美味しい唐揚げを食った後にざまぁされた元カノを見るもんじゃない
「それで…私は…言って…その為に…あいって…サト…為に…」
勝手に喋り始めたが、ボソボソ何言ってんのか全然聞こえねぇ…
とりあえず襖を開けて、楓のいる部屋に入る。
うぉ!?マジで俺の遺影がある…
何で実家にも存在しない俺の遺影がここにはあるんだよ…
そして改めて楓を見る。餓鬼か?
カエデ…成人してから付き合った時は最初は飯食ってなかったせいかちょっと痩せていた。
その後、2人で飯食うようになって肉付きが良くなった。
楓は元々、顔は良かったと思う。全然売れてないけど一応芸能活動?アイドル紛いの事が出来るぐらいだ。
まぁファンを食いまくったらしいけど。
動画配信した時もマスクしてるのにファンがついたしな。
そんな楓が距離感バグった絡み方をしてくると誰だって本気になる。
きっとセフレであっても惜しくなってしまう。
言い方悪いかもだけど安い魔性の女感はあった。
それが今や、誰だってこんな女関わりたくないと人目で思わせる外見になっている。
つーか、顔とか原型が無い、ちょっと歪んでる?
それにガリガリで…手首に…いや、身体のあちこちにキズがある。動きもおかしい、何か怪我の後遺症みたいな感じで不自然な動きをする。
ブツブツ何かを言っている楓…
はぁ…結局、この女…楓は何がしたかったんだ…
当時を思い出してみる。
俺は男と一緒に盛っているのを見たクリスマスから徹底して精算をしていった。
アカネさんの時もそうだが俺はそういう癖がある。まぁ今考えると…正直、俺の行動も終わっていたが…
最後の日、もうマンションが建つ建たないでキレる訳の分からない喧嘩…喧嘩なのか?あれは…
――お願いっ!話を聞いて!――
聞かない!うるさい!アイツの所に行けよ!マンション建てよ!
――っ!?私の何が分かるのっ!?――
分かるかこのクソバカ!同じ事しやがって!
――私はサトルの為に!我慢して!――
何で我慢すんだ!何を!意味分からねえよ!バカ!
――継ぎたくないサトルを私が養う為に!――
家を継ぐ話は関係無いだろうがよ!知らねぇよ!初めて聞いたわ!
――私にはサトルしかいないの!――
いるじゃねぇかよ 男がよ あの男に腰でも振ってろ!
――聞いて!サトル!お願いっ!――
何をだよ あの男の話か?聞きたくねぇよ 喋んな 黙れ
――おねがいぃ!ぎいでよぉっ!ぎいでぇっ!ざどるぅっ!――
思い出してみる。
あの時、カエデの話をとにかく聞きたくなかった。
今更何を?お前が裏切り、喘いでいるのを見て、何を信用しろと?
思い出すのは心に渦巻く葛藤やら憎しみやら。
思い返せばクリスマスの日に家帰って、アレを見て、ケーキと手紙を家の前に忘れて、多分男を送り出す時に気付いただろう。
だって帰ったら無くなってたから…しかし俺が知ってる前提で、どういう気持ちでクリスマスとか年末年始は一緒にいたんだろうな。
俺は…何も考えず、見ず、ただひたすら精算していたからな。
もしかしたら、何か言おうとしてたかも知れないが黙らせた。
過程何か知らん、結果が全てだと言わんばかりに。
金、家、仕事、これからの事、俺と楓の
就職しようがフろうが自己肯定感が出来る訳でも無い。
そっちが良いなら最初から行けよとしか思わなかった。
でもまぁ今は吹っ切れたと思い込んで…心に残ったのは…お前が幸せになって俺がお前を羨む未来になれば良いなと思っている…と思う。
ところが何だコレは?
過程を聞こうにも話にならねぇ…
気付けば楓の肩を掴んでいた。
強く握ると折れそうな肩…それでも強く握る。
「神様…なんれ…すか?…わたし…」
「神様なんていねぇよ、いるのは俺とお前だけだ。そんで俺はお前のやった事にムカついてるよ、そんで立ち止まってるお前にムカついている。」
「違う…んです…私は…サトルに…」
ここでいつも大声出して終わらせちゃうけどな、俺はもう、そういう事しないぞ。
カエデを無理矢理肩に担ぎ、家を出る。
「ちょっと黙ってろ、聞け。お前はもう駄目だ。1人でどうこうするって意味でな?こういっちゃなんだけど、何が起きたか知らんけどこっちも気分が悪い。だから責任を取ってもらおう、責任を取れる人に」
「え…神様…なに…を…あ…」
駅前のアパートから目的地まで10分も無い。
多分、あの人も近くにいるのは、本当は知ってんだろう。
まるで俵を運ぶように楓を運ぶ。
「も、もしか…して…サト…ル?…ここは…天国?…」
「サトルでも無いし天国でもねぇよ、良いから黙ってろ」
着いたのは楓の実家。木村家だ。
豪勢な門構え、そしてウチの実家がすぐ近くにある。
ピンポーン
「夜分にすいませーん、お届け物でーす!」
「え?あ、はーい」
一瞬カメラ越しに楓の母さん、おばさんが俺に気付いた感じだったけど無視して配達員のフリをした。
「え?サトル君?どうしたの?仕事の事?あの人は今居るけど…はぁ!?カエデ!?」
「サトルじゃないです、ポーターです。いえ、何でもありません。とにかく…コレを」
ドサッ
「え…ここは…イヤ、ここはイヤァ!」
「うるせぇな、ここまで来ちまったらお前をどうこうできる奴なんて家族しかいねぇんだ、俺個人の我が儘だ。気分が悪いんだよ、俺の遺影で拝まれると。まぁ俺が羨む様なスゲェ奴になったら生きてるサトルとやらにドヤ顔しに来い、それじゃ、おばさん。ホイ」
「え?…もしかして…やっぱり…サト…ル…?」
俺は雑な説明、雑におばさんに丸投げし、楓を無視しておじさんのいる部屋に行く。
何か楓がバグってたのって、人と接してないからだけっぽいな。
自分の意志であんな感じしてるみたいな?
