第3話 「僕は見てはいけないものを見てしまった」

 今、僕の目の前にはファミレスのテーブルではなく見渡す限りの草原と、どこまでも飛んで行けそうな大空が広がっていた。


 「えぇっと……」


 僕は訳も分からず呆けていた。


 (確か光に包まれて……)


■□■□■□■□■□


 令和XX年八月XX日 零時 ――


 その時、僕らはファミレスにいた。

 

 向かいにはヒロト、隣にケンイチという並びだ。

 

 三人で今日出演したライブの出来について反省会中だった。


 「カナデ、今日のお前の声、語尾が後ろに戻ってたぞ、もっと前へ前へ進むような声だせよ! そんなんじゃオーディエンスに響かねーよ! それに倍音めんどくさくて切っただろう。喉だけで歌ってるのバレバレだっちゅーの。」


 「うるさいな、そんくらい分かってるよ。僕だって好きであんな歌い方してた訳じゃないんだ。新曲……、あれのために今朝まで歌ってたら喉がやられたんだよ。」


 「えっ! 新曲……あれ、出来たのか?!」


 「うん、本当はライブ前に伝えようと思ったんだけどさ、なかなか言い出すタイミングが無くて。後で二人に聞かせるよ。絶対好きになるからさ! って、ケンイチ聞いてる?」


 ケンイチは、僕とヒロトの会話そっちのけで窓の外をボーっと眺めていた。


 僕とヒロトでケンイチの視線の先を追った。


 (あの赤いのは何だ?)


 ―― 刹那!


■□■□■□■□■□

 

 (まぁ、じっとしていても始まらないからとりあえず歩くか) 


 僕は歩き出す。


 直後、体がスゥースゥーすることに気付いた。


 「あ、そいうこと!?」


 僕は、生まれたままの姿だった。


 恥ずかしいところを両手で隠しながら周りをキョロキョロと見渡す。


 (それにしてもここ、四國カルスト張りに何もないなー)


 そう、見渡す限り草原と岩みたいのしかなかった。

 

 僕はすっぽんぽんのまま暫く歩く。


 そして、気付けばだいぶ日も暮れた。


 かなりの距離を歩いたつもりだが、一向にここが何処なのか手がかりも何も無い。


 ふと空を見上げる。


 そして気付いてしまった。いや、気付かされてしまった。

 

 僕は見てはいけないものを見てしまったのだ。

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テアナ戦記 ――霹靂のエルスフィア――― 世渡赫夜 @setonokaguya

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