番外編〜話が一話漏れた、何故ならオレが〆るから

 私はステージでは気絶してないと…思う…けど、気付いたら控え室にいた。


 息を整えながら横を見るとメイプルが沢山のスタッフに押さえつけられていた。 


『離してぇっ!サトルさんが行っちゃうッ!置いてかないでっ!私、踊るから!歌うから!だからあああぁぁあ!!』


 泣き叫ぶメイプル…意識が朦朧としながら思う。

 メイプルは大丈夫だよ、きっと。

 だって音楽は、どんな時だって鳴っているから。

 そこで私の意識は途絶えた。


―――――――――――――――――――――――

 

 私はイヴからクリスマスに変わった日の早朝まで…10時間ぐらい寝てたようだ。


 メイプルや他のメンバーはいなかった。

 目を覚ました直後、すぐ出ようとしたらタクシーを呼んでくれたので、そのまま地元の駅前ロータリーへ行った。

 いつもの場所へ、約束の…駅前のロータリー…ナギサのステージ…



 そこに存在は無く…いや、冬樹の好きな、微糖と書いてあるけど甘ったるい缶コーヒーが置かれていた。


 やっぱり何処かへ行ってしまったのだろうか…探す前に…少し待とう。

 昔は私が待っていた。冬樹のアイデアが我慢できなくて、ワクワクしながらずっと待っていたな。


 そんな事を思っていると、知らないおじさん…ホームレス?に話しかけられた。

 

「あんた、駅前のナギサだろ?懐かしいな…そこにいたあんちゃんは知り合いかい?」

 

「えぇ…まぁ…はい」


 ちょっと警戒したから態度に出てしまったけど…ここに冬樹いたんだ…そう思うと切なくて…それに何で私が駅前のナギサって言われてたの知ってるんだろう?

 

「本当に…懐かしいなぁ…いや、じゃあそこにいたあんちゃんは昔後ろでギター弾いてた奴か…あんちゃん、救急車で運ばれたよ」


「え?は?いや、何で!?何処ですか!?病院は!?」


「いや、分からんよ…いきなりだったから。楽しそうに話してたよ、昔の事を」


 冬樹…会いたいよ…何処にいるの…


「あ、ありがとうございます!それでは」


 私は駆け出した。それから…



 メイプルや事務所の力も借りて探し回った。

 私は救急車から病院を探す方法が分からなかったから。

 そして、冬樹はすぐにみつかった。


 大学病院の一部を使って出来た特殊な病棟。

 【ラヴィ】と言うドラッグの患者専用の病棟らしい。 



 病室で沢山のチューブが繋がれて眠る冬樹。



「うああ!うあああああああ!!!」

 私は泣いた…分かっていた事なのに…私がなるべき姿に…冬樹がなった…

 

