楓の唱④〜価値に酔う愚行を裁くのは

 2人のケーキ…それと手紙…

 時間を越えた、高校時代のやり直し

 今考えると、もし予定通りであれば、嬉しくて嬉しくて、もう死んでも良いと思えるかも知れない。


 そう、アレはゴミでは無かった…とても大切な、高校の時に欲しかったモノ…気持ちの返事。


 外に見に行って、その時に知れば…せめて謝れただろうか?


 しがみついて、泣き叫んで、土下座して。

 アレは嘘だった、コレは嘘だった、本当は…と謂えば許されるだろうか?


 多分、赦される事は無い、私はサトルを軽く見ていたから。男を軽く見ていたから。

 そして、それだけの事をしたから


 それだけの事をしたにも関わらず…何もしなかったんだから


  それでも…動いていれば未来は変わっていただろうか?


 パァーッッッンン!!


「痛っ!?「頂けただろうか?じゃねーんだよ、恐怖映像の番組のオチか、貴様!長いんだよ、お前の『それはごもっともだがオレの考えは違ったが試合は負けた』みたいな話は端折れ!オレの活躍を早くしろ馬鹿!」


 また言ってない事で怒られ、ハリセンで叩かれた…


――――――――――――――――――――――

「ごめんな、イブの日に泊まり仕事入れちゃって…明日はちゃんとホテルとってあるし、レストランも予約してあるんだ。だから楽しもうね」


 最近、態度に出ていたのかも知れない。

 何かしても面白く無い顔、食事やイベントも少し見下していたかも知れない。

 だから必死に取り繕う。

 

「え?本当に準備してたの?そんな…良いのに!家でケーキ食べてデリバリー頼んでパーティーでも良かったんだよ?で、でも、せっかくサトルが準備してくれたんだ!楽しまないとね!」


 クリスマスイブも仕事で一緒では無かった。

 時給も良いし人が足りないらしい。


『もうそろそろ仕事の時間かな?行ってらっしゃい!また明日ね!』


 メールを送りながらツカサに今日は平気と、伝える。

 寂しくなかったと謂えば嘘になる。積み重なる出来事と感情が嘘を加速させる。

 そして…夕方にツカサと落ち合い、食事の時に伝える。


「今日、彼がいないからウチにしない?」

 

 イブに会うと決まってから、急に面倒臭くなってきた。

 正直、デートはとにかく、ツカサとのセックスも苦痛になっていた。


 ツカサは30半ばで気持ちはあるが、身体が追いついてない感じ。

 だけど褒められない、言葉を伝えないと無理する…だから、褒め殺し、感じたふりをして、早く終わらせたい。


 それに家でするとツカサは早く帰る、だからクリスマスイブも…

 

 

 私は自分が散々嘘ついていたのに…他人が嘘を付くとは何で考えなかった?

 裏切り甘える事は散々してきたのに、裏切られる事に慣れていなかったからだ。


 その可能性に気付いた時には、既に遅かった。

 けど早く気付けなかった事もまた、必然なんだろう。



 その日はおかしかった…良く分からない恨み節が隣の家から流れたり…知ってる人の声が外から聞こえたり、裏返しにしていたサトルとの思い出の写真が急に倒れて目の前に来たり…


 特に写真は堪えた…一瞬、自分何をやっているのか、行為の途中なのに思考を失って呆然として、涙まで流してしまった。

 

 結果、ツカサに問い詰められた。

 嘘をついた…だけど…

 友達じゃない…昔付き合っていたんじゃない、今も付き合っているんだよ?

 貴男よりお金も無いし余裕も無い、社会的なステータスも無ければ未来を見ていない。


 だけど…だけどサトルは…思ったら少し涙が出たが…振り払い嘘を吐く。


『私、来年の頭に引っ越しするの。だからその頃にはココを出ていこうかなって。その時に切るよ、あんま無碍には出来ないけど、私の言う事なら聞いてくれるし…』


 本音と建前、嘘と真実、混ざる

 だからこれ以上サトルの事には触れないで…


『それに司さんがいつまでも、マンション買ってくれないからでしょ?』


 どうせ買ってないマンションの話で終わらせる。


 後は適当な、絶対来ることの無い未来の話をするだけだ。

 演技のセックスを繰り返し、ツカサが果てるのを待つ。

 ピロートークなんて早く終わってほしい。

 

