ホク動乱
第119話 坑道の動乱
「ありがとう!」
気が付いたら僕たちは冒険者たちに囲まれていた。
ミュアを抱きしめたままだから、絵的には閉まらない。
「おお!いたいた!」
そんな冒険者の中。
見知った顔があった。
「よぉ。英雄。またとんでもない活躍じゃねぇか」
水筒をあおる。
「お前が持ってきた依頼だろ?」
目の前のよっぱらいに悪態をついてみる。
ミュアを取られそうになったんだ。それくらいはあっていいと思う。
「ああ?誰の事を言ってるんだ?俺は王都からの依頼で、ずっとこの街にいたんだが?」
ダルワンが、酒臭い息を吐きながら首をかしげる。
「それよりも、、、だ」
愛用ともいえる水筒をあおるダルワン。
「王都からの緊急依頼が入った。お前さんと、俺にだ。ホクの坑道ってしってるか?」
知らない。
僕が首を振ると。
「王都の北に、鉱山があるんだ。まあ、そこでいい燃料と、鉄が取れるんだが」
ずいっと顔を寄せてくる。
「そこでな。魔物が湧いているらしい」
洞窟で魔物が湧くのは良くあることだと思っていたけど。
「大攻勢だ」
続けて言われた言葉に、身を固める。
「そこで、、だ。止めて欲しいとさ」
まったくあいつはこきつかいやがる
そんな愚痴を言っているダルワンを見ていると。
「本当か!?じゃあ、いい稼ぎになるか?」
他の冒険者が色めき立つ。
「稼ぎにはなると思うぜ。命の保証はないけどよ」
ダルワンの返事に、冒険者たちが一斉に雄たけびを上げる。
「行くぜっ!一儲けだっ!」
本当に。冒険者は、皆タフだ。
今回の海蛇のせいで、相当の冒険者が死んでいるはずなのに。
「俺達の命は軽いからな」
ダルワンの呟きが、冒険者を物語っていた。
【王都にて】
「ホクの坑道で、大攻勢だと?」
「はい。今回の大攻勢は、何度も起きる様子で流石に冒険者だけでは耐えられないとの事でした」
「騎士の派遣が必要か」
「はい。かならず」
「まったく。どうしてこうも次から次へと。ロアは?」
「まだ帰ってきておりません」
「役立たずめっ!きさまの所の婿だろう!首に紐をつけてでも戻らせんかっ」
突然激高する国王を、冷めた目で見つめるシュリフ将軍。
本当にこの国王は、最近突然怒りの感情をあらわにする事が多くなっている。
シュリフ将軍は小さくため息を吐く。
「第二分隊を派遣しております。坑道は閉鎖中。冒険者にも依頼を出しております」
「また、金がかかるな」
「そこは王都守備のために、必要経費だと思われます」
「シュリフ。お前の白銀騎士団を出せんのか?」
「あれは、王都防衛、あなたを守る騎士です。無茶を言わないで下さい」
「数が足りんのだろ?なんでも使うのしかあるまい」
王の勝手な言い分に、シュリフ将軍は小さく手を握り締める。
「ふと、外を見ると、日が少しだけ傾きかけていた」
「まぁ、良い。いいようにしてくれ。謁見はこれで終わりにする」
王はそれだけ言うとそそくさと部屋へと戻って行く。
「また、あの女か」
最近国王が、一人の女性に熱を上げているのは知っていた。
「どこの誰かは知らんが。ずいぶんと執着しているようだ。子供でも生まれたらどうする気なのか」
「アランを呼べ!ホクの坑道制圧だ!すぐに準備させろ!」
シュリフ将軍は、踵をかえすと近くの近衛兵に指示を出すのだった。
「そういえば。ホクか、、、あの落ちこぼれがいる場所もあの辺だったな、、」
シュリフ将軍の呟きは誰にも聞こえていなかった。
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