 その場にはシャカラの関係者や、プロデュースした女の子がいた。

 家族…おばさんは亡くなっていて、おじさん…社長は縁を切っている。

 だから私と離れてからの知人ばかりがいた。


 そこで色んな話を聞く。


 このラヴィと言うのはその性質から恨みを買いやすい。

 何故なら性行為で感染るから。

 冬樹やアーティスト達の使い方が特殊なだけで、本来はとても中毒性の高い、性行為を軸としたただハイになるドラッグだ。

 そして通常の生活では、余程使用していないと分からない。

 家族、恋人、友達…誰がなったか分からないが、なっていれば裏切り行為を行ったに直結する。

 だから病棟に入れるのも極わずか、発覚した段階でその者は捨てられる。


 後で知ったが、クリスマスと言う日に殺人事件が多発したのも、その影響だそうだ。

 その日に、一気にラヴィの後遺症が出たから…大量の裏切りか発覚したからだ。


 そして不思議な事に冬樹は誰にも恨まれていなかった。

 女の子に選択肢を与え、それを選んだ女の子のみ相手にしていた。

 男がいるなら曲を提供しない、ラヴィもさせない、自分の才能を譲渡する。

 だから、そこは妥協しなかった。

 自分が辛い目にあっていたから、女の子は冬樹のそれを知っているから。

 だから恨みようが無い、相手は後悔するしか無い。

 何故ならチャンスを与え続けた冬樹が最も重い犠牲を払う事が約束されていたから。

 後遺症、眠り続ける…記憶を失う…才能を譲渡し続けて、最後は何も作れなくなる…そしていつ起きるか分からない時間が全てを奪う…その罰の、最も重いものを受けたからだ。


 性行為も楽しんでいるようには見えなかった。

 彼が出すのを殆どの人が見ていない。

 そう、全ては創作の為に、全ては…


 だから私は彼を待つ事にした。

 いや、待たなければならない、待つだけでは無い。

 彼に幸せな記憶…想い出を…





 あれから一年近く、間もなくクリスマス…色々あった。

 私はアイドル…と言うか芸能の世界から離れた。

 冬樹の入院は生命維持もあり国からの補助が2年が限度だそうだ。

 それから先は誰かが払わなければならない。

 不安定で先の無い、冬樹のいない芸能に未練は無い。だから事務所を辞めた。

 社長、冬樹のお父さんは事務所に所属女優、今の奥さんの入院費を払っている。

 子供もいるそうだ。

 だから少しは援助する気だけど、冬樹1人分は手が回らない。

 だから私が冬樹を守る事になる。


 辞めてからも、メイプルとは友達であり同僚のままだった。

 冬樹の話をしたら木村建設を紹介してくれたから。最初は建設会社?って思ったけど、全然違った。

 広告事業の事務職…OLだ。

 慣れない数字に四苦八苦しているが、何とか頑張っている。

 ちなみにカエデは私のいた部署から秘書室に移動になった。想い人の秘書をしているらしい。

 これだけ借りがあるんだ、惚気ぐらいは聞いてあげている。


 私も…もう26、元々タレントというのもあるのだろけど、同僚や仕事先の人からデートや飲みに誘われる事が多い。

 仕事上、付き合いは、大事なんだろうけど…私は毎日行く所がある。だからその誘いには乗れない。

 昔だったら仕事だしとか思ったかも知れないけど…つまらない女と思われても良い。

 私には冬樹か全てだから。


『冬樹、ただいま!今日は何しようか?』


 おままごとの様な行動、それでも大事な事だ。

 

 医者に言われた、冬樹は五感はあるけど心は空っぽだ。

 たまに思う…無理矢理生かしてるだけで…本当は死んだ方が楽なんじゃないかとすら…


 それでも私は少しでも…何か返せればと繰返す。


 もし目覚めるとしたら赤子に伝える様に人の感情というものを全てを伝えてみてはどうか、と言われた。

 

 その日から色んな事をした。

 冬樹との想い出を再現した。

 

「今日は踊っちゃうよ〜冬樹、パンツ見えちゃうもんね?起きて止めないと見られちゃうかもよ〜?」


 たまにスカートで行くとプンプン怒ったね。


―ちょっと!?短いって!?それ見せるのは僕だけ…いや何でも―


 そうやって怒るのも可愛くて…あぁ…冬樹…


 室内にスマホから小さな音で音楽が流す。


 『ハイッ!ハイッ!ハイッ!ハイッ!ハイッ!……♪絡まるリズム? 高鳴るハート? 弾けるビート!………』


 あの日の曲、たまに駅前に行くとホームレスのおじさんがいたのでお菓子をお礼に渡した。

 その時に聞いた。

 冬樹は笑いながら、メビウスビートラビットを口ずさんでいたそうだ。


 私は音が出ないように踊る、見ててくれるかな?

 感じてくれるかな?

 こんな歳になっても、こんな衣装着ていても…

 起きて怒る、裏切り者と罵る、嫌う、それならそれでも良い、普通の生活が出来るまでサポートして…それで捨てられるなら構わない。

 ただ、もっと幸せな想い出を増やしてあげたい…


 私は、踊る、この曲なら音無しでも出来る。


 二人だけのステージ


 ここで三回ターン、腰をひねり回転………………






 ………………………………え?