『色々ごめんな、だけど本気なんだよ、楓の事…俺は楓がいないと駄目なんだ…例えまだ少し、彼に気持ちがあったとしても関係無い。一緒にいてくれないか?』


 お願いだからサトルの事は出さないで…折れつつある心のせいで真実を織り交ぜてしまう。


『うん、そうだね、ありがとう、私こそ取り乱してごめんね。本当はね、付き合ってるの…二股なんだよ…本当にごめんなさい』


 この家で…ツカサを目の前にしながらサトルの写真を見て思った。

 これ以上は無理だよ、私は心がもたない。


『それでも構わない、俺だって離婚協議中だからね、二股みたいなもんさ…だけど同じ仕事をしている君との生活時間の方が遥かに長い。もう休みの日だけなんて我慢出来ないよ…彼ともそうだろう?』


 言わんとしてる事は分かるよ…だから揺らいだんだ。誰のせいと謂えば私だけではない…誰のせいなんだろう。


『そっか…そうだよね。ごめんね、心配させちゃって…もうちょっとだから。もうちょっとで終わるから』


 そうだよ、もうちょっとで終わるんだ。

 サトルとの長い夏休みが…子供から大人になるんだ。

 好きな人を幸せにする為に、この人から奪うんだ。


『うん、楓、待ってるよ?そうだね、終わったら2人で広報事業部に異動だ。もう話もついてるからね。楽しみだよ』


『そうだね、私…上手くやっていけるかな?結局、貴方がいないと何も出来なかったよ…』


 そうだね、サトル。…上手くやっていけるかな?結局、貴方がいないと何も出来なかったよ…

 

『大丈夫!俺がついてるよ…チュ♥』


 あぁ、誰これ、サトル…じゃない…私、間違え…でも約束…守らなきゃ…


『ん♥約束、守るからね?私、頑張るから。だからもう少しだけ…ね?』


 自分でもわからない…何をやっているのか、何がしたいのか

 まだ日付が変わって間もない頃、ツカサは帰ると言った。

 タクシーを呼んでいる間、生返事をしながら私は呆然と考え事をしていた。

 

 サトルの写真を見た時から…今日はクリスマスで…クリスマスは高校の時、関係を深めてやり直そうとした日で…もしかして間違っているんじゃないかって…そんな気がして…


『じゃ、タクシー来たから行くね!また週明けに会社でな!…あれ?何か玄関にゴミがある?【ガゴッ゙…グシャッ】何だ?まぁ、良いや』


 ゴミ?そんな事は良いから早く帰って欲しかった。やたら元気になのが癪に触る…


「はい…また…来週…」


 途中から…気持ちが一切入って無い行為は苦痛そのものだった。

 口が生臭い 舌がざらつく

 何を咥えているのか 何をしているのか

 何も濡れない カサカサで 相手の水分だけで

 身体も心は枯れて こんなに辛い性行為は初めてだった…


 私の雰囲気を察したのだろう。

 ツカサはさっさと逃げる様に帰る準備をした。


 私は何だか自分が定まらない、どんよりした天気の様な気持ちのまま、次の日のクリスマスのデートの為に寝る事にした。


 寝れなかった、寝れる訳無かった、ただ、変な動悸がする。

 今日はおかしな事が多くて、何だか不安がつきまとい鬱々する。

 サトル以外の人の上に跨り、腰を振りながらサトルの写真を見た時からだ。


 まるで…サトルに見られているようだった。

 

 怖くて…お風呂で入念に洗い…不必要な程に部屋に痕跡を消して…気付けば寝ていた。


 普段…サトルが夜勤の日、私の仕事が無い時は、いつも目が覚めるとサトルに抱きしめられている。


 でも、今日は…起きるとサトルか後ろ向きで少し距離をとって寝ていた。


「お、おかえり…」


 挨拶をするが反応は無い…手を伸ばそうとして…何だか酷くサトルを遠くに感じて届かなかった。

 返事は無い…でも多分起きている…寝息ではないからだ。


 それから…真綿で締められている様な気持ちで、寝ているサトルを寝たふりをしながら見ていた。

 どうすれば良いのか、どうすれば…




「おはよう!メリークリスマス!楓!今日のホテルのディナー、楽しみだね」


 気付けば眠っていた…サトルの声で起きた。

 サトルがこちらを見ている…けど、目が濁り…顔が能面の様に笑顔が張り付いていて…だけど確固たる意志を持って喋る。


 …その圧に私は……何も言えなくなった…………



 何かがおかしかった。

 私自身も前日に自分を見失いかけたのもあるが、サトルの様子がおかしかった。

 

