第3話 はじめて雪村と口をきく
「ひろぉ、昨日の心理テストさあ!
あれ 妹にやってみたんだけど
モカ、なんて答えたとおもう?」
登校してきたハズミが
聞いて聞いてとせかすように、ひろにいった。
教室の顔ぶれも、おおかた
となりの席は
机の上には雪村のカバンが乗せてあった。
「へえ…モカちゃんに。なんて?」
ひろは『心理テスト』の言葉に、
ドギマギしつつ、
「ちなみにモカは、好きなやついないみたいで
そこはひろと同じなんだけど」
ハズミは 肩からカバンをおろすと
言うも無念というふうに息をついた。
「いやぁ、ぶったまげたよ〜。モカったらさあ、
将来性があったら付き合うんだって!」
ハズミは、カバンに入れてきた教科書やらを
いつもの作業をこなす要領で
机にテキパキしまい入れながら
口はますます熱を込め、続きを語った。
「…小6のくせに 将来性って!
夢がないというか、愛がないというか、
どこで聞いてきたんだか…。
まあ心理テストだし、
よくよく考えてじゃないかもしれないけど
姉としてはさ、ハートを大事に生きてほしいよ」
小学生が… そんな シビアな!
打算的なこと言うなんて…!!
これはショックというか、ガックリきちゃう。
「
ひろはハズミの思いに全面同意し、なぐさめた。
ひろにとっても、
モカちゃんは妹みたいな子である。
昔アパートにいた頃、
ハズミの家とは、おとなり同士だったので
家族ぐるみの付き合いをしていたのだ。
今はそのアパートはなく、お互い家も離れたが、
ハズミの家とはそれからも、
行き来を続けている。
「うん。ひろ、ありがと。そうだね。
それでもし、実際そんなことがあって
まだ将来性なんて抜かしたら
そんときはバカって言ってやる」
そしてハズミは、
パーでなぐる格好をしてみせた。
「それにしても、ひろの心理テスト、
けっこう面白いわ。 反応が、人それぞれ」
ハズミは「いやぁ、 勉強になるわ〜」と
ウンウンうなずき、
「そうだ、他にも聞いてみよ」と
近くでおしゃべりしていた女子たちへ
話を持ちかけた。
それは意外に盛りあがった。
「嫌なタイプじゃなかったら
付き合ってみるかな? わたしは」
「えー 、私はやだな。
好きでもない人と付き合っても
つまらないじゃない」
「 でも、付き合ってるうちに
好きになることってあるかもよ。
お姉ちゃんの友だちがそうだったって」
「へえ」
「わたしは断っちゃうと思うなぁ。
来たものをつかむより、
どうせなら自分から行きたいし。
それに来年受験になるでしょ。
そんなことで 時間 使いたくないしね〜」
「 わたしも…そうかな。
でもそれはさ、今は片思いだけで楽しいからで
それ以上望んでないというか…。
実際に付き合ったりするのは
もうちょっと、大人になってからでいいかな」
ああ、確かに参考になるかも…。
ひろは試しに
『雪村と付き合ってみる』を想像してみた。
が、想像しただけで
ゾワゾワッときたのでやめた。
自分の両腕をそっとさする。
「えーっ、付き合ってみるのは、わたしだけ?」
彼女はショックそうに、みなの顔を見まわした。
そこへ、「あ、ハイ」と
ゆりが手をあげ、輪に入ってきた。
「ごめん、今の聞こえちゃって」
謝るにおよばず、
みな、ゆりの意見を聞きたがった。
「わたしは…断っちゃうのもったいないかなぁ?
