第4話 ステラ商会
-side ゼノ-
「こんにちは〜」
「あら!ゼノさん!久しぶりだね〜!元気してたかい?」
「はい!ステラさんもお元気そうですね」
「あはは!もちろん!」
スラっとした体型に、金髪青眼で整ったクールビューティーな容姿のエルフの美女。
ステラさんはお世話になってるポーションや薬草などの医薬品類を取り扱うステラ商会という大商会の会長である。誰にでも平等で、正当な取引をしてくれる多くの薬師に信頼されている人だ。
取り扱っている品も品質の良いものが多く、多くの冒険者や貴族が訪れる人気店である。
今日はここにポーションを売るついでに、今までお世話になりましたと挨拶するために来た。
「これで全部です」
「はいよ〜!相変わらず見事な魔物用のポーションだねえ!」
普通の薬剤師としてはあまり優秀ではないのにこんな人気店で良くしてもらえる理由--それは俺だけしか作れない珍しい魔物専用のポーションを作れるからである。
ステラさんは珍しいポーションに目がない。まだ8歳程--冒険者としては薬草採取しかしていなかった頃、俺が魔物用のポーションを作っているのではないか?という噂を聞きつけたステラさんが自ら俺の元へやってきて、うちのためにポーションを作らないか?と話を持ちかけてくれた。
冒険者ギルドに所属していたので最低限の生活は保証されていたが、貧乏生活を送っていた俺にとっては大変ありがたかった。ステラさんのおかげで貧乏生活から抜けられたし、装備も整えられたおかげで、その後リルと冒険をする際にスムーズに魔物を討伐する事が出来た。
「それじゃ、今回の報酬だよ!」
「あ、ありがとうございます」
どっさり。相変わらず金額がすごい。
それだけ売れてるのだろうが、こんなニッチな商品一体どんなところで売っているのだろうか?本当にやり手である。
「これからもよろしく頼むね!」
「こちらこそ」
毎度毎度わざわざステラさん自ら、店の前までお見送りをしてくれる。最初の方はお客さんも従業員もとても驚いていたが今ではもう慣れたものだ。
「あ、そうだステラさん」
「どうしたんだい?」
「実はまた冒険者パーティを追放されまして……、それでその際に追放した友人の冒険者から冒険者よりも向いている仕事があるのではないかと言われて、確かに一理あるのではないかと思ったのです。だから、冒険者をやめて自分探しの旅でもしようかなと思いまして、この町を出る事にしました。今日はそのご挨拶に……」
「えっ!?……冒険者をやめる!?まあ確かにあんただったら他にも向いている仕事があるかもしれないからそれも良いかもね!」
「そ、そうですかね?」
「そうそう!まだ、若いんだし色々な可能性を見つけて欲しいわ!」
おお……、意外にも良い反応。もっと、何か言われるかもと思っていたけれど、前向きに捉えてくれたようだ。
それはそれとして、俺とステラさんは見た目は同年代だが、ステラさんはエルフなため多分大分年上だ。そういえば、何歳なんだろう?女性に年齢を聞くと大変な事になるらしいから、怖くて聞けないけれども。
「……?あたしの顔に何かついているかい?」
「いっ……、いえいえ!」
「……?まあ、いいさ!あんたはこんな小さな町に収まるような若者ではないからね!冒険して良い経験を積んで思う存分、世界で活躍しな!」
「あはは……それは流石に過大評価ですよ」
「なんだい?あんたは相変わらず自己評価が低いねえ……」
「い、いや」
「今までの事を考えると無理もないけどねえ。だけど、もう少し自分の実力を客観的に評価できるように成長するといいわね」
「は、はあ……」
「ま、それは今後に期待だ!ちなみにステラ商会は全世界どこにでもあるから、魔物のポーションはその支店で売ってくれたらいつでも買い取る事ができるからね!何かあったらステラ商会に直接言ってもらったら、あたしも転移魔法で駆けつける!」
「い、至れり尽くせりですね……、ありがとうございます」
「当たり前だよ!うちがあんたにどれだけお世話になっているか、少しは自覚してほしいねえ!」
「が、頑張ります」
なんか、ステラさんの俺への評価がやたらと高い事が判明した1日だった。
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