第4話:眠り姫。

僕と優奈が付き合い始めて二度目のデート。


僕は優奈を連れて映画を観に行った。

恋愛映画・・・なんかお互いの父親と母親は恋に落ちて結婚しちゃった

せいで、義兄妹になっちゃった青年と女子高生の恋愛話。


売店でフライドポテトとコーラを買って館内へ。

僕は優奈をスコートして中央あたりの席に並んで座った。


「土曜日なのにお客さん、まばらだね」


「最終日に近いからじゃないの?」


そんなことを言ってたらな館内の照明が落ちて上映が始まった。

それが映画が始まって、どのくらいも経たないうちに優奈はこくりこくり

居眠りをし始めた。


え〜デートなのに?・・・寝るか?

しかもこれからいいシーンになって行こうってのに・・・これじゃ

恋愛映画観に来た意味ないじゃん。

緊張感のない子だな。

気持ちよさそうに寝てるから起こすのも可哀想だし、優奈をそのままに

して僕だけ最後まで映画を観た。


ひとりだけで恋愛っていいな〜って思った。


映画が終わってエンドロールが流れ始めたので優奈を起こした。


「あ?・・・寝てた・・・ああ、私寝てたね?・・・ごめんね」

「ちゃんと起きてようと思ったんだけど、無理だった」


「つまんなかった?」


「そうじゃなくて・・・」


「終わったから外に出よう」


で、ふたり揃って映画館を出て店内のイートインで仲良く焼きそばを頼んだ。


「あのさ、やっぱりホラーのほうがよかったかな?」

「あはは、ホラーでも一緒だよ・・たぶんどんな映画でも寝てたと思うから」


「優奈はそういうタイプなんだ・・・どこででもいつでも寝られるタイプ?」


「そう言うわけじゃなくて、ちょっと疲れてるのかも」


「なにか疲れるようなことしたの?」


「私んち、父子家庭なんだ」

「私が小学校の時、お父さんとお母さん離婚しちゃったの」

「いろいろあったみたい・・・それ以来お父さんは、しゃべらなくなったの」

「本当はね、とっても明る人だったんだよ」


「そうなんだ・・・なんて言ったらいいんだろ・・・」


「いいの、もう過ぎたことだから・・」

「そんなだから、家の中のことはほとんど私がやってるからね」

「学校と家事、両立してるから体にどうしても負担がかかっちゃうのね」

「それで、余裕があったらすぐ寝ちゃうんだよ」


「そうなんだ・・・知らなかった・・・それ知ってたら映画に

誘わなかったのに・・・余計な負担かけちゃったかな」


「いいの・・・要平と一緒にいるとどこでも楽しいから」


「そうか、じゃ〜今度からは優奈の睡眠時間取り入れたデートにしよう」


「あはは、面白いこと考える人」


少しづつ見えてくる優奈のプライバシー。

父子家庭だったのか・・・なにか僕に出来ることがあるなら手伝ってやりたい。

って言うか、もっと知りたい・・・僕の知らない優奈のこと。


「ねえ、今度うちに来る?」


「いいけど・・・いいのかな?でもお父さんといたりすると、ちょっとな」

「恥ずかしがることないよ、うちのお父さんは気さくな人だから気負わ

なくて大丈夫」

「それに、お休みの日でも家にいない時のほうが多いの」


「え?お父さん土日仕事してるの?」


「交代制のお仕事してるからね・・・稼がないとマイホームのローンが

まだ残ってるから」


「今度の土曜日もうちにいないと思うからね」

「だから、おいでよ・・遠慮しなくていいから」


「じゃ〜お邪魔してみようかな?」


「デート三度目で優奈んちか・・・早いような気がするけど」


「関係ないよ・・・そんなことに早いも遅いもないでしょ?」


「意外と積極的なんだね」


「要平がまだ私に遠慮してるとことがあるからだよ」


「いや〜、付き合ってもらえるなんて思ってなかったからさ」


「もっと自信持って?・・・私の彼氏でしょ」

「私たちもう恋人同士だよ」


「恋人同士・・・そうだよな・・・もうそうなんだよな」


「はい、今日から恋人同士です、なんて言って決めるカップルなんて

いないでしょ」

「そう言うのはフィーリング、暗黙の了解だよ、要平」


優奈は、どんどん前に進んでくタイプ・・・前向きな性格なんだ。

僕のほうが、もたついてるんだな。

どうしても付き合ってもらってるって気持ちがそうさせてるんだと思う。

優奈は僕の憧れだったから気後れしてるのかな。


そうだよな僕らはもう恋人同士なんだ・・・お互い認め合った関係。


そうと決まれば、あんなことやこんなこと優奈としてみたいって欲望が

顔を出す・・・。

まずは手をつなぐこととハグからだな。


キスは・・・キスはその時のタイミングかな?


つづく。




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