第115話 依頼
津波表現があります。
ダメな方は後半スキップしてください。
「あー頭が痛い」
「水くれーー」
ダイクが、うなりながら手を伸ばすが。
「知りません。お嫁さんをほったらかして、二人でずいぶん楽しんだみたいで。勝手に飲んでください」
アヤさんが厳しい。
3人目が出来た事を知ったダイクが、奥から「秘蔵の酒だっ!」と持って来た物を呑んだのがいけなかった。
気が付いたら、嬉しさのあまり楽しそうに飲むダイクに付き合って、僕の空間収納に入れていた酒類まで放出してしまっていた。
なんでそんなのが入っているかって?
聞かないで欲しい、、、、。ね。やっぱり、ちょっとだけ飲みたいとか思う時あるじゃない?あと、飲んでみたいって思うお年頃だと言う事で、、、、
「そんな顔で見られても知りません。マスターも飲みすぎです」
ミュアすら冷たい、、、
「このダメ男達は、ほっといて、朝ごはんにしましょう」
「手伝います」
アヤさんと、ミュアはいつの間にか仲良くなっていた。
二人でご飯を作り始める。
「て、、手伝う、、、」
ダイクの娘さんも小さく呟いていた。
「はい。海水でも飲むか、これでも飲みなさい」
ドンと置かれたのは、魚を煮込んだスープ。
わかめが浮いている。
苦しいほどの痛みをなだめながらそのスープを一口飲む。
「美味しい、、、、」
思わず呟いていた。
あら汁といえばいいのだろうか。
しかし、昆布の出汁と魚のうまみがしっかり出ていた。
ふふ。と笑っているアヤさんを思わず見てしまう。
「懐かしいでしょ?あんたら、途中から日本語でしゃべってたわよ?」
懐かしい言語が聞こえて来る。
え?
じゃあ、、
「ああ。なんだ、シュンリンデンバーグも、そうなのか、いや、めんどいからシュンって呼んでいいか?」
ダイクが笑う。
「覚えて無いみたいね。その話でずっと盛り上がっていたってのに」
アヤさんの呆れた顔を見ながら、僕とダイクは二人して顔を合わせて思わず笑っていた。
「そういえば、滝つぼの傍に俺が作った小屋があるんだ。もし良かったらそっちで寝泊りした方がいいかも知れないな。悪いが、ここは手狭でな。お前たち二人をずっと泊める訳にはいかないんだ。それに、、まあ、、な」
「子供もいるしね」
二人の言葉が少しだけキレが悪い事に、何を言っているのか気が付いてしまう。
ミュアを見ると、ミュアも顔を赤くして下を向いていた。
そんなに頻回にはしてないよ?
「後は、、な。村長の事もあるしな」
アヤさんが持って来てくれた水を飲みながら、ダイクは心配そうな顔をする。
「その方がいいと思うわ。ミュアさんが襲われたら私も辛いもの」
「昼から、案内してやるよ。酔い覚ましにもなるしな」
ダイクはやっと一息ついたのか、にこやかな笑みを浮かべていた。
「森の方へはな、水の確保やら、木をきりに行くんだが、さすがに遠くてな。そんな時に休憩場所として使っているんだ」
結構な獣道をダイクが案内してくれる。
海の傍の村で一番困るのは、綺麗な水だ。
それを汲みに行くために、川へ行くとの事だった。
「まあ、いろいろあるだろ?ちょっと癒されに行くとかさ。そんな時にも使っているから、けっこう綺麗だぜ」
そんなに頻回に使っているのだろうか。
そんな事を思っていると一つ思い当たる。
「アヤさんと喧嘩したときの逃げ場とか?」
「そうそう。。ん?ちがっ!違うからなっ!俺とアヤはラブラブだからなっ!ほら、マイナスイオンにまみれたいときとか水の音を聞きたくなる時ってあるだろっ!」
必死に反論するダイクを見ながら、思わず笑うミュア。
まあ、仲良しな夫婦なのは分かるけどね。
川にたどり着いた時。
小さな子供が川の中で遊んでいた。
魚を取っているのか。
手づかみで追いかけまわしている。
泳いでいる子供もいる。
その中の一人がこちらを向く。
緑色の顔。 明らかに人ではない飛び出た目。
「ギャッツギャギャッ!」
「ゴブリンかよっ!」
ダイクが叫ぶのと同時に、石が飛んでくる。
咄嗟に風魔法で作った棒で弾き飛ばす。
槍斧を空間収納から取り出した時、目の前に一体のゴブリンが来ていた。
てか、速くないか?こいつ。
切り上げて、真っ二つにする。
両手に短剣を持っているのが見えた。
「マスター!罠があります!」
ミュアの声を聞きながら、片手を地面に押し付ける。
ゴブリンスカウトの罠と言ったら一つ。
泥の落とし穴を魔法で掘り返し、埋め直す。
「グギャ!」
罠を無効化された事に驚いたのか、矢をつがえるゴブリン。
ゴブリンアーチャーまでいるのかよっ
そう思った瞬間、その頭が吹き飛んでいた。
ミュアの矢がゴブリンの頭を貫いて行く。
まだ酔いが回っていたみたいだ。
展開する事を完全に忘れていた魔力ビットをやっと展開。
残りのゴブリンを魔力ビットで打ち払う。
ゴブリンスカウトと、ゴブリンアーチャー。
この2体が単独行動をするわけがない。
マップを確認して、確信する。
「ダイクっ!まだ来るぞっ!これを使えっ!」
10体程度のゴブリンが近づいてくるのがマップに表示されている。
「すまないっ!」
僕が投げた銛のような槍を受け取るのを確認しながら、自分の槍斧を振るう。
横なぎに払い、近づいて来ていたゴブリンの頭が飛ぶ。
ダイクも、ゴブリンの胸を確実に刺していた。
ミュアが弓を振り、ゴブリンがたじろいた瞬間、ゼロ距離で矢を放つ。
本当にミュアも強くなったと思う。
「ギャッ!」
魔力ビットに打ち落とされ、ゴブリンアーチャーが木から落下する。
魔力ビットが、狩りをしてくれるのか。みるみるマップ上の赤点が無くなる。
最後の一体だったのか。
周りが静かになった。
「ゴブリン、退治終わっちまったかもなぁ」
ダイクが笑った時。
変な音が聞こえた。
「おい?変な音がしないか?」
ダイクが、嫌な顔をしていた。
川の水が、一気に引いているように見える。
「なんだ!?」
「水の精霊が怒ってます」
何か嫌な予感がした僕は、ミュアを引き寄せる。
「ダイク、こっちに」
ダイクも自分の傍に呼んで、絶対結界を発動。
その数秒後。
水が獏流となって上がって来た。
絶対結界がその全てを受け止める。
登って来た水は、川を押し上げ、地面を削って上がって行き。
しばらくして落ち着きを取り戻していた。
「何だ、まさか、これは、、」
ダイクの声が震えている。
「村が、危ないかも」
僕の声も震えていた。
「まさか、、つなみ、、、か?津波かっ!」
走り出すダイク。
「マスター、、、」
ミュアが泣きそうな顔をしている。
分かっている。
精霊が騒いでいるんだろうけど。
分かっている。
マップ上。
村が、、、、無くなっていた。。。。。
ただ、ひたすらに村の人達が生きている事を願いながら。
僕たちは来た道を走って戻るのだった。
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