生まれ変わりの考察⑤〜いつまで続くんだこれ

 あの日から…私は度々アプリを開く。


 ―娼館サトルオーク!―


 何で画面消すたびにログアウトされるのか、何でびっくりマークが入っているのか?

 そんな事にイライラしながら何度も何度もアプリを確認する。


『サトル君…何で…呼んでくれないの…』


『ばあさんや?何見てらっしゃるの?食事は食べましたよ?』


 娘は煽ってるつもりだろうが…


『セフォルニアの呼び出しチェックよ、街の平和を守る使命があるの』


 嘘だ…実際の仕事の方はショートメールで勝手に来る。


『おばあさん?家庭の平和を守る気はありませんか?』


『家庭は平和よ、いや、家庭?もしも…』


 私はサトル君との新婚生活を想像する。

 具体的の、よりリアルに、細部まで…


『うえへへぇ♥しゃとるきゅんと台所でしぇく『やめろ!きさまぁっこのババア!!』


 娘がギャーギャー煩い、そんな毎日の中でサトル君が退院するまでに4回程、娼館に呼び出された。


【セフォルニア、ちゃんと抗って下さい。サトルオークは決して堕ちる事を望んでいません。死ぬ気でガンバ】


 しかし私自身も繰り返し行われる行為に間違いなく心が奪われていた。


『せふぉにあ!♥もうだめでつっ♥くりゅううう♥』


 これを堕ちていくというか?

 娘の薄い本にも出ていた、奪われ悲しみに暮れる人々を。

しかし私は別に彼氏も、そして夫も離婚していて守るべきものは無い訳で…


『わちゃようらめ♥わらし!ふじやらでしゅ!せちゅこ!しぇ『ハイそれ駄目』モガガガガガー!?♥


 3回目ぐらいで既に耐えられなそうに無い。

 普通にラブロマンすれば良くない?

 担当者は私の提出したラブロマンには、一瞥すらしない。

 飛行機で偶然隣とか意味わからないって、用意すんのめんどくせぇとか言われた。

 サトル殿下との出会いといえば飛行機でしょ?全然聞いてくれない。


 よって、へんな妄想をする事で乗り越えようとした。

 サトル君はサトルオーク、いや、サトルに操られている。

 私が耐えて、彼を元に戻してあげなければならない。サトルからサトル君を取り戻さなければならない。その為に耐えなければ…


『サトル君!正気に戻って!』


 5秒後


『オベベエエエ♥もっろー!♥もっろちょーらいぃ!もっ!?モガゴっ♥』 


 ネコちゃんに次は正体を明かしたいと相談したら、やったらスタートから猿轡と言われて、それはもう正義も何も無いなと思いつつ…退院の日が来て…そして数日…。


 夜中、家でゴロゴロしてるとアプリに通知が来た。


【サトルオークが明日、貴女を終わらせると言ってます。次回1時間コースではなく6時間コースになります】


『キエエエエエエエエエエ♥♥♥♥』

『夜中にうるせぇっババアっ!』


 期待と不安が入り混じる…あれ程正体を晒すなと言われているのに…何と夕方、一緒に仕事した後に娼館でも会う…


 この日、私は運命の日と呼んでいる。

 私が完全体になった日だから。


 当日の朝、職場に着くと王蟲風の生き物達が何か言っている。

『サトル君が退院して良かったわ』『良かったわねぇ』『キレおばなんとかしてくれないかねぇ』


 がアァアァアァ!


『無駄話はしない!ほら!仕事仕事!』


 社内メッセージで【声がデカいです】とか送られるが無視無視。

 王蟲がサトル君の話をしていると思うだけでムシャクシャする、虫だけに。

 私のサトル君の姿を想像するんじゃあ…ない!


 いけないいけない、サトル君が来るのよ…どうしよう。

 結果、私は被害者になる事にした。

 案の定、クビにしろだなんだメッセージで送ってくるのでそのまま放置。


 王蟲共は口をクパァクパァしてるだけ、タツと一緒、その音に意味は無い。


 そしてサトル君が…




 気付くと電話ボックスに押し付けていた。

 だってやる事なすこと小田和正のオープンニングか流れるんだもん♥

 サトル君、セ○クスしよ?ね?もういいでしょ?

