第6怪
カラクリ屋敷二階。純は二階から動けずにいた。
「クッソ、どこが出口なんだよ……」
「純さん! ここにいたんですね、良かった合流出来て」
︎︎するとそこに二人の人物が現れた、真野と京子だった。二人とも走り回っていたのか汗を流している。
「やべぇよ、帰り道が全然分かんねぇ。人が消える廃墟って心霊よりカラクリのせいじゃねぇか!」
「あの、純さん。他のみんなは見かけましたか? 私は真野さんと純さんだけです」
今まで黙っていた京子が話し出す。そういえばと真野と純も考えるが、合流する前は誰とも会っていないようだ。
「つーか、同じトコばっか回ってるようにも思えるんだよな。なーんか、こう……モヤがかかってるっていうか」
モヤ。よく目を凝らすと、辺りが薄い煙で覆われているのが視えた。京子がすぐさま撮影する。
「本当だ、写ってます。私が肉眼で視えず、カメラを通して視えるというなら……これは間違いなく
「どういうこと?」
純が不思議そうに聞く。京子はそうだった、とカメラの説明をし出した。
「このカメラは心霊カメラ。その場に目に見えないものがいたらカメラに百パーセント映ります。そして一度映れば今後はカメラを通さなくても私に視えます。私自身には霊能力はありませんが、このカメラのおかげで今まで怪奇研究部で活動出来ました」
「ほ、本当だ。ずっと気が付かなかったけど、煙が向こうから流れてくる!」
真野の発言に純が反応する。
「向こう? てかお前も視えるの?」
「は、はい。も、ということは純さんもですか? でも僕は視えるだけなんで期待しないで下さい! 本当もう役立たずなんで」
純は理解に遅れたが一つの事実に気づいた。
(あれ? この部活じゃ俺、異質じゃない……? えっ、てか何なんだこの部活、部員たち。まともなの、俺だけ?!)
真野の指した向こう、廊下の奥へと進む。道のりは簡単では無かった。何故なら煙の流れを良く見なければ、無意識的に流れに乗って元いた場所に戻ってしまうからだ。そしてその場に辿り着くと一枚のお
「な、なんだこれ。もし外部からの攻撃だったら……」
純が焦ったように言った。
「美玲が危ない!」
「あら、思ってたより早かったわね。あの煙を抜けるのは容易じゃなかった
あの後、この先に待ち受けるであろう危険を避けるべく真野と京子と分かれた純は煙の中からようやくこの場に辿り着いた。その場には気を失って倒れている美玲とその様子を眺めるルルカがいた。
「チッ、面倒なことしやがって……煙は結界内には入って来なかったからな、常に結界を張ってたら抜けるのは簡単だったぜ」
「
(伝えておく……つまり仲間がいるってことか。それにしても結界術の事まで知っているなんて。あいつらと分かれて良かった、雰囲気でわかる。コイツはやばい)
純とルルカは均衡状態にあった。美玲にかかっている術が何なのか分からなければ手が出せないからだ。要するに人質に取られている。対してルルカは純がどれほどの術者なのか測っているところだろう。
「まさか学校に転校して来たのは!」
「えぇ、怪奇研究部の円城寺美玲に用があったからよ」
初めから仕組まれていたことだった。純は企みに気付けず、苦虫を噛み潰したような顔をする。
「ふふっ、そんなに怖い顔しないで。アタシは目的は済んだからお
「待てっ!」
「あ、そうだ。最後にアタシの本当の名前を教えてあげる……」
不敵に笑うルルカ。その笑顔は人を小馬鹿にしたような大変不愉快極まりないものだった。
「
そう言ってルルカは煙の中へ消えていった。残された純は深追いせず、美玲の元へ駆け寄る。幸いにも美玲は眠りについているだけで外傷はなかった。
カラクリ屋敷の外。ルルカが誰かと話していた。
「やること終わり。アタシは帰るわ、当分会わないようにしないとね」
その場にいたのは部長。ルルカの話を普段のおちゃらけさとは打って変わって真剣に聞いている。
「……こんなに急がなくても、もっと時間をかけてたらお前だってアイツと……」
「いいの、顔も見れたし。元気そうでよかったわ、これからもよろしく。というか、アタシたちのことばっか気にしてないで、自分たちの心配でもしたらいいんじゃない?
「いーの! あれくらいの距離が丁度いいの。ほらだって、俺がアイツの弟殺したんだから」
そう語る部長の表情は明るく振る舞ってはいるものの、どこか悲しみを感じる。ルルカが一息置いてまた話し出した。
「アンタら馬鹿ばっかり。それと、思っているより状況は良くないわ。打てる手は早めに出して置いた方がいいとアタシは思ってるわ」
そう言ってルルカは帰って行った。残された部長は屋敷内に散らばる部員を回収しに戻って行った。
美玲は深い深い眠りについた。今までの人生の記憶が走馬灯のように流れる。その中に美玲も知らない別人の記憶があった。
「こちらが不老不死の仙薬でございます。
そう呼ばれる男の前に少女らは突き出された。帝付きの人間が言う。
「これが仙薬だと? どう見たって人間じゃないか!」
「まぁまぁ、そう言わずに……
そう言って何処かへ消えていった。少女らは死ぬ為に連れて来られた月の国の人間だった。そう、かぐや姫と交換する為の。
「いかが致しましょうか、この不死の仙薬を」
少女たちを見ようともしない帝が口を開いた。
「
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