人間の中身と歪の人形

aviane

第1話 魂を求める人形。

人間の中身は一緒だ。そんなことを言う芸術家がいた。

ソイツが言うには美しい誰もが認める美女も脂ぎった誰もが汚いと思う中年期男も、中身を出せば血肉の塊だと。

その芸術家はその血肉が一番“美しい“と言っていた。

イエズスの血肉が粗末だが美味しいパンと美味しいワインのように。


そんな芸術家が造ったのは歪な美しい人形だった。


ぼく。


ぼくは『魂』を求めるよう造られた。人間の唯一の違いの差が出るモノ。彼はそれこそは、『魂』だと信じていた。

芸術家の歪んだ欲望によって造られたぼく。


ーーーー・・・・・・ーーーー


時は立ち、、、数十年経ってその芸術家が死んだあと、ぼくは古いアンティークショップの出窓ウインドウに飾られた。

誰もが何かに追われるように急いでいる世界でぼくに目を向けてくれる人間はいなかった。


ふ、と数ヶ月経った時、美しい老婆がぼくのいるウインドウを見つめた。目が合った。彼女はにこり、と、上品な笑みでぼくを見て幸せそうだった。


カラン♪コロン♪

ここのアンティークショップのドアを開けてベルが鳴る。


ぼくはこの老婆のお目にかなったようだ。

店長がお買い上げいただきありがとうございました。と言ってぼくを包んで老婆に渡す。


ーーー・・・・・ーーーー



またあれから時が経ち、老婆は相変わらずぼくの手入れを怠らない。

『あんたを見ていると私の爺さんの若い頃を思い出すねえ。』

そんなことを言って撫でてくれる。

その手つきは柔らかく心地よい。


『私の爺さんはね、偏屈な芸術家でねえ。なんか変なことを言っていたけど腕前だけは天下一品だったさ。』

『作品を造っても売ろうとせずに仕事と両立して生活していたのよ。私のために。まだあるわよ。。押し入れに。あなたの兄妹達が。』



ここでぼくは疑問を抱く。ぼくに兄妹達がいる?


『ふふ、驚いたでしょ。あの人も天国かどこかで驚いているかしら?』



『一目でわかったよ。あんたがあの人の唯一の自慢の残していった作品だってこと。。懐かしくなって泣きそうだったわ。』


ーーーーぼくを造った芸術家はとうに『魂』のありかを知っていたのだ。




それは自分の妻への『愛』だったのだ。

ぼくは涙を流せたらいいな。。と人間みたいなことを思った。


fin.





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人間の中身と歪の人形 aviane @LiLiaviane1987

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