だって せっかく 好きになってくれたんだし。
ごめんなさいで、よく知らないまま
さよならしちゃうより
友だちになってみようかなって思う」
友だち論は、なんとなく場をなごやかにさせた。
「ゆり、すごいなぁ…
わたし、そんなふうに考えもしなかった。
付き合うかどうかだけで」
ひろが言うと、みなも、うなずいた。
ハズミは『迷う』をやめ
自分も『友だち』にしようと言い出した。
が、「アタシに下心がある場合…
と、またも悩みだし、けっきょく結論は
先延ばすことになった。
ひろは『雪村と友だちになる』を想像してみた。
ゾクゾクッとは来なかった。
友だちならいいらしい。
すると ハズミは
「今度は男子にも聞いてみよう」と思いつき、
たまたまそばを通ったクラスメイトを捕まえた。
「はあ? 心理テスト? やだョ。
おい 水沢、放せって〜、
オレそんなの 苦手なんだよぉ」
恥ずかしいのか、めんどくさいのか
まったく取り合わず、
最初のひとりが逃げていった。
めげないハズミは、他にいないか、
あたりを見まわした。
雪村がやってきたことに、
ひろが先に気がついた。
ハズミ…ストップ……うそ、ヤメて〜〜〜!!!
「ねえ、雪村 」
席へもどる雪村に、
ハズミがすかさず声をかけた。
ひろたちは、ちょうど雪村の右どなりで
話し込んでいた。
ハズミは雪村の手前の席に、移って座ると、
例の心理テストを、
いったいなにが始まったのか
雪村はまだよくわからない、といった様子で
ポカンとしている。
ハズミは、ひろが言ったあのとおり、正確に
告白される人物像を説明していく。
「でさ、雪村 ならどうする?」
ひろは 頭がくらくらなりながら
女子らの中に、隠れるようにじっとしていた。
雪村はハズミにとまどっているのか、
質問が
知りたがりの女子たちが原因なのか、
もしくはひろはいるからなのか、
あきらかに腰がひいていた。
「エ? いや、ちょっと…、 なんで?」
ハズミは雪村の気持ちをほぐそうと
まずは自分のことを話し出した。
「…ってなわけでね、アタシは『迷う』だから
けっきょく結論まで出てないんだけど
そうゆう答えでも いいんだよ」
ひろは 途中、
ハズミがひろの例まで出しやしないかと
ヒヤヒヤしたが、それはいらぬ心配だった。
ハズミは人のことは気をつけて明かさず
自分のことだけを明らかにした。
雪村は、ハズミの語るまま
一応 最後まできいていた。
どういう思いで耳を傾けていたかは
知らないけれど、その行為は好感がもてると
ひろはおもった。
今度はうまくいきそうだと
期待の
「…おれは」
雪村が口をひらき、やや 目をふせた。
ひろの心臓が、あわてて音をたてる。
雪村は、上唇のはしをかむと
低い声でハズミに言った。
「…言いたくないね、 自分のことは。
悪かったな」
思ったよりキツイ言い方に
みな、ヒヤッとして 顔を見合わせた。
怒ったのかもしれない。
「いやぁ、ゴメン! 変な質問をして、
アタシが悪かった!」
すぐにハズミが、手を合わせる。
雪村は、 驚いたみたいに顔あげ、
「ああ 、いや」 と答えた。
ハズミが席をのく。
解放された雪村は
やっと安心したふうに息をついた。
そして机にある、自身のカバンに目をやる。
それから雪村は、なんの感想も持たない顔で
それに手を伸ばした。
ジッパーをあけ、なかの教科書やノートやらを
つまり登校したとき放りっぱなしで
いま片付けてるということだ。
ルーズなやつ。
ひろはそれから、こうも思った。
雪村は、声が小さくない、ときもある。
ひろたちの輪に戻ったハズミは
男子にききだすのは難しいと感じたのか
もう次の候補者は探さなかった。
それにチャイムが鳴りはじめたので
女子会はこれでお開きとなった。
席につく前、
ハズミがこっそりひろに打ち明けた。
「雪村って、
あんまり女子としゃべるタイプじゃ
ないじゃない? アタシ、おもえば、
初めて まともに口きいたかも…。
でも、いきなりあの質問は、
やっぱ…まずかったよねぇ」
🟤 🔵
授業中、ひろは いまいち 集中できずに
窓の方へ 目をやった。
さっきの雪村は、ハズミの質問を拒否していたが
男同士なら、こっそり恋バナもするのだ。