 私は目を疑った…いや、そんな筈は無い。

 鍵を閉めた、この部屋に用事があるのは極少数のハズ…でも入り口に変なおっさんみたいなのが…


 もう一度ターンする。


 やっぱりそうだ、入口に何か変なガタイの良い現場作業員みたいなのが立っていた。 顔は見えなかったけど少しこちらに進んでいた。

 でもそんな訳無い…私は受け入れられない…おかしいよ、だって…


 最後のターン…やっぱり…近いっ!?


「ギャアアアアアアッッッ!?!?」


 私はターンの勢いでそのまま転び、多分漏らした。

 目だけ開いた紙袋を頭から被った現場作業員…女!?胸がある!?近い!?前進してきている!?

 

「な!?何ですか!?貴方は誰!?ここは冬樹の!?あっ!」


 その怪物は私を素通りして冬樹の前に行った。

 そして思いっきり拳を振りかぶり…


「やめてええええええええええ!!!」


 ガッッッ『ウオ!?』


 私はその化け物にタックルした。腰をつかんで必死に引き離そうとした。

 今、どう考えても無防備な冬樹を殴ろうとした。

 私は泣きながら懇願する。


「やめてぇっ!冬樹を殺さないで!冬樹がこうなったのも私のせいなの!何でもするから!やめてぇ!お願!?ムガっムゴゴ!?」


 口を手で押さえられた…いよいよ私も…


『警備員が一番、警察二番、3時のおやつは?』


「ムゴゴ!?ガゴッ!?」


『お前らがキャーキャー騒ぐから警備員が来る、殴れと言っていて、殴ったら警備員を一番に呼ぶ、わかるか?この、日光アイドル軍団が…良いか、聞け。オレはイライラしている。変身ヒロインや魔法少女が、彼氏が出来たのに戦いに出るからだ。絶対にち◯こで完堕ち、馬鹿か。しかもオレの母親が同じ事した、俺の会社関係で繋がりのある同級生に、分かるか?下痢便野郎と言ってた相手をお義父さんと呼ぶ苦しみが、お義父さんはヒロのお義父さんだけで良い、オレの本当の親父からすれば、これが本当のNTR』


 何言ってるか分からない!?助けて!誰か!

 その時、兎の格好をしたコスプレ女が入って来た…


「待ってください!藤原さん、ちゃんと説明を!ガァ゙ッ!?」


 メイプル…カエデ!?入ってきた途端、私を投げ飛ばし、今度はカエデの首を脇に抱えて締めている!?


「クソ兎にはフロントチョーク、フロント何とかの続編が出たと思ったらスマホで中国製、ウケる。ビョ…メイプルン!貴様、サトルの秘書になってサトルを錦の御旗に立ててオレに戦争仕掛けてきてるな?変態ババァと一緒になぁ!?上等だ、サトルが言ってたぞ?秘書ですって言いながら全裸になったらしいな?お前ら子飼い共が何をしようと無駄だ、サトルを利用しようと…」


「ちがっ!ます!ざど!グッ…う…」 


 しょわ〜 プリ、プリプリ


「このクソ兎…やはり兎のウンコは便秘で決まり!幼少の頃、アイカが正◯丸は腹に良いと言って兎の糞を食わそうとしてきた事を思い出した、後一歩で食糞する所だが天才のオレはアイカの親に聞いてチクった。とにかく【脱兎ダット】とか言ってネコとかとつるんで何かやってるin乱だ。お漏らし女、友達やってるとNTRされるぞ?」


 ゴロン


「カエデっ!カエデッ!?」


 口しか出てないバニーガールのコスプレみたいな格好のカエデが泡吹いて倒れている。

 また何か入って来た…


「タツさん!違うんですよ!私の時と同じ…ガっ!?【パンッ!】だから違っ【パンッ!】やめ」


 パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パパパパパパパパパパパパパパパ!


