声で、光で。

ゆ〜

 

 舞台のリハーサル。

 僕はいつも通りの脇役モブ

 舞台袖から覗く舞台上では、まるで踊っているかのように照明が動き、色が変えられていく。

 光で照らされる演者たち。

 

 主人公。

 

 メインキャラクター。

 

 ヒーロー、ヒロイン。

 

 

 

 僕には程遠い英雄キャラクターたち。


 

 スポットライトが照らされる価値など無い通行人Aモブ

 ヴィランにもなれない僕。


 別に構わない、というわけでもない。

 頑張っても役がもらえず、その度に


 「お前に価値など無い」

 

 と言われている気分だ。




 小さい頃に見た照明は、とてもきれいだった。

 英雄キャラクターたちを追い、目立たせ、時には感情の表現までしていた。


 僕もあんなスポットライトに照らされたいと願った。

 でもそれと同時に照明を引き立たせられる役者になりたいんだ、とも。


 今になり冷静に考えると何を考えているのか全くもって不明だ。

 照明は「役者を立てるため」にある。

 これは揺らがない。


 いっそ照明係にでもなろうかなって思った。

 でも、小さい僕を裏切れる気はしなかった。


 僕は演技を続けて



 *+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*



 今。


 別の方法でライトを浴びている。

 色とりどりの照明ではなく、白一色の味気ないライト。


 それでも私はライトを当てることができる。


 私の声が、一つの情報に。


 この世の中で誰かが待っているかもしれない、埋もれてしまっている情報に。


 アナウンサーとして。


 私は今、

 声で、世界を、情報を照らしている。

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声で、光で。 ゆ〜 @MainitiNichiyo-bi

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