 泊まり明けの空元気とかじゃない。

 まるでヤケに、いや、ロボットなってしまったかのようだ。


 何か仕事で嫌な事でもあったのだろうかとか、体調が優れないのだろうかとか、ありきたりな理由で私の頭は片付けようとする。


 だけど昨日の事があり…心の奥底で、もしかして知ってしまったのではないかと疑心暗鬼になる。

 

 この時になって分かる。自分がいかに馬鹿げた綱渡りをしていたか。

 失う可能性が見えて、初めて恐怖を知る。


 普段とは考えられないぐらい口数が少なくなった。喋れない。

 何を話して良いのか分からない。

 何処まで知っているのか、分からないと何も言葉が発せない。


 途中でサトルの知り合いに会って茶化された。

 普段ならムッとするサトルが笑った。


「ハハハ!いつの時代の話してんだよ!」


 よく知る人ならこんな顔しないのは知っている。

 レストランに着いても様子がおかしい。


「いや~スプーンとかフォークとか使い方良う分からんわ(笑)」


 ガチャガチャと適当にナイフとフォークを使い肉を切り食べるサトル。

 いくら知らないからと言って、普段のサトルはこんな乱雑な動きはしない。


「イマイチ、ルールが分からんなぁ…楓、これはどうすれば良いのかな?」


 カチャカチャ…いつも通りに…会話のきっかけを…


「あ、サトル、それはこっちだよ、で、コレは…あ、ごめんなさい!口出ししちゃって!良いんだよ?好きなように食べれば…」


 怖くなり謝ってしまった…もうあの時の日常は、やって来ないと思った。


「謝らないでよ〜色々ありがとうね。本当に今まで色々とありがとう。で、これはどうすれば…」


「…え?あっえっと…」


 言葉が出ない…私が壊した日常…記念日…


「美味しかったね?久しぶりにお酒飲んじゃったよ…残してたけどて楓はそんなでも無かった?」


 涙が出てきた…駄目だ…こんなの…

 

「ん~ん、美味しかったよ、楽しかっ…た…なん……えっえぐ…」


 やるべき事はやれず、ただ泣く…何かになった気でいた私はこんなにも小さく弱く… 

 耐えきれなくなって泣いて…それでも時間が進んでいく


「楓、泣かないで?これから一緒に夜景見に行こう。色々話したい事があるんだ」


「はい…はい…ごべん…なさい…」


「謝らないで、ほら、クリスマス何だから楽しくやろうよ。ほら、あの小さな公園…あそこでよくドロケーしたよね」


 ホテルから歩きながら私との昔話をするサトル…まるで思い出を吐き出す事で、捨てているようで…


「ねぇサトル、聞いて?あのね、おね…「そういやさ、動画の配信と貯金で今月には借金、全部返し切れるよ」


「え?」


「俺は《もう、撮らないから》》さ!帰ったら編集方法教えとくよ!」


 違うよ?サトルの編集が凄いから人気になったんだよ?それに私がやろうとした、返済は既に終わっていて、私が自分を犠牲にとか、やっていた事が全部終わっていた…言葉が出ない。


 私は…うん…うん…と、頷く事しか出来なかった。

 地元で、一番のホテル…小さいけどクリスマスの飾りが付いて、周りのイルミネーションと重なってとても華やかなになっていた。

 

 昨日行った高級ホテルのレストランは記憶から消えた。

 ただ、今日を覚えていたくて…景色を観ていると


 俯いている私の首に何か…


「こ、これは?」

 

「これね、高校の時にあげようと思っていたネックレス。楓が好きなキャラクターが付けてるブランドのネックレスのグレードが高いやつなんだ。」


「え?」


「楓は男とよく遊んでたけど、趣味は女の子なんだよなぁだからね…って言っても学生時代から趣味は変わってるか(笑)」


「うっ!?うぐ!ううう!!うああ!!ごめっ!!ごめん!!」


 ここまで見てくれる人…見てくれていた人…もう人生で現れない…そんな人に私は…


「ブランド物だから、もし辛かったら売っていいからね?好き嫌いはあるだろうから」


 もう奴隷でも何でも良い、怒って欲しい、叩いて欲しい、こんなの酷い、何でサトルがこんな目に…私はサトルに心からぶつかろうとしたが…


「私!私ね!!サトルの気持ちを!ングッ!?」


「ごめんね、それは聞きたくない。いつか…教えてね?」

 