そうやって、なにげなさそうに座っているが
心のなかでは何かしら、
わたしを意識しているにちがいない。
ひろは、たまらぬ思いで息をはいた。
どっかいってくれればいいのに。
「Never get suspicious or cynical.」
先生が教科書を読みはじめた。
「Never get suspicious or cynical.」
教室のみなが、あとに続いた。
ひろは目を 教科書に戻した。
英語は、担任の熊田先生が教えていた。
先生が音読しながら、生徒の間をまわる。
先生が歩くたび、床がギィィと鳴る。
ひろの学校は古く、
教室の床は歩くたび、床がきしむ。
小学校のときの校舎は、まだ新しく、
床もピカピカだった。
中学にあがって、
雨染みもようの染み付いた
灰色の校舎を見あげたとき
『のんきな時代はもう終わったのだぞ』と
宣告されたみたいに思った。
そして組み分けされた教室に入り
みなの、黒い制服姿を見わたすと、
もう、小学校に戻りたくなった。
床の音に耳をかたむける。
この、ギィィ、は授業中の BGM だ。
なんとなく ボートをこぐ音に似ている。
今は色々なことに、もう慣れた。
制服だって 着慣れてしまえば
毎日の服装を考えなくてもいい、
楽ちん生活と言える。
ギィィ、の音は、先生によって違う。
熊田先生のは、
大きな箱船が波にゆれている感じ。
でも、もうすぐ校舎は建て替えられる。
新しい校舎は明るくてきれいだろうが
小学校のときみたいに
つるつるの バナナ色の床だろう。
床の響きと、音読が、
静かな教室に、続いていく…。
しばらくして、ひろはあれ? とおもった。
となりから声がしていない。
ひろは音読をやめ、耳をすました。
…やっぱり聞こえてこない。
不審におもい、となりに目をやる。
「こら雪村、教科書はどうした 」
ひろと同時に、熊田先生が気がついた。
生徒の間を順にまわり、
いま雪村の席を通ったのだ。
「古田、見せてやれ」
先生がひろを指名した。
ふたりでズリズリ机をひっつける。
わざと忘れたんじゃないでしょうね…。
そう疑いながらも、ひろは何でもない顔で、
机の間に 教科書をひろげた。
雪村は黙ったまま、なにもいわない。
うわ。そういうの、マイナスポイント。
ひろはすまして 前を向いた。
教卓にもどった先生が
黒板のチョークをとる。
いつもの荒々しい字で
今日のやる英文を書いていく。
ひろはノートの筆記に、気持ちを集中させた。
授業が進むにつれ、先生の言葉も書き加え
ひろのノートもいっぱいになった。
ひろが新しいページをひらく。
と… また、となりの様子に目がいった。
手が、動いてない。
みるとノートには、なにも書いていなかった。
雪村は 黒板のほうを見ている。
えっと…授業にききいってる?
ひろはまゆをひそめ、うかがった。
いや、違う。 前をむいて、ボーッとしている。
先生が 文法の説明をしながら
黒板の前半分を消しはじめた。
雪村は それを、
自分とは関係ない出来事のようにながめている。
まんなかに置いた 教科書が
次のページに進んだ。
ひろは手をのばしてページをめくった。
それも気づいてないだろう。
雪村ってこんなボーッとしたヤツなの?
ひろは意を決すると、小声でいった。
「ノートぐらいとったら?」
反応がない。
ひろはシャーペンの先で
雪村の腕を チクリとやった。
「ノートぐらいとったら?」
やっと気づいた。
雪村は、ひろをいちべつすると
きこえなかったふうに 顔をそむけた。
「…なによ、その態度 」
ひろが言うと、雪村はこっちへ向いて
ムッと口をまげた。
「なんか文句あるかよ?」
そのすごむような言い方に、
ひろの心臓が、ビクリとはねた。
本気で怒っているようだ。
しかしここは女のプライドにかけ
さっきの態度をくずさず答えた。
「ノート ぐらいとれっていってるのよ」
「 古田に関係ないだろ」
相手を黙らせる イヤな
フン。わたしのこと好きなくせに。
「わたし、アンタのせいで
教科書みせてるんですけど?」
ひろはどうよ、とばかりに言ってやったが、
雪村は だからどうした、といったふうに
まゆをあげると、
「あー、それはどーもすいませんね」
と
ぬぬぅあにいぃ〜〜〜???
