新しい家!新しい生活!

大通りを歩いて行く。

「ラッキーでしたね」

「ああ運が良かったな、一時は逮捕されると思ったが奴隷を持っていたおかげで金持ちだと信用されたらしいな」

「感謝して下さいね」

得意気に笑って言う。

「とりあえず家に荷物を置いて服でも買うか?」

「結構ボロいですよねご主人」

スネの部分は擦り切れて穴が空いている、元々作業用ではないからだ。

「お前にだけは言われたくない」

メラニーの服は茶色の船乗り用ジーパンにタンクトップだ、それにシミと所々黒い焦げがある。

「この奥だったな」

役所から10分歩くと門付きの通りに着いた、特別な地域らしく剣を持ったフルプレートアーマーの兵士が1人立っている。

「この先は市の直轄区域だ!何をしに来た?」

厳つい顔の兵士が言った。

「新しく採用された職員の者です、市営住宅を案内されました」

「鍵はあるか?」

「こちらに」

鍵をポケットから出して見せた。

「本物だな、一応ステータスを見せろ」

ステータスを表示させると職業欄にブルーノ市防衛局下級防衛局員と表示された。

「俺の上司じゃないですか!なんでそんなに奴隷と揃ってみすぼらしい格好なんですか?」

「色々あったんだ」

「浮浪者かと思いましたよ!早く服買って下さい!」

「すまん、荷物置いたら買いに行くよ」

検問所を通り抜けると通行人にヒソヒソ声で指をさされながら足早に家に向かう。

「クソ恥ずかしいな」

「しょうがないですよ」

しばらく歩くと一軒家が見えてきた、地図通りの2階建てで番地も合っている、大通りの家よりは上等な作りだ。

「ここで間違いないな」

渡された鍵で玄関を開けた

「広いですね!」

メラニーがはしゃいで室内を走り回る、どうやら土足らしい。

全面板張りの部屋には魔力を使って調理を行うコンロ付きキッチンとベッドと椅子とテーブルが一つずつ置かれていた、玄関の直ぐ隣には窓がある。

「これなんだろ」

キッチンと玄関の間にあった玄関くらいの大きさのロッカーらしきものを気になって開けてみた。

「ちょっと古いけど使えない事ないな」

洋式水洗トイレであった。

ドタバタと2階から音が聞こえる。

「ご主人!来て下さい!私の部屋ですよ!」

ニコニコ顔で階段から降りて来たので見に行くと。

「でかい広間だな、倉庫にするか」

窓付きの階段を上がると広間と階段の後ろに小部屋があった。

「ご主人!窓付きですよ!」

尻尾をブンブン振りながら言う。

縦横3Mと2Mの空間には窓とベッドが一つあるだけだ。

「息苦しくないか?」

「船だと窓がないですし、そもそも個室じゃないですよ」

うれしそうに答える。

「じゃあ荷物置いて買い物行くぞ」

「はーい!でも売れそうなのないですか?」

「確かにな、選んで置いていくから玄関で待ってて」

荷物(ノート、筆記具、缶詰、防災飲用水)を置いてテントを売りに、護身用にナタをベルトに固定してリュックを背負い家を出た。


「ご主人!市場に来た事はありますか?」

大通りに出たところで聞かれた。

「いやないな」

「ですよね、貴族の方みたいですし」

メラニーが歩きながら不思議がる。

「ただの一般人だよ」

「ならなんで読み書き出来てるんですか?もしかして商人とか?」

「僕の国では全員読み書きできるんだよ、しかも貴族はいないし」

「そんな事ないでしょう、いくら奴隷だからって馬鹿にし過ぎですよ」

少し怒った。

いつの間にか市場に着いていた

まずは古着屋に入った。

「お二人さんどっちが奴隷か分かりませんな」

奥にいた老婆の店主が笑う。

「遠くから移住してきたんです、何かいい服ないですか?服がこれしかないんです」

「あるよ、洗い替え含めて6着はいるね」

「4着で十分じゃ?」

メラニーが聞く。

「アンタ、市の職員でしょ?噂は早いよ」

ニコッと笑うと

「服は選んどくから、買い物の続き行って来な」

古着屋を追い出されてしまった。

「さて次は調理道具だな」

金物屋でフライパンと小鍋を買った。

メラニーがデカい包丁を持って来たが却下した。