 強く押しのけられる…止められる…それでも私はすがる。聞いてほしくて…お願いだから…


「サトル!許して!サトル!私が…」


「いや、それは別に良い…って!?オうエッ!?」


 顔が近づいた時の…私と正面に向き合った時にサトルは思いっきりえづいた。

 そしてトイレに駆け込んで吐いた。


 何処までも知ってるんだろう、どんな風に見えているんだろう、でも…どうあっても…何をやっても…もう戻らない事は理解した…

 

 それから…


 サトルは全てを放棄したような動きしかしなくなった。

 ツカサさんに言っていた、ただの同居人…いや、それ以下。


 それに会わなくなった。夜も帰らず、たまに朝や夕方にすれ違うと今後の話と何が何処にあるという話だけ。

 私はその度になにか出来る事は無いかと動くが全部拒否される。


 ツカサには当たり散らした。何でこんな事になったのか正確には言わないが、まるで毎回ヒステリーを起こしている人のように騒いだ。

 仕事場ではしない、だけど2人になった途端に誹謗中傷や罵詈雑言を浴びせた。


「ちょっと落ち着けよお前…」


「落ち着いてるわよ!マンションはどうしたのよ!?離婚はいつすんのよ!?」


 サトルは能面、私はヒステリー、ツカサは放置…そんな気が触れそうな毎日が急に終わる。

 サトルが出ていくと、もう終わりだと言った。


「マンションはいつ建つんじゃい!もう終わりだこんちくしょう!!」


 きっとツカサとの事は知っている。分かっていた。

 この最後の期間で私は何も出来なかった。しなかった。分からなかった。


 最早、何を言っているのか、意味が分からない言葉でサトルは私を否定する。

 それに食らいつく私に…サトルは言った。

 その言葉は唯一落ちついて言っていたので分かった。


「だから…頼むからその職場の奴と付き合えって…頼むから結婚してくれよ…それで俺が羨むような奴になってくれ…頼むから…じゃないと俺は…間違い続けて…なんの為に俺は…お前を…信じて」


「いやだぁ!いやだよ!離れたくない!いやだっ!さどるはぁ!まぢがってないがらぁ!」


 私は泣いた…泣いて意味なく叫んだ…


「だっだらぁなんでぇおれは!ごんなこどにぬんだらぁぁぉ!!」


 その夜、サトルは出ていった。

 気付けばサトルの荷物はまとめられていて、既に無くなっていた。

 泣いて縋り付くだけで、現実を見て見ぬふりをしたこの1週間。


 サトルの物は無い、もう家は目茶苦茶、ゴミも散らかし、私が物に当たり散らして滅茶苦茶だ。


 自分の過ちで滅茶苦茶にした結果が目の前に光景だった…




 それから…サトルを探して…探して…


 最近出入りしていた根多君の家に行った。何か知ってるかも知れないから。

 吉田さんに会っても構わない覚悟で行ったけど…


 ワタシがやった事を客観的に言われ、殴られて気付けば気絶して家に居た。

 サトルの家に行った…久しぶりにおばさんに会ったけど…


「あぁ不倫の星の楓ちゃん(笑)サトルは行方不明だよ、死んだかもね(笑)何んせよ何も言わないよ、貴女には」


 叔母は昔から掴みどころの無い人だったけど…ハッキリと言われた。

 帰り道、また泣いた…


「サトル…さとるぅ…うあああ…さとるぅ」


 泣いても呼んでも届かない。

 昔は、泣いた時に一緒にいてくれた。

 でも、今はもう居ない。

 私のせいで…


 泣きながらアパートに帰るとふと、袋が目に入った。

 中に何かある…雨風に当てられた四角い箱と封筒…


 中にはケーキが入っていて…


 手紙が入っていて…


 全部繋がった…


 私は…





 それから実家に帰るまで…未だに記憶が曖昧で…私の視界…朧気な記憶は。


 ツカサ…


【離婚しないなら言って?もしするなら…その人達の分までツカサと幸せにならなければいけないの!だから悪い事…横領を清算して!】

【何!?何いってる!?楓、お前おかしいぞ?しっかりしてくれよ!これからなんだぞ?】


 お父さん…


【誰かからお金借りなきゃ…誰かから…】

【誰がお前に金を貸すか!サトル君に何やったと思ってるんだ!いい加減にしろっ!】

【お願いします!あの人と結婚するんです!】

【かえで!お前とはもう絶縁だ!話す事はないっ!お前…っ!おまえはぁっ!!】

 パァンッ!

