第3話 不思議なタマゴ
-side ゼノ-
「あー美味しかった!!--っと、魔力魔力」
夕飯を作った後、俺はとあるものを取り出した。いつものようにとあるものに魔力を注ぐ。
「早く産まれないかあ、よしよし」
『そんな早い段階で産まれる魔物でもないからなそれは』
「とは言っても、もう拾ってから10年以上になるよ。そろそろ、これが教えてくれても良くない?」
『嫌だ』
「ケチ」
『あ?』
「じょ、冗談だって」
孤児院で生活していた俺が、普通は10歳でしかなれない冒険者に5歳でなれたのはこの卵のおかげである。
とある森でこの卵を拾ったら、手が光ってテイマーのジョブを授かっていた。
その後、街の門を通る時に門番に呼び止められ、冒険者ギルドへと連れていかれ、冒険者にならないか?とスカウトをされた。
10歳でジョブを授かったら、領主が支援している孤児院を出て一人で生活をする。その目標のために薬草採取をしてコツコツお金を貯めていた俺にとっては驚くべき話だった。
性格的に冒険者になれないと諦めていたし、魔物の命を頂戴するのには抵抗感があった。実際10歳でリルをテイムするまでは魔物討伐にも行かず、結局今まで通り薬草採取ばかりしていた。
「リルは強いもんなー」
『何を今更。我は最強の魔物ぞ?』
「ハイハイ」
『あっ……!本当なのだぞ!!』
「そうだなー。それは間違いない」
リルは間違いなく最強である。
どんな人でも魔物でも倒す。今までリルが苦戦している相手をみたことがない。
そんなリルではあるが、弱点もある。感情のコントロールが得意ではないのだ。正確にいうと、テイムスキルやチルポーションを使って抑えられるのだが宥めるために時間がかかる。
この弱点はパーティのようなチームプレーには致命的に向かない。リルを宥めている間にパーティメンバーの誰かが傷つき、薬師としての対応が遅れるのは日常茶飯事であった。
したがって俺の能力はパーティに入るには致命的に向いてない。だけど、性格的にソロでやるのはきつい。
「やっぱり、俺冒険者向いてないと思うんだよなー」
『我はそうは思わないがな。今からでも遅くない。お主と我で天下を取るぞ』
「そういうのいいから」
『む?我は本気ぞ』
知ってる。本気と書いてマジと呼ぶくらいには前のめりだ。しかし、その場合はこの先ずっとリルと2人で旅をする事になる。
出会いも無ければ別れもなく、黙々と依頼の魔物を狩り、ダンジョンを踏破する生活。
うーん、寂しい。そもそも、一人で淡々と仕事を続けるのが向いていないと思う。途中でだらけてしまいそうだ。
「というか、もう天下は取ってると思うんだよな。大分冒険者ギルドでも暴れた気がする」
冒険者の中でトップ1%しかいないAランク冒険者。リルをテイムしてからわずか半年で気づいたらなっていた。パーティ単位ではあるが、ダンジョンも数多踏破したし、街を襲ったワイバーンを単独で撃退して領主から表彰された事もある。
色々な国の貴族からスカウトもきた。
『我としてはまだまだ足りぬ』
「えー」
『えーではない!まったく……。だが、確かに今のお主には休息が必要だ。冒険者になって10年働きすぎてたというのはあるからのう。しっかり休むがいい』
「そっかー」
--ぴょんぴょん!
「お!お前もそう思うか」
卵がぴょんぴょんとはねる。
この卵は肯定をする時にぴょんぴょんとはね、否定の時はゆらゆら揺れる言語を理解し、意思を持った卵である。
今まで卵を見せた色々な人に「いやいやいや!おかしいだろ!!」と突っ込まれてきた。俺もそう思う。
意思を持ったのはここ最近。
これはいよいよ卵が孵る前兆だろうか?
「ふふふっ……!!面白くなってきたあ!!」
『む?』
「とりあえず、まずはのんびりこの町で過ごしながら、今までお世話になった人に挨拶だな!!おーっ!」
『だからお主、気を張りすぎなのだ』
「わかったーっ!!」
『(全然分かってないな。やれやれ。)』
--コロコロ
リルと卵が呆れているのにも気づかず、俺は町へ向かうのだった。
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