 娼館はお休み、今日は私と…



 と思ってたら娘と元旦那がいた。

 久しぶりに元旦那、龍倫さんを見た。

 前回、何かファミレスで見かけた様な気がしたけど…

 あれほどまでにこの人に気持ちを捧げていたのに今は一ミリも心が動かない。

 女とは恐ろしいもので、過去の恋に動じない。

 同時に自分は女になったんだなと思った。


 ただ…恐れたのはこの邂逅によってサトル君が私から離れる事が一番恐ろしい。

 普通に考えればバツイチ女の元旦那と娘セット【別名ゴミセット】なんか絶対会いたく無いだろう。


 更に言えば…客観的に見ると龍倫さんはクズだ。

 何を言い出すのか分からない、クズだ。

 そして娘は馬鹿だ、こいつらと親族になると思うだけで…


『うぅッ!?』


 吐き気を催すほどの邪悪。それが並んだ。


【親父、NTRアンケートだ。散々愛していると、寡婦として一生添い遂げると言っていた元妻が路上で寝取られた、どんな気分?】


【そうだな、凄く一万円貸して欲しい。いや、慰謝料で一万円請求する。今一万円あればあの台は間違いなく出るから】


 おさとが知れる…という言葉があるが、まさに知らしめたと言わざる得ない。

 これでお終い…私は一生、こいつらから逃れられないのか…


 しかし…サトル君は違った…突然、秘書?を呼び出し指示する。


「今手元にある俺の有り金、全部この人に渡してくれ。それが慰謝料だ」


 ドサ…


 それは見た事も無い金額…いや、殺し屋時代にあんな感じのお金の束は見た事あるが人の生き死の話だ。

 これはただの恋愛のもつれ…それにこの金額は…


―何と…いつも軽口を叩く彼は、実は王子だった―


 ある小説の一節、何とかクインとか言うよく燃えそうな紙で出来た新書本。

 ラブロマンスの詰まった本ではいつも【実は】だった。


「セツコさんさ、少しでも苦しいのなら、それは違うんじゃないかな?」


 私の悲しみ、苦しみを全て理解し、私を救う王子。

 その王子が血の涙を流した…

 

「え?なみ…あ、あぁ…!?血!?そんな!?サト…ル君…!」


「あぁ、気にしないで…ちょっとね。人の悲しみに反応しちゃって」


 悲しみにまみれ、悲しみを背負い、悲しみの中に生きる。

 今の秘書の人…あの人は彼を裏切り続けた元カノの筈だ。

 全てを背負い、自らの道を征く人。


 私はこの人に…


 「それではまた!とりあえずまた、考えましょう」

「え?あっ!また!?待っ!」

「それじゃ!」


 そしてまた、飄々とサトル君に戻る。

 私はもう…彼無しには生きていけないと思う。





『と言う訳で、もう逆らうとか無理です、6時間ラブロマンスでお願いします』

『駄目です、貴女は自分の都合ばかり押しますが、こちらの話も聞いて下さい』


 サトルオーク管理人のネコちゃんが中々首を横に振らない。

 仕方なく変身する、無言で。


『セフォルニア…もうサトルオークにメロメロぉ゙♥』


 存分に一人発電をした後に、イロハさんが迎えに来たので行こうとすると娘に見つかった。

 

『お前、ちょっとこおぉー!話がある』


 何でヤンキー漫画の呼び方なのが知らないが、私に話は無い。


 リビングにはまたワラワラ人がいる。


『母裁判を始める、この人はもう頭がおかしい』


『そんな事言っちゃ駄目よ?タッちゃん…』


 輝夜のカグちゃんは私の味方だ、だから本音を伝える。


『カグちゃん、本当に恋を見つけたの。一生見つからない、本物の恋、そして愛。生きてきて良かったと思っているの』


『セッちゃん…『なにワケのわかんね―事言ってんですか?するなら普通にしろやババア。その変態ヒーロー…しかもアンタ存分にエロい事して、更にしにいくって本当にどうなの?人としてどうなの?だからマジで普通に…おい!待て!』