これまでの
「アンタねぇ、」
と、人の道理ってものを
言ってきかせてやろうとしたところで
バコッと 頭を打った。
だあれもいないはずの後ろをふりかえると
先生が丸めた教科書を手に
怖い
そのあとは、お互い、
むっつり 黙って授業を受けた。
🟤 🔵
さっきのやりとりを
ハズミは大体、聞こえていたらしい。
しかし 改めて、ひろから話を聞きたがった。
もちろんひろは、ぜんぶ話した。
今のは事実 起こったことで
やつの秘密とは、全然なにも関係ないのだから。
「わたしもさ、思えば、雪村としゃべったの
これがはじめてだよ。最悪だけど」
ひろはかっかと怒り、
ハズミはお笑いのコントみたい、と面白がった。
こうしたナイショ話は教室ではできないので
廊下にでて話している。
もちろん 廊下にも生徒はいるけど
人の行き来する中でだと
かえって人目 や耳にとまりにくいのである。
「だいたいねぇ、教科書見せても
ありがとうもないんだよ。
せめて『ごめん』とか、なにかひと言
いいなさいよってかんじ。
しかも 広げてやってるのに、見もしないし。
ページめくるのは、わたしだし…
ああ〜もう〜、許せないっっ」
「まぁまぁ、 ドゥドゥ」
ハズミは馬にするみたいに
ひろの背中を叩いて なだめた。
ひろはフーッと荒い息をはきだした。
しかも…始終あの態度!
きっとアイツとは、友だちにもなれないね。
ふん。さようなら!
「ひろ? あのサ… 今からちょっと
となりに行こうとおもうんだけど…いいかな?」
ハズミが何かを伝えるように目を細め、
手前で 小さく 指さした。
となりとは、となりの教室だ。
ひろは目だけで了解を伝え
ハズミと一緒に四組へはいった。
新聞部の、いや、ハズミの片思いの、
元木に会うためだ。
元木は学年新聞のリーダーをしている。
ハズミは元木に、新作を売り込みにいくのだ。
ハズミが、四組の教室にはいると
「師匠がきたっ」「始まるぞ!」と
数名が騒ぎだした。
ハズミはそのなかを、ゆうゆうと進む。
それにつれて吸い取り紙のように
人が集まってくる。
最近では見慣れた光景だ。
ハズミは元木のところまで行くと
いつものように、二、三、やりとりをし
みなの見守るなか、満を持してネタを
「カマボコ
ハズミの新ネタに、まわりがどっと湧いた。
カマボコ
面白ければ 学年新聞に使われる。
ハズミの芸はなかなかよかったらしく
元木はメモ帳に書きとめはじめた。
不定期だが、ハズミの一発芸コーナーは
学年新聞の
元木の質問に、ハズミが得意げに答えている。
ひろはいつものように
離れた位置からそれらを見守る。
ハズミは 保育園の頃から
へんなダンスとか、面白い歌などで、
まわりを笑わせてきた。
小学校の頃は、ひょうきんな男子と組んで
漫才なんかもやっていた。
見物人はまだハズミのまわりを去らない。
どうやったら唇をカマボコに似せられるのか
元木の取材に乗っかって
やり方を見ようと 囲んでいる。
ハズミの芸は長年の磨きをかけ
そのへんのふざけた男子からも抜きん出て
今や
ひろは、そばで見てきた幼なじみとして
密かに
ただ、こうして長年付き合ってきても
どうしても理解できないのは
自分のヘンがおを
好きなひとの前でやろうと思えることだ!
恥ずかしいとは思わないらしい。
いや、むしろ 積極的といっていい。
わたしにはできない…。
まあ、誰の前でも、できないのだけれど。
「なるほど、同時にあごをのばす…と。
それってこう? え、違う?
わりと難しいなあ〜。そこ、どうやってるの?」
元木はヘラヘラ 頭をかきながら
なんの疑いもない顔で質問している。
そのさまを外から観察しておもう。
ハズミのクラスには
同じ新聞部のゆりがいるのだ。
なのにわざわざ 四組まで出向き
こうして自分にネタを見せにくるのを
一体なんとおもってるのだ?
