成人してからの生活は何でこんなに早足で駆けていくんだろう?
ぼんやり思う。時間が経つのが早い。
裏切りで心が死ぬ時ってのは、その人と心も、そして身体も近過ぎるからだと思う。
若さというのは得てして距離感を失う。
言う程遠い歳を取った訳では無いが、繰り返し同じ事をしているんだ、少しは距離の取り方ぐらい学んでいたい。
メイプルちゃん、そして時雨に上手く伝えなきゃいけない。
俺はキスしたとはいえ…まだキスしかしてない。
そして大事なのは自分の心…俺がそういう愛人とかハーレム的なものが一切駄目だと言う事。
この場合、逆ハーレムか?女一人に男いっぱい?何にせよそんな性癖は無い。
そもそもアイドルなんだぞ?そんなもん他にいくらでも…
う〜ん…俺も一応現場監督だし、もしかしたら何かしらコネを維持するためにそういう事しちゃうタイプなのかも知れない。工事現場の現場監督のコネ…必要か?
しかし、思えばアイツもそんな様な事してたんだっけな。
今となってはどうでも良いが、同じ悲劇を起こすほど俺は馬鹿じゃない。
連絡先交換してから、決まった時間にメイプルちゃんから連絡が来る…メッセージも飛んでくる。それとなく、そっけなく返す。
あれから…俺からは連絡してないし、電話でも話してない。
連絡してないは言い過ぎた、ただ機械的に返事をするだけ。
とりあえず、色々片付いて、色々理解してから、更に本人に聞いてしっかり返事しようと思っている。
しかし、その決まった時間にメール…メールの来る時間が…必ず昼過ぎだ。
そして決まった時間に連絡が来る元凶であろう、今まさに始末書を目の前で書かせているタツに同じ事を愚痴る。
コイツに愚痴っても誰も信じないし、口が固いらしいからな、身体と一緒で。
「それでな〜メイプルちゃん男いるのに俺と付き合おうとしてるっぽいんだよなぁ…聞いてる?それとお前、なんの弱みを握ったかしらんけど…自分の都合良い時間にメイプルちゃんに連絡する様に言ってるだろ?」
「知らん、知らんけど浮気したんだな?相当馬鹿だな、とにかく電話で話に行け、この場から消えろ」
始末書書くフリしてテーブルの下、膝の上で必死にスマホをイジってる…高校生か?
全く見ないで書いている始末書を見ると『わらしぃ みにゃしゃんにぃ めいわくぅぎゃけい…』みたいな文章が…文なのに呂律回ってないじゃん。
「なぁ男便…セイッ!」「うおぁ!?テメー何しやがる!?」
俺はタツのスマホを適当に触りまくった。
「あぁお前!ミエリークイズで【王国に帰る】を選んじゃったじゃねーか!?あぁ…レイドボスが強くなるぅ…」
「ほら、タツ!仕事の時間だ、スマホ置いて王国に帰れ!じゃねえ仕事に行け」
「クソ…何で俺が不遇の王国に帰るんだ…この人でなし!じゃないな、魔族でなし!しかしアイツ、全然役に立たないじゃないか…」
多分、役立たずって事はメイプルちゃんに決まった時間に連絡するように言ってんだろうな。
何故なら来週から休暇理由に【レイドボスだから】という理由で休もうとしたからな。
さて、次は…時雨だな。
ずいぶん長い連絡取ってない気がするけど…1年ぐらいか。
まぁ向こうは御曹司と言うか親が偉いから忙しいしな。
時間が取れれば夜飲みにでも行ければと思うけど…
プルルルルル…
『はい、木村です』
「おっす!時雨、久しぶり!俺だよオレオレ!」
詐欺風に始まるのが俺流…と言うか久しぶりだし、内容が内容だからちょっと気恥ずかしい。
『え?悟君でしょ?何その挨拶、詐欺?(笑)どうしたの?今バタバタしてるから出来ればまた…』
「いや、単刀直入に言うと彼女、浮気しようとしてらどう思う?」