【お父さんが泣きながら私を叩いた…もうお父さんとは…】


 会社で…


【横領の件?返金?経理ではそんな事してませんが?それより横領?何言ってるんですか?詳しく聞かせてもらえませんか?】

【ツカサさん、返していこうよ!幸せにならないと!お金をとるのもやめよう!?】

【返すって何だよッ!?お前経理で何言った!?何やったんだ!?おいっ!】

【ちゃんとしないと駄目だよ!ツカサ!聞いてる!?】


 初めて聞く耳に響いた声音 男特有の圧力


『あぁッ!?テメェさっきから聞いてりゃふざけんじゃねぇぞ!』


 顔に走る痛み 男の人の本気 殺される

 お父さんは…叩きながら泣いていた

 吉田さんは拳で対話していた 

 だけどこの人は…私を女…人と思ってない


『警察に話が言ってる!?クソったれ!ふざけんなよ楓!テメェも来いよ!オメェだけは許さねぇ』


――いやぁ…やめてぇッ!何で!髪!抜ける!いや!ヒイィィィ――


 車に押し込まれ、顔や身体に痛みが走る


『大体!てめぇいつも会社出たら何でタメ口何だよ!?ちょっとてぇかけてやったら調子に乗りやがって!このガキがっ!』


――ごべんなざいッ!痛いのやめて!おねがいじまぁ!イアアアっっ!――


『このクソ変態が!誰にでも股開くくせになんだあの態度!クリスマスの時は何なんだよ!あぁッ!?何股してんのか知らねぇけどよ、クズのクセに何が結婚だ!?何がちゃんとしろだ!おい!聞いてんのかよっ!』


――ヒイィィィッッッヒィアアァッイヤァァッ――


 助手席で頭…髪を掴まれながら揺さぶられ、たまに殴られる

 見た事無い場所 今考えれば、多分郊外の別宅 人が何人か…

 

『おっす、久しぶり…とりあえずこの女、世の中ナメた変態女だから輪姦して良いよ。その代わり海外とかに伝手あるやついない?やべぇよ、俺、捕まっちまう』


 3人ぐらいの男が私を掴んでスーツを無理矢理引き裂く…救けてとか、許してとか乞うが何も伝わらない。


――あっ…ひぐっうっうっ…うぁぁ…――


『ちょっと待っててね〜多分、静岡から船かな〜。にしてもこの娘可愛いね、ツカサにしては珍しくない?』


『ちげえよ、手も金もかけてよ、愛人にしようと思ったのにいきなり狂いやがってよ。会社の金取ってのバレちまった…まぁアイドルやってたらしいからそれなりだろ』


『ふおおお?最悪じゃ~ん(笑)取りあえず感度悪いから薬ぶっこめよ』


――ハッハッハ…ンあああ…アッアッ――


『おい!何か変なのあるぞ?ケツに挿す?ドラッグみてぇなもんか?面白そうじゃん!コイツでやってみようぜ。何だこれ?手紙?コレはいらね』


――――だめぇ…そりはぁ…らめぇてんやめてぃえぇ――


 言葉にならなかった、ただ、沢山の男にやられ…身体に痛み、叩かれながら感覚が麻痺してきた時に腸に違和感を感じた。


 穴という穴が擦れ、いよいよ自分が何か肉の塊の様な感覚になってきた時にそれは来た。


 快感、心も身体もそれを拒否している。

 苦痛が快楽になる人もいるらしいが私は違う。

 苦しくて辛いだけ、怖くて痛いだけ…それが…なのに…


 全身の毛穴が開いたかのように、必死に閉めていたモノを力づくでこじ開けるように


ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!?!?♥♥♥

ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!!!♥♥♥


 表皮に神経が剥き出しに、口から脳を掻き混ぜられ、子宮を貫通して内臓に、腸を掻き混ぜ胃の中へ。


 オボッ!?♥オ゙オ゙ォ゙!?♥オゴォッ!!♥


 声ではない、突き上げられ押し出される音。

 感度による断裂やスリ潰れる筋肉、軋みズレる骨、体の角度か形が変わっていく…何より恐ろしいのは…


 この肉体の変化は治せないという確信があった。

 私の人生はここで終わりだという事だけは理解した。

 ただ、薬のせいか思考が定まらない。


 助けて…とも、思うことは無い完全な思考停止。

 