リトマス紙みたいなハズミのほおは
心の反応が赤にでる。
今ほおが赤いのは、
自作に対しての情熱… プラス、
目の前の相手ってとこかな?
さっき シャーペンで チクリとやった
雪村のことを考える。
心が出る、リトマス紙を使ったら…雪村め、
現れる証拠の色に
ぐうの
🟤 🔵
四組をでて、ひろはハズミのわき腹を
ひじでこづいた。
ハズミがひろの顔を見て
「モウッ」と こぶしをふりあげる。
「ハハハ、ゴメンってば」
ひろが逃げると、ハズミは後ろから
モモンガみたいに飛びかかった。
「 元木って新聞バカっていうか、
そういうの、ウトそうだよね 」
ひろハアハアわらいながらいった。
「わたし手伝ってあげよっか?」
そして耳元に口をよせ
「ハズミことオシたげる♡」
と、ささやくと
思いっきり はじき飛ばされた。
「 モウッ、やめてよ 別にいいんだから!
アタシなんて頭わるいし、
ぜんぜん美人ではないしサ。
それに元木より背が高いし…、ああ!
ひろにはわかんないョ」
そう言いながらみるみる落ちこむハズミに
ひろは驚いてかけより、肩に手をかけた。
元木より背が高いのは仕方がない。
だって元木の背が低いのだから。
「ナニしょうもないこと言ってんのよ!
あなたはね、間違いなく、ステキな女の子よ」
叱るようにひろは言った。
元木の好みなんて知らないけれど
どうして自分を、そんなに低く見る必要がある?
わたしから見れば、こんなの不公平で、
意地悪としか言いようがない
「ハズミは楽しいし、やさしいし、
それに 本当にカワイイんだから!
人気だってあって…今日もすっごいウケてたし
ハズミのファンだっているんだからねっ」
ハズミが知らない子から声をかけられるのを
ひろは何度もそばで見てきた。
自分にはそんな経験 、一度もない。
そんなとき…密かにうずまく感情を
ハズミは知らないだろう。
ハズミの引力に、まわりの心が集まるとき
わたしはそばの背景になってしまう。
いてもいなくてもいいような…
心地のわるい具合になる 。
そこにいるだけの自分より
ハズミの方が、上等な人間に思えてくる。
まわりから認められ、尊敬され…
自分とはぜんぜん違うと感じる。
違うのはいい。
人はそれぞれ違うんだし。
でも負けてると感じる。
こんな気持ち、ハズミには言いたくない。
だってハズミは、わたしと友だちであることを
誰かからうらやましがられたり
することないでしょ?
「それに…あんな面白いこと思いつくんだから、
ハズミが頭わるいはずない!」
落ちこむ友にエールを送る。
ハズミは自信なげに顔をあげ、
ひろの目をじぃっと見た。
「英語が…たとえば57点でも?」
ハズミの問いに、ひろが力強くうなずく。
いじけた声で、ハズミが続ける。
「じつは古文、33点だったんだ…」
その告白にひろはショックを受けたが
なるべく表情に出さずにうなずくと
「古文なんてさ。
今を生きる 私たちには関係ないよね」
と肩をすくめた。
ハズミの口が、
ニヤリとほおまで伸びるのを見た。
目に、いつものほがらかさが、もどっている。
ひろもニヤリとやり返す。
「サンキュー 、ひろ。
へへっ…なんか自信でた。成績なんて関係ない!
アタシ私 お笑い芸人になるつもりだしっ」
そこでチャイムが鳴り、
ハズミはウーンと伸びをすると、
「よーし、またネタ考えよ。
授業中って集中できるんだよね〜 」
と 教室へ足を向けた。
ひろはまたもや ショックを受けたが
おとなしくハズミのあとに従った。
ま…いっか?
そしてひろも、ウーンと伸びをし
とりあえず良しとした。
❄️ ⛄ ❄️ ⛄ ❄️ ⛄ ❄️ ⛄ ❄️ ⛄
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