「チェーンネコパンチ!チェーンネコパンチ!このチェーンネコパンチとはチェーンソーの様にネコパンチを放つ、死なないし微妙に痛いパンチを隙間無く打つ漫画を見て思いついた技だ!シャーの妹!貴様を先日、振りかぶりながらゆっくり殴った結果、警察は何年もオレを追う事を知った!だから貴様には『ネコごっこしてた』と言わしめる為に開発したこのパンチ!何だっけっ!?」


 今度は…シャカラ!?シアラの妹で冬樹が曲を提供してたアイドル…を凄い勢いと速度でネコパンチを顔面にしている!?

 そしてシアラとシスターみたいな格好の少女が駆け込んで来た!?この部屋どうなるの!?


「タツァ!いい加減に【ゴンッ】


『クソ弟子のシャーは回し蹴りで十分、頑丈だから。お前の腰袋にあるタロァマン太郎のパンツを頭に被せてやろう、百倍浣腸を添えてな…』


「やめろタツァ!タロァは…………ホア!?♥やめっ!♥タロァ♥アッ♥」


『サラと シアに なにする の!?アナタは こんなゴブっ!?』


『貴様はなんかいつもチョロチョロしてるだけで誰だか分からんクソ犬、説明はしない。お前らが凄い速度で順に出てくるからファイナルファイティングのラスボスの雑魚湧きみたいだわ…目的忘れそうだからサッサと…』


 シスターの腹を殴り黙らせた…そして…


「やめてえええええええええ!!!!」


 ドゴォん


 その化け物は、振り返ると同時に冬樹の顔面を鼻が折れてめり込む強さで殴った。






――――――――――――――――――――


「寝ている間にそんな事があったんだね…」


「うん、怖かったよ、最初は知らないおじさんが殺しに来たと思ったもん」


「そっか…急に顔が痛いから何事かと思ったけど…」


 突然現れた現場作業員みたいな人は、神様みたいな人だった。

 彼女に殴られると意識が戻る、人によっては元に戻るらしい。

 何がどうなるかは本人次第、殴ってる本人も分からないらしい。

 

 そして彼、冬樹が目覚めた……

 昔は彼が後ろにいて、私は前にいた。今は…


「車椅子が無いとトイレも行けないなんて不便だね、まぁ…自業自得か。」


「でもほら、リハビリが進んだら歩ける様になるって、だからガンバロ?ね?」


 それから無言…今は私が後ろかろ車椅子を押し、彼の背中を見ている。

 

「僕は…渚に迷惑しかかけないよ?身体も動かない、何も無いどころか、記憶も曖昧、タトゥーだらけだし、命が繋がった事には素直に感謝したいけど…それ以上は駄目だよ。渚はもっともっと高く飛べる筈だ、それに人に教え、影響を与える人間だと思う。それに素敵な人とも…だから…」


 冬樹は沢山のものを失っていた、身体が上手く動かせないのはともかく記憶、そして…


「僕はもう何も生み出せない、模倣すら出来ないなんてね…サラや他の娘に与えたというならそれで良いけど…僕自身は抜け殻だから…」


 創作能力…いや、感覚というのだろうか。

 音楽を聴いても何も思わずただ音が入ってくるそうだ。

 


 少し前にシャカラ…サラさんと話した時に本人が気付いた。

 

