カラクリ屋敷編
第5怪
薄暗い室内に男と一人の少女。
「ルルカよ、俺はお前に期待している……今後も
「仰せのままに……
部屋を出た後、屋敷の廊下でルルカは深呼吸をした。強く握りしめた拳は震えている。
「ふぅ……蛇に睨まれるとはこの事ね。大丈夫……これは武者震いだから」
「ねぇ美玲。こんな話知ってる?」
教室で友人が話しかけに来た。
「青の一族と赤の一族の話! 美玲こういう話好きだと思うなぁ」
平安時代、まだ妖魔や霊が人間界と近い時代の話。二つの優秀な霊能一族が名を馳せていた。対魔を得意とする青の一族、呪殺を得意とする赤の一族。両者は正反対の存在だったが、青の一族の当主と赤の一族の当主は仲のいい友人だった。ところが恋愛のもつれで両者は歪み合うようになり、とうとう赤の一族の当主が青の一族の当主を殺す事件が起こる。それから青の一族と赤の一族は敵対し合うようになった。その殺害方法というのが残酷なもので、呪殺師の赤の一族がかけた呪いが現代まで続いているという。
「どお、面白いでしょ!」
「まぁ、面白いけど……恋愛のもつれで殺害ってなんじゃそりゃ」
︎︎昔の時代だから話が盛られているだけだと軽く聞き流した。今の美玲はこの話と自分が絡み合った糸のように関わってくるなど、知る由もなかったのだ。
放課後の部室。
「次なる舞台はカラクリ屋敷だ!」
学校の七不思議で散々校長に叱られた後、部長は悪びれる様子もなく次の部活内容を言った。カラクリ屋敷……およそ二十年前から心霊スポットとして話題になっている場所。資産家だった家主はカラクリ好きで、屋敷をカラクリだらけに改造したそうだ。家主の死後は財産を狙う泥棒がよく侵入したそうだがカラクリによって阻まれ、ことごとく失敗している。それ故、カラクリ屋敷のカラクリはただの趣味ではなく、莫大な財産を隠すために仕掛けたものなのではないか、と一部のマニアには有名らしい。『カラクリ屋敷に入ると人が消える』『カラクリ屋敷では家主の霊が自身の遺品を狙う者を呪う』という噂が出回っている。
「いや、流石に反省したし当分は……」
「はい、今日六時に現地集合ね! 場所は〇〇町……」
人の話を聞かないのである。
午後六時、カラクリ屋敷は周りを森に囲まれている洋館だ。ザ・心霊スポットと呼べるような異様な雰囲気を放っている。
「じゃあ早速入ってみるか」
部長が屋敷の扉を開ける。後ろの部員に声をかけながら一歩、闇の廊下へと踏み出した。
「なんてったってカラクリ屋敷だからな! これから先はカラクリに……きぉぉぉぉおつけぇぇぇぇ……テ……」
これから先なんて甘いものでは無かった。カラクリ屋敷は既にカラクリに支配されている。一歩踏み出したその時、何やら嫌なカチッという音が聞こえたかと思えば部長のいた床が真っ二つに割れ、下に落っこちて行ってしまった。取り残された我々が考えたことは一つ。純がそれを言った。
「やっぱ……帰るか」
「えぇ、ちょっといいの? 部長置いてって。薄情な部員たちねぇ~」
ルルカが驚きの表情で純にツッコミを入れる。もちろん本気ではない為、部長がリタイアした床のボタンを踏まないように進む。
「ぼ、僕が行きます。これでも部員歴は長いので」
真野が我こそはと立候補する。部員歴で言ったら美玲も同じだがそこは男としての何かがあるのだろう。第一関門は通り抜け、安心したところで真野が一歩踏み出す。するとグイっと何か張った縄のような……いや縄そのものを踏みつけてしまった。
「あっ……カッコつけてすみませんでした……」
真野は横から現れた丸太に押され、いつの間にか空いていた空間に放り込まれた。真野がホールインワンするとその空間も元通りに閉じた。これでメンバーは一気に二人減り、純、美玲、ルルカ、京子の四人になってしまった。
「結局バラけてしまった」
その後も挑戦したが、部員は皆バラバラになってしまった。美玲は今ここが屋敷のどの部分なのかも分からない。
「うーん、とりあえず歩けば何とかなるよね」
暗闇の廊下を歩き進める。昔、聞いたことがあった、左側に手をついて歩けば迷路からいつかは抜け出せると。しかし前が良く見えない、まだ目は慣れてないようだ。すると首元にボトっと冷たいものが落ちてきた。
「イヤァァァァ! 何なにナニ幽霊? ってこんにゃくかーい、何でこんなところに水々しいこんにゃくがっ!」
糸に吊るされたこんにゃくが私の首を撫でる。すると後ろから足音がした。
「誰っ、今度こそ幽霊かっ!」
「違うわよ、アタシよ美玲さん。良かった、美玲さんが居てくれて」
正体はルルカだった。美玲はやっと部員に会えて安堵していた。するとルルカが不敵に笑った。
「本当に良かったわ、アンタがいてくれて……」
「ル、ルルカさん。どうしたの…?」
ルルカは髪をかき揚げ、美玲を冷たい目で
「アタシはアンタが許せない。アンタは思い出す必要があるわ」
そういってルルカがお
何が起きたのか分からなかった。
だんだんと意識が消えていく……
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