第9話 グラントニア王国

-side ゼノ-



「そこの者とまれ!!!!」



 ドラゴンに乗ったままだと目立つので人目があまりなさそうな国境の森に降りてそこから歩くことにした俺たち。そんな俺たちを出迎えたのは沢山の騎士だった。



「どうしました?」

「いきなりで申し訳ない、失礼を承知で言うがでかい狼とドラゴン、巨大な鳥に見える物を連れて何を考えている!?」



 騎士の中で1番強そうな男が前に出て叫ぶ。

 まあ、こうなるのは想定内だ。そもそも、これまでもフェンリルであるリルを従えている時点であちこちで色々なことを言われてきた。それから、さらに厳つくなった旅パーティなので仕方がない。



「失礼。俺はこういうものだ!」

「Sランク冒険者ゼノ!?と言うことはあのゼノ様でいらっしゃいますでしょうか!?」

「どのゼノかは知らないけど、そうだ」

「あ、新しい従魔を登録なされたのですね!う、上のものを呼んで来ます!」


 

 騎士の人の顔色が変わりキラキラした目でこちらを見にくる



「めんどいことになった」

『だのう?』

『どーしたのー!パパー』

『国賓として迎え入れられると言うことでしょうか?』

「そうそう」



 俺を囲い込みたい王国や貴族は山ほどいる。リルの希望でSランク冒険者にしては珍しく特定の国に居住地を構えていないからだ。

 見つかると大体が必死で勧誘してくる。

 向こうも直接的な勧誘は嫌がるのは分かっているからやってこないが……国に入ったことはほぼ全員に伝わるし、なんとなく居心地が悪くなる。

 


『いっそのこと、我々で王国作りませんか?エレメンタルドラゴンであるエレン様のお力を持ってすれば、可能でございます』

「まじか?」

『まじです。既にエレメンタルドラゴン様は神々から領地を与えられております』

「そーなんだ……すごいね」

『はい、至高の君主なので』


 

 フェンリルやフェニックスが敬っている時点で知ってはいたが、どうやら、本当にとんでもない子を従魔にしてしまったらしい。



「ありがたい提案だけれど、今はいいよ。この国でやりたいこともあるからね。エレメンタルドラゴンの国はまた今度にさせてもらう」

『主人がそう言うならそうしましょう。私も人間の国の事情について聞いておきたいですからね』



 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢



 それからしばらくすると、騎士が焦ったようにこちらへやってきた。



「お手数おかけします。領主様の許可がおりました。差し支えなければ、この後ご領主様に会っていただくことって可能でしょうか?」

「ええ。構いませんよ。こちらとしても、しばらく滞在するので挨拶しておきたいですし」



 一応、毎回滞在するトップにはきっちり挨拶して、何か依頼されれば受けている。

 恩は売れるうちに売っときたいからね。そうこう依頼をこなしている内に、知らん間にSランク冒険者の推薦状が集まっていた時はびっくりしたのだけれども。

 そう答えると騎士の様子がパァ……!と明るくなった。



「それは良かったです!では、早速参りましょう!」



 この町の領主は一体どんな人物なのだろうか?

 興味半分期待半分といった感じで領主館へ向かうのだった。



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