―――――――――――――――――――――――


「フユキさん、お久しぶりです」


「おぉ?サラか?サラも元気で良かった」


「今はお姉ちゃんの世話になってます、あれだけ敵だなんだ言って情けない限りですけど」


「そうなんだ、うんうん、仲直り出来たんだ、良かった」


「えぇ…フユキさんは何か丸くなりましたね」


 サラさんは同じくタツさんと呼ばれる人に殴られて意識を取り戻したそうだ。

 彼女は彼女で他に何か大変な事がありそうだけど…


「えぇ…痩せたと思ったんだけどなぁ」


「そういう意味ではなくて…まぁ良いですけどね。昔からそういう所ありましたから(笑)」


 冬樹はシャカラのプロデュースしたのは覚えているが、何をしたかはまるで覚えていなかった。


「カッコ良かったですよ、フユキさんの曲。私は好きでした。当時は私が歌えなくなってたから声弄りまくってましたね(笑)」


「アハハ、それは良かった。ごめんね、きっとクオリティ上げたかったんだろうね。でも、それは間違いなくサラのための曲だから」


「えぇ?酷いですね〜それじゃ私がポンコツみたいじゃないですか(笑)」


 盟友…何か通じ合うものがあるんだと思う。

 ちょっと羨ましかった。


 帰り際にサラさんに言われた。


「楓さんの事は聞いてます、正直、私は貴女の事が少しだけ嫌いで、少しだけ羨ましいです」


「嫌い…えぇ、そうだと思います。私は…そう言われても仕方の無い…」


「そういう所です…私も貴女と同じ理由で大切な人を犠牲にしました。だから私の場合は好きな人を、彼の気持ちを同情で独り占めしている、優しいから…しなくても良いと、姉と幸せになって欲しいと言っても…」


「はい…」


 何となく事情が分かった、シャカラのプロジェクトチームは無くした人間、奪われた人間の集まりだと聞いていた。

 だから彼女は、姉から奪い返すつもりだったんだろう。


「同時に、私は愛していた彼に…貴女と同じ事をしたから嫌いになれません…もし…フユキさんの事を想っているのであれば…愛してあげて下さい。優しさではなく、謝罪や償いではなく、無条件に愛して下さい…優しさも、謝罪も、辛いんです…フユキさんは世界を憎む理由にする程、全てを失う覚悟を決める程、貴女を愛していたんですから…」


「はい……分かりました…ありがどう、ござい…」


 涙が止まらなかった。


―――――――――――――――――――――――

 

「ねぇ聞いてる渚?だからさ…お前は…」


 思い出して悔しいから…私は前に出て冬樹と向かい合う。


 チュッ♥


 そしてキスをする…唇を当てるだけだけど…精一杯の愛を込めて。


「他に好きな人が出来たら…諦めないなぁ、きっと待つ…」


「それで駄目でも、それでも私は待つよ、冬樹が私に振り向くまで。ずっと待っててくれたんだから…駅前でずっと待ってた様に…冬樹を…待つ…んだ…」


「渚…ナギサ…ごめんなぁ…待てなくて…信じきれなくて…」


 出したらいけないのに涙が止まらない、どこまでも優しくて、我慢強い冬樹…私が…


「あやまらないで…お願い…わたじぃがぁ…わるがったの…冬樹をしんじればよがっだぁ…とーじゅといっじょにぃ…いっじやっだらぁ!うあああ…」


 お互い抱きしめ合う…愛せって言われたのに…何て情けない…ここまで来てまだ冬樹に甘える…私は一生冬樹と…





『感動的なシーンの所、すいませんね。ちょっと良いですか?』


「「え?」」

 

 急に声をかけられた…この人は冬樹を殴った現場作業員の藤原さん!?


「平日の昼間ですよ!?現場作業はどうしたんですか!?…あ、冬樹、この人が冬樹を殴って戻した…」


「あ、ええ!?あぁ、その節は、ありがとうございます」


『仕事はチミらが心配するこっちゃない…社長様だぞ?そして感謝が感じられないがまぁ良い、それよりアンケートを取ってるので良いですか?』


「は、はぁ」


『女の方、来てください…』「はい…」


 なぜか私だけ手招きされて行くと…


『えーっとね、彼、ち◯こが乾く暇もない程してたけど?どう思った?』


「んっ?いや、仕方無い事だと思います、理由もあるし、離れていたし私も良くなかったから…」


『んで、チミは浮気したと。やっぱり浮気したのってち◯こが大きかったから?こんなの知らない♥とか言っちゃって?』


「違いますっ!浮気はしてませんよっ!」


『嘘だぁ…だってぇ…したって聞いたが?ある筋から』


 あ、あぁ、枕営業の…一回だけ…そうだよね…別れを告げられたとはいえ…でも…


「ずっと辛かったので人肌は恋しかったですが…好きでも嫌いでも無いですよ?もう冬樹に会えないと思って自暴自棄だったもありますが…仕事かと思って…いや、今は思い出として話したく無いぐらい不快感ありますけど…」


