第六話 最高の日
今日、
長く思い続け、しかしかなわぬだろうと半ば諦めていた自身の恋。
この恋が実ったのである。
自身のこれまでの人生において、これほどの幸せはなかっただろうと
思いつつ、この喜びを心の中に隠しきれない
現在時刻は16時を少し過ぎたところ。
は、放課後の人通りの多い廊下をわき目も降らず一心不乱に思い人のいる教室へと歩いていた。
その背後を、怒りと絶望にその目を澱ませた少女がつけていることなど、幸せな彼女は全く気が付かなかった。
「おいあれ見ろよ!
「なんで通常課程の教室しかない
「図書館に本でも取りに来たんだろ」
「それはないだろ。向こうの図書館の方が蔵書量多いって話聞いたぜ」
「そんなことはどうでもいいだろ。見ろよ
「真面目な顔の
「さすが
日本一の有名人であり、我が校一の美女である
それだけでも珍事なのに、明らかにご機嫌で、今にも鼻歌でも歌いだしそうなほどに楽しそうな笑顔で歩いている。
多くの生徒が彼女を見て、その美しさやご機嫌の訳について、話を膨らませていた。
一方、周りの話し声など気にも留めない
「すうっ、ふぅ。さあ、行きましょう。」
『ガラガラガラッ』
「失礼します。
そして彼女は、生徒もまだ多く残っている放課後の教室へと入っていった。
周りの目線など、気にしないまま。
ーーーーー
「失礼します。
この声を聞いた
なぜ今、この場所で彼女の声が聞こえるのか。
「
彼女が言った。
いくら放課後とはいえ、いまだに多くの生徒が残っているこの教室内で、彼女は周りの目など一切気にせず言い切った。
「おい、あいつ…」
「なんだよあいつ、
「わざわざこっちの教室まで迎えに来るなんて…」
周りから嫉妬の交じった声が聞こえる。
「どうしました?早く帰りましょう」
美しく、しかし一切引く気の無い笑顔を向けながら
そして、
「わかった!すぐに帰ろう!」
一刻も早くこの場から逃げることを選択した。
「はい!帰りましょう」
そこで、
「
「すまん
「あいつ…お姉さまを呼び捨てに…」
しかしそれを聞かなかったことにして、急ぎ教室に戻っていったのだった。
しばらくは何もしたくない。
そんな心境であった。
ーーーーー
帰りの電車の中、
最初は明日
もの凄い笑顔の
彼女はニコニコと笑いながら隣に座るだけで、他に一切の行動が無い。
こちらから話しかければ返事ははしてくれるものの、すぐに話が終わってしまい、また彼女がニコニコとこっちを見ているだけの時間に戻ってしまうのだ。
いよいよこの沈黙にいたたまれなくなった
「あのー、
「ふふふっ、なぜ急に敬語なんですか?」
「いや、少し緊張して」
無言で笑顔のまま見られているのが怖かったなどとは言えなかった。
そんなこちらの内心など知らない彼女は笑顔のまま答えた。
「そうですか。ふふふっ、今更緊張なんてやめてくださいよ。先の質問の答えですが、横にあなたがいると思うと嬉しいのです。ずうっと思い続けていた人が隣にいてくれる。こんなにうれしいことはありません」
「そ、そうか。ならいいんだ」
そんなぎこちない会話も終わり、また沈黙が訪れる。
しかし、
彼女の内心を知った今、笑っている彼女を見るだけで
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