「久しぶりに能力使いたいし換金できる物探すか」

「ご主人、能力と換金ってなんかするんですか?」

「それは家に帰ってからのお楽しみ」

メラニーはどうも納得出来ない顔をしていた。

しばらく歩くと旅商人の露店があった、どうやらアクセサリー類を売ってるらしい。

「物々交換出来ますか?」

「物によるネ、何を持ってるネ?」

アジア系によく似た顔立ちの男にテントを見せた。

「アイヤーこれは良いものネ!金になるネ!」

「交換成立でいいですか?」

「でも良すぎて装飾品1つとは交換出来ないネ、15個までは持って行くヨロシ」

「ではそうさせてもらいます」

見栄えの良さそうな物を選んだ、トパーズなど宝石が使われているようだ。

「また来てネ!」

「ご主人?それは私へのプレゼントですか?見たところ何も呪文がかかっていないみたいですが」

「欲しいなら1つあげるよ?」

「いらないですよ」

露店を後に、食料品を買って古着屋に寄った。

「おや、来たか」

「良いのありました?」

「よく似合うよ、普段着と作業用と役所に行くのに小綺麗なの用意したからね、奴隷のお嬢ちゃんの分もあるよ」

「全部でいくらです?」

「そうだねぇ、オマケして500燕でいいよ、本来なら800燕は取るからね」

「それは助かります」

「いいよ、今後もご贔屓に」

この日は随分と軽くなった財布と重いリュックを背負い家に戻った。


「ご主人!この服どうです?似合っていませんか?」

フリフリの青いローブに着替えたメラニーがはしゃいでいる。

「良いじゃないか、あの店主中々良いセンスしてるね」

料理をしながらそう言った。

今日の夕飯は蒸したジャガイモにバターを乗せて済ました。

「もっと良いもの作れないんですか?ご主人」

ベットを椅子代わりにして座っているメラニーが船乗り時代よりひどい飯に顔をしかめる。

「仕方ないだろ、ほとんどした事ないんだから」

「船の時も材料切るだけでしたもんね」

バカにしたように言った

「うるさい、それよりスキルの説明を後でするから」

食べ終えると買っておいたアクセサリーをテーブルに置く。

「僕はなこの世界の物を他の世界の市場に出品する事と買う事が出来るんだ」

「誰が買うんです?魔力も付与されていないのに」

不思議そうに聞く。

「向こうの世界には魔力が無いんだよ、だから売れる」

「お金は共通なんです?」

「いや違うよ、じゃあ出品するよ」

無人島の時と同じように写真を撮って値段を付けて出品した。

「これで良いんですか?モノはここにあるのに」

「良いの!、明日には売れてるだろうし早よ寝るぞ」

「はーい、おやすみなさい」

2階へ上がって行った。


次の日である

「おっはよー!郵便来てたよ!」

元気の良い声で叩き起こされた。

「ねっむ」

眠気を感じながら手紙を読んだ、役所かららしい。

「最初の出勤は明日だな」

役所らしい言葉を要約するとそんなところだ。

机の上のアクセサリーはまだある、売れていないらしい

「公衆浴場と買い物行ってくるし適当に過ごしといてくれ、小遣いやるし区域内なら安全だろ」

「太っ腹じゃないですか!ご主人!」

「100燕で良いな、じゃ行ってくる」

昨日買い物したので残りは1300燕ほどだ。

古着屋で買ったズボンとシャツを着て検問を出た。

「さて、まずは大通りの十字路に行こう」

昨日役所前にデカい地図があるのを思い出し行く事にした、浴場は役所の隣である。


浴場に着いた、どうやらこの世界でも番台があるらしく老婆が立っている。

「アンタちょっといいか?」

「なんでしょう?」

料金を支払って男湯に入ろうとした時であった。

「お前は女だろう?身体を売ろうってそうはいかないよ!」

「僕は男ですから!」

「嘘つきめ!なら見せてみな!」

見せた…マイキャノンを…!

「しまいな、さっさと行け!」

この世界二度目の誤解と訂正である。

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