第5話:風になびくパンツ。

優奈から「ねえ、今度うちに来る?」


って言われた僕は、そりゃなにはさて置いても優奈の家に遊びに行くよね。

で、土曜日、彼女の家を訪ねた。

優奈の家は上部地区の一般的な日本家屋の注文住宅だった。

細い道を走って優奈の家まで原付で20分ほどかかった。


目の前に見える優奈の家・・・少しどきどきする。

玄関ドアのチャイムを鳴らす。


「は〜い」


家の奥から優奈の声が聞こえた。

しばらくすると優奈が廊下を走ってくる足音が聞こえるて、すぐに玄関を

開けてくれた。


「お待たせ、いらっしゃい」

「上がって?」


「お邪魔します」


「お父さんいないから・・・私の部屋でゆっくりして?」


僕が玄関から上がると、優奈は自分の部屋に僕を連れて行った。

階段を上がって、右の部屋が優奈の部屋。

左が父親の部屋らしい。

親子二人で生活するには広すぎる家。

どことなく人気のないような殺風景な気がした。

そりゃそうかも・・・昼間は誰もいないに等しいんだから・・・。


和室の部屋なので優奈が座布団を出してくれた。


「ごめんね、ソファとかないから」


四畳半にベッド、小ぶりのテーブルに洋服ダンスにクローゼット。


「ちょっと待っててね、テレビでも観てて、今飲み物持ってくるから」


そう言って優奈はテレビをつけると階段を降りて行った。

僕のためだろうか、南側のベランダのサッシドアが開け放たれていた。

上部だからとうぜん山が見える。


で、目に入ったベランダに干してある洗濯物。

その洗濯物の中にある小さな布切れ。


パンツ?


それは風になびく優奈のパンツ。


わざと干したままにしてあるのか?・・・まさかな。

そんなことはしないだろう。

うっかり取りこんでないだけなんだ。


それは見ちゃいけないもののように思えた。

僕は女兄弟がいないので、女の子のパンツなんてまともに見たことがなかった。

そりゃ雑誌やグラビアで下着姿の女性の姿は見たことあるけど生のパンツを

見るのは今日がはじめて。


あんな可愛いパンツはいてるんだって思いながら、後ろめたい気持ちになった。


すぐに目線を変えた。

でも、テレビなんか目に入らなかった。

いけないことを想像してしまう・・・今まで心の奥底にしまっていた僕の

欲望が顔を出しはじめる。


妄想はどんどん膨らんでいく。

あんなことやこんなこと淫らなことを妄想する・・・自分でも自分がイヤだ

なって思うけど・・・それって悪いことじゃないないはず。

好きな子を求めるのは自然な欲望だって思う。

我慢してるだけ・・・理性でもって・・・。


しばらくすると優奈が飲み物とお菓子を持って階段を上がってきた。


「お待たせ・・・」


「ありがとう・・・」


「こっちに座って?」


優奈が言ったとおり僕は彼女のベッドを背にしてもたれた。


僕の左に座った優奈・・・スカートが短すぎないか?

短いよな・・・パンツが見えそうだし?

それも狙い?・・・ってそんな考えが浮かんでしまう。

そんなこと思うなって・・・疑うなんて自分がイヤな人間に思えてしまう。


「飲んで?」


「うん・・・」


「うちの家、上部でも端っこのほうだから不便でしょ・」


「こんなところから学校に通ってるんだ」

「仕方がないの・・・安い土地探したら、ここが分譲地になってて」

「どうしても安くあげようと思ったら上部になっちゃったみたい」


「たま〜にだけどお母さんが訪ねて来るよ」


「そうなんだ、お母さんは?誰かと再婚してるの?」


「うん・・・再婚してる」

「再婚した相手との間に子供だっているよ」


「あのね、こんなこと隠したってしかたないから言っちゃうけど」

「お父さんとお母さんが分かれた理由・・・なんだと思う?」


「そりゃ世間一般に言う性格の不一致?」


「それもあるけど、一番の原因はお母さんが今の旦那さんと浮気

しちゃったから・・・」

「最初は揉めたけどね・・・離婚してからお父さんはお母さんのことも

少しは許したんだと思うの・・・自分にも非があったって」


「だからお母さんは私の様子を見に時々やって来るの」

「お父さんは私のことが不憫だって思ってるのか、お母さんが来ることを、

やっぱり許してるみたい・・・」


「そうなんだ・・・複雑だね・・・なんか切ない」


「一度もつれた糸は、二度と元には戻らないんだよ」

「だから私は大人の複雑な事情は理解できないの、したくもないしね」


そうか、優奈が少し冷めた部分があるのは両親の問題が原因なのかも

しれない・・・。

やっぱり付き合ってみないと相手のことは見えないんだ。


つうか、優奈は話に夢中になって、あぐらなんか組むからパンツ見えたし。

それを僕はまた見ちゃってるし・・・だって見るだろ。


かと言ってパンツ見えたよ、なんて言ったら変態って思われるし・・・。


つづく。


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