だから、色々とちゃんとリハビリすれば治る様な気がする。だからこそ…俺は関わらない。
「うお?どうしたサトル君?何か現場で問題でも?」
「いや、何も問題は…現場に糞漏らしがいたぐらいで…いや、とにかく俺への借りとかとかそんなンは全部無しでイイんで楓の面倒見て下さい。」
「糞漏らし?それに…楓!?楓が来ているのか?」
「アパートにいましたよ、廃人になってました。てかおじさん知ってたでしょ?こんな中途半端に勘当するなら責任持って更生させて下さいよ。俺、今の現場終わったら辞めますんで、その借りを楓に使って下さい、それで借りはチャラにお願いします。それじゃ、明日朝早いんでおやすみなさい!」
「そ、それは…え?ちょっ!?まだ君は楓の事が…」
「そんな訳、無いじゃないんですか…でも別に昔なじみとしていつか遊びには来ますから」
おじさんも悪い人では無い、変に知らないフリしてようが知った事ではない。
木村家、この家はこの家で込み入った事情がある。
過去におばさんが浮気したしないで揉めたり、おじさんが仕事人間で家から距離を取った取らないだったり、姉がこんなんだったり。
俺を良くしてくれるのは俺が混ざると家族間、おじさんとおばさんと姉弟が良好な関係になるからだ。
それは高校卒業後に気づいた事だけどな。
まぁ、そんな事、今は関係無い。
俺はササッと木村家を後にした。
この一方通行な感じ、これは男便糞漏らしこと、タツを意識した。
アイツは良く其の場から逃げ出し、ヒロが高校の時に卑怯者と騒いでいたが、自分の身を守るのに必死になるとコレが一番良いと思った。
『全速力で、脇目もふらず真後ろに逃げる』
ただ、ちょっと気になる事がある。
一人暮らしの家、帰りにまたアパートによる。
今度こそ、この家は消えるだろうなぁ。
しかし汚ねぇ家だ。汚い家、ボロい、狭い家。
ここで、ままごとの様な同棲をした。
子供の頃からの知り合いと。
でも、本気で好きになっていたと思う。
棚にあるのは俺との写真、あのヤッていた男の写真は無い。
おじさんから聞くにクリスマスにいた男と結婚するとか言っていたのなぁ。
――いつもフラフラしやがって!1人ぐらい、のめり込んで好きになってみろよ!――
偉そうに言った台詞。自分を棚に上げて…
落ちている通帳を見ると300万ぐらい貯金されている。
あぁ、俺が残した金と、動画の収益か。
借金はどうしたんだろうな。
遺影の横に宝箱がある、中にはクリスマスにプレゼントしたネックレスが入ってた。
シルバーのが付いている、アイツの好きなキャラクターが付けてたネックレス。
紐が切れて、葉っぱがひしゃげてる。
「何かグシャグシャになってるけど…クリスマスプレゼント…売らなかったんだなぁ…」
うーん…結局…分からないんだよなぁ…好意なのか、何なのかが。
そっと戻しアパートを出る。
「バイバ〜イ!思い出の元我が家!」
まぁまぁ…知った事ではない。
俺の出来る事は終わった、元カノだから、本当は関係無い。
だけど木村家にはお世話になってるから、お節介させて貰った。ウザいとか知らないし。
元カノか…そー言えば…久しぶりにアカネさんのSNSを見ようかな。
こういう時代になると元カノがどうなったとかついつい調べてしまうのは人間の性なのだろうか?
俺はツイッピみたいなつぶやき系SNSでアカネさんのページを検索し、開いた。
――バツイチシンママのハッピーライフ――
この時点で見る気無くす。ハッピーなんすね。
一応、中を見る…離婚はしているが親権はあるようだ…ハッピーになる為に金を湯水のように使い、何だか良く分からんホールで歌を歌う。そして教祖じゃないけどスピリチュアルな先生がどうしたこうした…自己啓発か…もう良いや…もう…
俺に関わった人間が不幸になるのか?
それとも元々そういう奴だったのか?
そもそも不幸なのか何なのか?
分からない俺は明日も糞漏らしに仕事をさせる仕事がある。
俺は粛々と目の前の事をしようと思う。
それから…
※後一回サトル視点です。長らくすいません、書いてはあるのですが推敲が…
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