 どれだけ経ったか、ただ、肉の塊のようになっていると…



『おい!警察がここ向かってるってよ!逃げんぞ!』


『何でだよ!?ここバレないんじゃないのかよ!』


『良いからツカサ!ソイツ持ってけ!そんでどっかに捨てるかしろ!それで東伊豆のいつもの場所に来い!』


『ちくしょう!分かったよ!』


 私は担がれ放り投げられるように助手席へ…手足がおかしな角度のまま、複数人に無理矢理やりやすい体勢にされたままの形で固まった私は置かれた。 


『クソ!捨てるって言ってもどこだよ!』


 私は今、山中に捨てられたら間違いなく死ぬだろう。

 何も考えられなくなっていたのに、死ぬという事はこれでもかと恐れた。


 力無く涙を流し、漏らしていた。


『とりあえず山降りるか!途中で捨てりゃあ良いや』


 恐ろしい速度で山を車で降りていく…スマホを弄りながらツカサはどんどん山を降っていく。

 民家が増えてきた時、彼には見えていなかったが…前に人がいた。

 

 長い髪の女性?身長は高めでガタイが…何か持っている…


『お……この、こけしが………に、はいらぬ【バアアアアアアアンンッッッ!!!】


 何か見せつけるように、こちら向けたと思ったらそのまま車に撥ねられボンネットを転がり上に飛んでいった。

 フロントガラスに血痕が…


『うお!?何だ!?シカ!?血が…人か!?もう良い、全部お前のせいにするからな。余計な事喋ったら殺すぞ!?』


 コクコクと頷く事しか出来ない。


 ツカサは明らかに人を轢いたのに速度を落とさず走り続ける。


 街に出た…田舎の街とはいえそれなりに人はいるが、それでもそのまま速度を落とさず走る。


  ガシャーンっ!

 

 突如、運転席側のスモークの入ったサイドウインドウが割れて拳が飛び出してきた。

 その手がハンドルを握った…その後フワフワと手が動きツカサの顔を掴んだ後に放して手はどこかに消えた。


『うおおお!?何だ!?手が!?ヒイイイ!!!』


 正直、もう助かるとは思っていない…が、私はどうなってしまうんだろう。

 車の天井から声がする。


『痛い…くはないが…ビックリしたし…怖い』


 叫ぶツカサ…そしてフロントガラスを割って入ってきた拳には…コケシが握られていた。


『こんばんわ、止まれい、止まれい、落ち着かれい』


 上からまた変な声がしたと思ったら…次の瞬間、ビルの壁が目の前にあった。

 さっきまで死ぬのが怖かったのに即死すると思ったら急に楽になった。


 ―わたし…死んだな…だめな人生だったな…次生まれ変わるなら…―


 生れた変わるなら…またサトルに会いたい…今度こそ…


 シートベルトをしていない私はエアバックは関係なく外に放り出される。

 隣でエアバックに沈むツカサ…そのまま意識か落ちた。

 

 気付けば誰かにお姫様抱っこで抱えられて警察に囲まれていた。

 まだ…生きてる?それに…


「まず、話を聞いて下さいませんか?国家の守護神たる警察の皆さん。これは冤罪というやつです。あれですよ?冤罪が、発覚してから媚を売ってももうおそ『動くなぁっ!』


 藤原さん?何で銃口向けられてるの?

 理由が分からないまま怯えていると…


『待て、そいつは藤原龍虎だ。そんなもん意味無い。解放してやれ。それより何で?何やってるんだ?』


『これはこれは、千代スライムの姉さん。貴女の妹にルドラ回収して来い言われて立ってたらいきなり車に轢かれてコレですが?なんでぇはオレの台詞ですが?』

 

『相変わらず意味が分からないなぁ。とりあえず来たのが私で良かったな、その抱えてる女はルドラの症状が出ているから使ったんじゃないか?犯罪者だか何だか知らんが私に預ければ対処はするけど…知り合いか?』


『感感俺俺みたいな?…知り合い?ん―…多分?』


『なんだそりゃ?まぁ目の前で妹の不始末があるなら出来れば対処したいんだが?』


『じゃあそれでいこう。オレは帰る。飯が呼んでいる』


 藤原さんは私を女の人に預けて去っていく…私は受け取った女の人に麻酔を打たれ…意識を失った。



※集中的にこちらを連載します!頑張ります!多分!

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