 私は娘の意味不明な話から逃げた。

 イロハちゃんは捕まったみたいだが仕方が無い。


 私はサトルオークのいるラブホの最上階、VIPルームに向かった。

 そしてドアを開ける…この先にサトル君が…


「しら…んっ♥ゆきけっしょ…おっ♥セフォ♥フォル♥ルニ…あ♥ただいま…いっ!イグゥッ♥」


 問答無用でいきなり磔にされ始まる♥

 私のスーツ、一番肌に近いレオタードは薄くビッタリしていて、避妊効果もあるというが3回目で破けていた。

 望む所と思ったがパンちゃんとやらに避妊薬を飲まされ計画は頓挫。

 更に言うと3回目で最早、意識が朦朧としていた。


『しゃとるおーくぅしゃまぁ♥もっとぉもっおぉ♥』

『今日は10回はやれる。何せ堕とすからな。もう堕ちてるように見えるけど、飲んじゃったからな、俺。精力剤を』


 私は少しの間で戻った意識で聞いてみたい事を聞いた。


『何で…サトルオークはこんな事をするの?ふ、普通のラブロ…恋愛で…良いじゃない…』


 一瞬、ラブロマンスって言おうとしたらネコちゃんが猿轡を持ったのでやめたが…サトル君は以前、普通の恋愛、そして普通の家庭を持ちたいと言ってたらしい。

 それが何故、ハーレムなのか…


『裏切りだ、裏切り。だが、人は得てして裏切るもの。俺はアバズレのおかげで気付いた。勿論、ウンコのアイツみたいに一人の人を愛する女もいるだろう…だがな、気付いたンだ。俺の道…そう、人を見る事をやめた時、俺の道が見えた。正確には道じゃない。何も無い所を進む俺。イメージする。それがただ、運搬デリバリー地獄ヘル(ス)だったという事…それだけだ』


 そんな地獄を…この人は…


『お前も来るか…我が地獄ヘル(ス)に…』


『わ、私は!例え堕ちても蘇る!サトル君に会う為に!貴方には負けないわ!』


 言ってみたものの、今では触られただけで意識が飛ぶくらい敏感です。

 だが…サトルオークは更なる手で私を地獄ヘルに貶した…


『ふふふ、それ良いね…なぁ?』


『な!?♥違っ私は…セフぉ゙っ!?♥アフッ!?♥』


 耳元で何度も【】と言う真名を呼びながら愛撫する。既に溶けかけていた脳が弾けた


『セツコさん、本当はセツコさんなんだろう?ん〜?俺の悲しみを…受け止めてくれ…』


『おびょっ!?♥しぇっつ♥にゃらいッ♥』


 呂律の回ってない舌で吐いた言葉が最後の抵抗だった。


 夕方…サトル君の時に見た血の涙が垂れる。

 その血が私の舌に落ちた…


『モキョキョキョキョギョォォォォォッ!?♥♥♥♥』


 自分の肉体のコントロールは武術家の基本、そのコントロール、自分を失う恐怖、歓喜に包まれる心。

 果てない痙攣の中で見失う今までの自分。


 そして、異変が起きた…意識が戻っては飛ぶの繰り返しの中で。

 出される回数を重ねる毎に起きる変化。

 私はセフォルニアである白銀の髪は戻り、黒色に銀のメッシュの入った髪に…顔は更に若返り10代の頃に戻ったかのような、小さく硬かった尻がブリンブリンに跳ね、出される度に胸が大きくなり…平坦だった胸がEカップになっていた。


 その都度、私の身体が侵食される。


 サトル君の悲しみと愛で…


 私は生まれ変わったのだ…サトル君のおかげで女になった。

 もう…サトル君無しでは生きていけない。

 

―――――――――――――――――――――――


 ばあさんが街なかでサトルウンコに襲いかかってるのを見かけて煽った。

 とうとう現実と幻の境界線がおかしくなったと見える。

 そして家に帰って考え事をしていると母親は『しゃとるくーんっ!♥♥』みたいな奇声を上げる。

 上げるのはスペースシャトルだけで十分、汚い花火は…とか思ってたらサトルのストーカー、メイプルーンが生き恥母を迎えに来た。

 ヒロが何故か快く迎えている、駄目だろ…


『おじゃましまーす…』

『あ、カエデさん…スゲェ格好だね…セツコさん?』

『はい…ネコさんの指示で…』

『ごめんね、ネコも大分おかしくなっちゃって…』

『いえいえ、そんな…』


 なに普通に話してるワケ?