『はい!?え!?宏美が浮気してんの!?』
「ヒロミ?誰だっけ?いや、じゃあお前浮気してる?」
『宏美だよ、俺の彼女の。会った事あるでしょ?俺が大学ん時…てか俺が浮気!?してないよっ!?いきなり何それ!?まさか…悟君、姉ちゃんの事まだ引きずってるのか…なんかごめん…』
「宏美…あーいたわ、時雨の友達な…付き合ったんだ…おめでと…いやー…そういう訳では…俺が楓を?…成る程、んー成る程…」
全然分かんねーぞ…ちょっとコレは…何で俺と楓?意味分からないけど直球で行こう…
「ほら、今居候してる木村メイプルちゃん、あの子と1週間前に家でヤッてなかった?」
『はああああ!?カ…メイプル!?俺は絶対嫌だよ!?それ一番やっちゃ駄目な…あぁ…成る程…スーパーサトル君人形か…アレ本物みてぇだもんな…ふざけんなよアイツ…だから母さんに黙って捨てろって言ったのに…』
何で急に俺の成る程を取るんだよ…時雨はメイプルちゃん、部下だから駄目なんか?
そして何でいきなりクイズ番組の人形の話になるんだよ。
『ちょっと混みいった話になるから完成セレモニーとの時にメイプルも行くでしょ?都合つけて俺も行くからそん時に話すよ…いや、ホント、色々ごめん』
「いや、何故急に謝る?」
『いや、なんと言うか…電話て言う事でも無いと思うし…とにかく…俺はメイプルとやってない、多分、アイツは悟君としかやれないよ?』
「はい?何それ?」
『そもそも俺、今家にいないし…てか、大学卒業してすぐに家出てるよ?まぁ…とにかくセレモニーの時に話すよ、とにかく今たてこんでてちょっとごめん!ホントにごめんね!』
「え?いや、おまちゃんと説明し【プップーップーップーッ】
切られた…何だそりゃ?全然意味が分からん…
「おい、男便…何か俺だけ時代から取り残された気分なんだが…」
「そうだろうな、お前みたいな鈍感がいないとファンタジーは成り立たないからな」
何言ってんだコイツも…
「何だ?お前、何か知ってんなら教えろ」
「絶対に口を割らない間者と言われたオレから教えて欲しかったら九万分のガチャとレイドする時間を用意しろ…まぁお前のクソ恋愛なんぞ興味なんか一ミリも無いケド…頑張れ、そしてこの始末書をAI使って代筆しろ」
絶対信用出来ない情報に金を払う、これこそ詐欺の真髄だな。
「払うわけねーだろクソタツ」「クソ鈍感はお前だ尻穴サドル」
そんなこんなで日は過ぎていく…とりあえず時雨から話聞いて、メイプルちゃんから聞いて、答えを出そう…つーかとりあえず式典を終わらせなきゃな。
偉い人も来るみたいだし、タツはともかく俺は時雨とかの手前もあるから、ちゃんとやらなにゃいかん。
順番はお偉いさん方が先に話し、メイプルちゃんの歌、タツの言葉、俺の締めの言葉にした。
お偉いさん方はタツが喋る前に、先に帰すのだよ(笑)いくら辞める覚悟とはいえ、俺だって多少の愛社精神はえる。
当日…その日はよく晴れた。
少し緊張しつつタツが出番前に何か変なホットドッグみたいなモノを食っていたから貰って食った。
「それはナーン★ドッグ、賞味期限が切れたホットドッグ亜種だ。なに、コケシがあればイケる…お前コケシ持って無いの?馬鹿じゃん(笑)」
コイツが腐った食い物を食ってコケシをケツに入れて誤魔化す馬鹿というのを忘れてた。
コケシは尻に入れるもんじゃねーよ…
そして俺の腹は死んだ。
俺はセレモニーに下痢で挑む事になった…
※色々遅れた上に短めで申し訳ございません(土下座)
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