第9話 女神様とのデート
日曜日。いつもなら家で相棒(布団 最近名前を決めようかなと思っている)に包まりながらゲームをしている所だろう。同志も多いはず。
だが、すまんな同志達よ! 今日の俺は違う! 今日の俺は——デートに行くのだ! それも光雪学園の女神こと冬奈さんとな!
と言うことで、今は玄関で靴を履いています。時間は約束した時間(12時)の1時間20分前の10時40分。
今から出て待ち合わせの場所に行けば1時間前くらいには着く。流石に待ち合わせの1時間前には来ないだろう。
「翔梨、行くの?」
「ああ、行ってくるよ」
我が姉、真子姉さんが俺のお見送りをしてくれるらしい。本当に良い姉を持ったよ。まあ持ったの最近だけどな。
「なんか最近犯罪集団? がこの街に居るらしいから気をつけなよ」
「了解。行って来ます」
真子姉さんに挨拶し、外に出る。
途中、自販機で水を買い、そのまま歩く事20分ほど。待ち合わせ場所に着いた。
そして、冬奈さんが居た。マジか、1時間前だぞ。
だが、その冬奈さんは——
「ねえ、俺達と遊ぼうよ!」
「……」
金髪でやんちゃしてそうな男達に絡まれて居た。だから俺が早く来たかったのに……。
何故黙っているんだ? まあ、このまま立ち止まっていてもアレなので割って入る。
「ごめんなさい、お兄さん達〜。この子、今日俺と映画に行くんですよ〜」
あまり事を荒立てたく無い。まあこんなので引くとは思わな——
「なんだよ彼氏が居たのかよ〜! ごめんな2人とも! 邪魔したな!」
そう言ってどこかに行った。そんな男達に俺は……。
「……聞き分け良過ぎるだろ」
なんて呟く。だってそうじゃない? いかにもチャラそうだったしさ。
「翔梨君……こんにちは。い、イいテんキね……?」
ちなみに今日は良い天気とは言えないほど曇って居ます。
「あ、ああ、こんにちは。い、良い天気だね……?」
だから今日曇りだって、と心の中で思いながらも返答する。そして、緊張からかはわからないが2人とも沈黙。少ししたら冬奈さんが口を開けた。
「じ、じゃあ、行きましょうか」
「あ、ああ、そうだな」
傍から見たら挙動不審の2人。俺達は少し時間があったので寄り道した後、映画館へ向かう。あそこの電柱に居るやつは……今は無視で良いだろう。
その途中、冬奈さんが右利きなのにお茶を飲む時に左手を使っていたので何故かと聞いたら「私もなんでかわからないわ」と言われた。
もう1つ。何故男達に絡まれて居た時に何も反応しなかったのと聞いたら「あの人達はチャラいけど良い人よ? 心の声が綺麗だったわ」とのこと。やっぱり良い人なんじゃん。
そんな雑談をしながら映画館に着き、ジュースなどを買い、劇場に入り、予約していた席(映画は初めてなので姉に手伝って貰った)に座る。
今回見るのは感動物の人気作。水初が好きらしい。
右に座った冬奈さんを見てみるとワクワクを隠しきれないようで体が少し揺れてたりしていた。やばい、可愛いんだけど。冬奈さんは俺と同じで映画は初めてらしい。
そんなこんなで映画が始まる。映画は面白く、思わず見入っていると。
「うおっ!」
俺の右手に誰かの左手が重なった。勿論その相手は……冬奈さんだ。
何事だと隣を見てみると、冬奈さんが号泣していた。
「うぅ……ポチ……」
この感じからして、無意識か? やべぇ、思ったより力が強いから避けられねえ。まあ避けなくても良いか。合法的に美少女と手繋ぎや〜なんて思っていたら冬奈さんが左手で近くにあったジュースを持ち、それを飲む。
「あ、あの……それ俺の口つけたジュースなんですけど……!」
「うぅ……ポチ……」
再放送か? 全然気づいてませんね!
「なんか私のカフェオレビリビリする……」
でしょうね! それ、カフェオレじゃなくてコーラって言う飲み物なんですよ!
その後、映画が終わった。全然集中して見れなかった……。
「いや〜映画面白かったわね! あのポチがショベルカーの上でタップダンスを踊る所なんか……あれ、私のカフェオレが減ってない。結構飲んだのに何故かしら?」
どんな場面だよ。ポチ何してんだよ。そしてキョトンとしないで? 理由は明白だよ? 俺はあまりコーラ飲んで無いのに容器空っぽなんだから。
冬奈さんはさっきの手繋ぎも、間接キスも気づいていないご様子。照れてるのは俺だけかよ……。
映画館を出て、なんやかんやありながらも時刻は18時。もうそろそろ解散かな。
「ありがとうね、翔梨君! 今日はとても楽しかったわ!」
笑顔でお礼を言ってくる冬奈さん。その笑顔が見れただけで今日はもう満足かもしれないな。
「ああ、俺も楽しかったよ。今度は俺から誘っても良いか?」
「え、ええ! 勿論よ! 是非誘って!」
「お、おう……」
顔をめっちゃ近づけてくる冬奈さん。貴方は少し自分の顔面偏差値を自覚してもろて。
冬奈さんとはそのまま解散し、帰路に着く。と、その前にやることがあったわ。
「おい、そこに居るやつ。出てこい」
「ッ!!」
さっきから俺達を尾行してたやつに声をかける。
「俺が気づいて無いとでも? 待ち合わせ場所からずっと居ただろ」
「ちっ」
舌打ちされたんだけど。尾行してたのそっちなのに?
そいつが電柱から姿を現す。高校生……? いや、中学生か……あれ?
俺はこのストーカーに見覚えがあり、思わず言葉を発していた。
「え〜と、いつも冬奈さんが近くを通った時に倒れている……胡桃……だっけ?」
「私の事を知っているのですか。冬奈様をたぶらかしたゴミが」
「は?」
折角気分良かったのになぁと思いながら、俺は天を仰いだのであった。
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