『おい、邪魔だメイプルーン。お前は謎の畑で目が見える様になったとかほざいてろ』

『あ、藤原さん、セツコさ『ババアは死んだ、永遠に』


 これ以上問題を起こしてはいけない。

 しかし馬鹿が部屋から出てきた… 


『イロハさん、ありがとう。それでは行きましょうか』

『行きましょうか?じゃねぇ…その格好で外に出るつもりか痴女ババア、略してチバ』


 ババアはセフォルニアとか言う、私の見ていたNTR悪堕ち同人誌の変身ヒロインと同じ格好をしていた。

 コイツ、作ってもらう時そのままアレ持ってったろ…乙女銀星たっけ?最初の恋愛部分が良いなと思ったけど、漫画先生はNTR悪堕ちしか書かないからオチが見える恐怖の連載…

 じゃねぇ、とにかくうっすい水着風レオタードの上から、同じ形だけど胸と股だけ開いてる変態レオタードの重ね着みたいな格好に長手袋にブーツ履いて…何やってんだよコイツ…


『お前!ちょっとこおぉー!』『何よアンタ!』


 私はヤンキー漫画の呼び方で母親をリビングに引きずった。


『母裁判を始める、この人はもう頭がおかしい』


『そんな事言っちゃ駄目よ?タッちゃん…』


 お義母さん、駄目だ、コイツは駄目なんだ。


『カグちゃん、本当に恋を見つけたの。一生見つからない、本物の恋、そして愛。生きてきて良かったと思っているの』


 生きてて良ければ家族を犠牲にするババア。

 恋をするなとは言ってない、その格好で家から出る事に疑問を持たないのか?

 先日近所の人に変な格好で徘徊してると言われ、それは変質者ですね、捕まえたら殺しますと言ったが『まぁ怖い…』と言われた娘の気持ち…


『セッちゃん…『なにワケのわかんね―事言ってんですか?するなら普通にしろやババア。その変態ヒーロー…しかもアンタ存分にエロい事して、更にしにいくって本当にどうなの?人としてどうなの?だからマジで普通に…おい!待て!』


 逃げた…と、同時に明らかにメイプルーンが逃げるとは聞いてなかったのかオロオロしてる所を捕まえた。


『ヒイィィィい!?』

『お前は鵜飼の鵜だ、場所を案内しろ…』


 コイツの装備にはウチのパソコンに視界が繋がる様に以前、セットしてある。

 このメイプルンのヘンテコスーツが諜報モデルとか言うのが仇になったな。


『よし!行け!兎よ!』

『ヒイィィィ!何したんですかぁ!?』


 疑問形になりながら逃げる、裏切り者の鑑だ。


 さっそく家のパソコンをチェックする…


「コレ、不味くないか?プライベートダダ漏れだぞ?てか、会社の会議で変なち○こが俺のアバターになってたのって…」

「まぁヒロ、過ぎた事は良しとしろ。馬鹿の痴態を見ようじゃないか」


 いかん…今、先日の件がバレそうになった。コレも婆さんのせいだ。


 その婆さんの映像が出てきた。

 いきなりヤッてた…これ、配信してんだろ?


『これ、見たら駄目なやつだろ…友達と嫁の母親の動画ってお前…』

『ヒロ、気にしたら駄目』


 しかしまぁ盛ってんな…と思ったら?


『タチュにはわらしからゆっときゅましゅーっ!♥』


 ブチッ


 私は血管がキレた…


『ヒロぉ、久しぶりにキレちまったぜぇ?オレのプライベート(名前のみ)を喋るクソ野郎だ』


『いつも自分がする事を他人がするとキレる奴っているよな…』


 ヒロが何か言ってるが気にしない。

 私は金属バットを持ち、頭から紙袋を被りババアを殺しに行く事を決めた。



※風邪ひいた…サトルは良いオーク…じゃなかったんだなぁ…

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