。こまちちゃんもフリーズする。

「こらー、これどういうこと。この娘 誰のお持ち帰り?家出少女捕まえてとうとうあぶない商売はじめたの?早くだれか説明しなさいよ。場合によっては警察ざただよ。あんまり阿漕なことしなさんな。」

「ちょっと小町ちゃん、すごい立て板に水の暴言。そんなことするわけないじゃん。俺たちそんなに信用されてない?」と、義顕。

「落ち着いて、こまちちゃん。だから困って来てもらったんだから。今鹿之助が説明するから。」と、信康。

 その鹿之助というと、窓際で仁王立ちになり、静かに我関せずといわんばかりに静観していた。

「鹿之助、なに余裕ぶっこいてるんだ。お前が引き受けて来ちゃったんだろ。小町ちゃんに説明。早く。」

「この子は、ひまりという。よしなに。」

 その先をしばし待ってた大人3人は、

「それだけかよ。」

と、同時突っ込みを入れた。

 ひまりは、口を尖らせたまま、こまちちゃんにぺこっとお辞儀をして挨拶をすると、一言も話さない。とりあえず夜遅いし、氏真の部屋で休ませることにした。

「今日は、諦めてここに寝ておけ。これからおまえの今後を打ち合わせする。」

「だったら、俺もここにいた方がいいだろう。」

 俺って言った?女の子が俺って。

「いえいえ、夜も遅いので、お子様はお休みください。」

 子供扱いをしたことでひと悶着あったが、氏真のベッドに縛り付けてきた。

 4人でぼそぼそと飲み会が始まる。脇には一升瓶が3本。おちょこでは間に合わない4人は、大ぶりのグラスでちびちび。誰かが話を始めるか牽制しあっている。

 結局、説明をしたのは義顕だった。斎藤一が無理難題を押し付けていったこと、これからのことを相談したいこと、出来れば小町ちゃんにたちに預かってほしいこと。

「無理です。私に頼まれたんじゃないし。」

「俺たちだって無理だろ。女の子なんか。ほっといても大丈夫なくらい大きいとかだったらまだしも。いや、かえってだめか。非常にまずいことに、まだお世話が必要な年頃だろう。」

 普段何にも動じない義顕が目を泳がせている。

「前にここにいた斎藤一、覚えているか?そいつが預かってくれって連れてきちまった。気は強いんだがほんとにしゃべらない子でな、やっと聞いたところによると、今までの小学校に通いたい。今までの家に一人暮らししたい。ちなみに小中高一貫校で自分のことは自分で出来るので、親が必要な時だけ付き添いしてくれと。誰にも迷惑をかけたくないそうだ。ここまで聞くのに苦労したんだぞ。とにかく口数が少なすぎる。」

 鹿之助はある程度事情を聞かされていたらしく、

「どうも組長とは血縁関係はないらしい。なんか俺宛に手紙が入ってた。」

 鹿之助はかいつまんでぽつぽつと説明を始める。

「小学校に上がるちょっと前まで母親と住んでいたそうだ。6歳の時に母親が病死したあと引き取り手がいなくて施設送りになるところ、何を思ったのか、縄張り内の店につとめてたんだからって組長が引き取ったようだ。斎藤一が言うにはあの子への遺産は組長が残していたようで、ある程度まとまった金が通帳に入っているから、心配いらないんだそうだ。あと、後見管理人には組の顧問弁護士がついている。」

 普段、何事にも動じない信康も、この男にしてはめずらしく、

「なにが迷惑かけたくないだ。ほっておけってか。ほったらかしたって子は育つっていうけどな。あの子はほんとにほったらかし状態だったみたいだぞ。話は通じてるんだが自分からほとんど話しない。ぽつぽつ単語をつなぐだけだし、するする言葉が出てこないっていうか、なんていったらいいか。ちょっと普通とはな、4年生にしては、な。コミュニケーション能力不足。」

 義顕も、憤りを隠せないふうで、さっきから心を落ち着けようと、ため息ばっかりついている。

「子供ってもっとこう、かまってほしくてもっとこうるさいもんだよな。だけど、あの子は気い使いすぎだし、かまってくれるなオーラが出まくってるし。見た目破壊力あるのに人との関わり合いが希薄っていうか。」

案外と人情にグッとくるタイプなようだ。

 ここで小町ちゃんが、

「明日、私と鹿之助さんで、ひまりちゃんを一度お医者さんに診てもらってきませんか?心療内科の良い先生を探してアポ取ってみます。」

 と、提案してくれた。いったい組長は、ひまりとどういった暮らしをしていたんだろう。

 

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