『そう怒るなよ、男のち◯こ、思い出さない?』

「思い出しませんっ!」

『本当に?』

「本当ですっ!なんなんですかっ!?失礼じゃないですかっ!?」

『だから怒るなよ』


 凄いセンシティブな内容を…ついつい怒鳴ってしまった…だって失礼極まりないから…


『ふーん……………いや、じゃあ良い、続いて男…』

「え?あ、はい」


 何かゴニョゴニョ話しているが…まさかあの人!?私と同じ様な質問してる!?


「ちょちょちょっ!ちょっと待ってぇ!やめて下さい!プライバシーの侵害ですよっ!?」


『あぁ…そう?まぁ良い…大体分かった。ありがとうございました、これからもアンケートよろしくお願いします。それじゃ…あぁそう、浮気した女は信用出来ねぇけど…お前らのはNTRじゃないのかな…多分』


 ?…良く分からない事を言っていたが、こうして現場作業員の人は、消えて行った…何なんだ?


「ハハハ、あの人、面白い人だね」

「えぇ!?本当に?」


「少なからず、当時は嫉妬したからさ。週刊誌に出た時もスキャンダルになった時はね?僕も大概クソ人間だから、未◯年とかいたりね…ハハハ」


「ごめんね…私が断れば…ごめん…」


「いやいや、僕も同じだしね。記憶から消えてるからズルいけどさ…でも、あの人から渚は望んでいない一回だけって聞いて何だか安心した…まぁ…だからこそ…ンフー!?」


 これ以上喋らせないように舌を入れるキス。

 私はずーっと冬樹一筋という事を証明する。


「何言われても離れないからね!大好きだから!♥分かった!?」


「分かった分かった、それじゃあ改めて…やり直して貰えるかな?」


 返事なんて決まってる、私は飛びつく様に抱きしめた。そして泣きながら、抱きしめ合いながら、唇で繋がった♥今晩、してしまう…んーん、絶対に♥

 冬樹と私は遠回りしたけど…やっと繋がったから、離れずに永遠に廻り続けるから、離さないから♥

 

  そう、メビウスリングの様に永遠に…




 私の話?これで終わり…です。


 ただ、私の友達…カエデが明らかにおかしな事になっているようです。

 秘書室から聞こえる『殺して下さい!私を殺してぇっ♥』とか『やっちゃって、良いんですね?♥』と頻繁に聞こえたり、あの現場作業員の人から聞いたらクリスマスの記念にカエデの想い人はカエデにパイルドライバーしたそうです。

 頭がイカれてる人がアイツラ頭がイカれてるといってました。


 私達…私と冬樹もいきなり『合唱やるから来て下さい』とか言われて結婚式かと思ったら全然違ったり…

 やっぱり天才とアレは紙一重なのかなと思いました。


 私と冬樹は…芸能の世界から足を洗い、人並みの幸せを送っています。

 あんな生活になるぐらいなら、この幸せを選びます。二人でそんな話をしています。


 そういえば…たまに冬樹が曲を書いてくれる様になり、それに合わせて歌ったりします。

 冬樹が待ってくれたから、今の幸せがある。

 本当に、本当に私は幸せです。



 追伸、現場作業員の人は二度と私達の前には来ないで下さい。感謝はしています、だけどアンケート名簿から消して下さい、お願いします。

サトルさんは絶対にカエデと二人で会いに来てください。使いを送るとか、一人でとかはやめて下さい。

 


※もうちょっとだけ本編が続くんじゃ…コメントをちゃんと返すんです。また、不明瞭な点はコメントで返します。多分…



 

 

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