楓の詩①長い間違えた女の物語〜学生編【前編】
ビ○チって…サトルに…言われちゃったな…
別に最初からそういう事が好きな訳では無かった、男の人も、触れ合いも、性行為も。
最初…まだ物心ついた時、家族で映っている写真を見る。
その中の自分、確か…小さい時は女の子達と一緒にいたと思う。
いつ頃からか…小学校だったかな。
私は当時、絶望的に女の子の輪に馴染めなかった。
『カエデは空気が読めない、カエデは無神経、カエデは何がしたいか分からない…』
悪口の対象にされる事が多く、言いやすいのもあったんだろうか、いつも誰かに文句を言われた。
そんな事言われれば、こちらもいい気はしない。
私も半端にプライドが高く、小学校で人付き合い、特に女子との付き合いを避けた。
小学校…クラスでは1人だった。
でも、家に帰ってから近所の昔馴染みの男子達は、そんな事情は知らないので一緒に遊んでくれた。
男の子は気楽で良い、だって複雑なルールが無いから。
それに私の住んでいる地域では男がイジメをすると、隣町からアレが来ると男の子達が何かに恐れていたので、皆優しかった。
しかし、女の子同士は本当に複雑で…だから女友達を敢えて作らなかった。
そんな中で特に仲良かった男の子。
私の父親が仕事で忙しく、母親が下の弟にかかりきりになっていた時期、家に帰りたくない私に付き合って遅くまで一緒にいてくれた男の子がいた。
名前は木山悟、サトルと漫画やゲーム、取っ組み合いやら…楽しかったなぁ。
いつもやっている事は男の子の遊びだったけど、夜遅くまでいてくれて、怒られる時は一緒に謝ってくれて、楽しい事も辛い事も分け合ってくれて…学校でも気持ちまでは孤独にならず、そんな生活が中学まで続いた。
そして中学校…男子が部活で余り遊んでくれず、家の近くに帰ってくるまではひたすら陰キャのガリ勉だった。
ウチは多分、お金持ちで良い家なんだと思う、そして厳しい。
だから勉強は必死にした、親に怒られたくないから。
父親は特に厳しかったが、なまじ成績が良いので何も言わなかった。
サトルは中学に入ってちょっとおかしくなっていたけど、それでも礼儀正しく、親同士が仕事で知り合いだけあって…反抗期気味の私より家族と普通に話していた。
そんな生活のくり返しの中、中学時代のある日、母が知らない男とデートしたらしく、家で夫婦喧嘩が始まった。
『いつからなんだ!?本当に2人は俺の子供なのか!?』
『だから勘違いなのよ!何度も言ってるでしょ!!』
部屋まで聞こえてくる罵声、母は浮気まがいの事をしていたようだ。
何故、まがい…と言うのかは、後から知った話だが、母は本当に男性とは浮気、肉体関係には発展していなかったからだ。
いや、気持ちが無いだけで世間的には見れば浮気なのかも知れないけど…
私も、もう中学生だからと話合いに少しだけ参加させられた。
父親が何やら興信所か何かに依頼した調査からは、知らない男と会っているという情報と写真だけ。
『常に人目が見える所で会ってます、調査した限り、性行為等は無い…と思われますが。』
ただし一枚だけキスをしている写真があったらしい。
最初、母は何を考えているのかと思った。
これは父に対する裏切りではないのか?
私達はどうなってしまうのか?離婚したら?
小さい弟はまだわかっていなかったが、私は母に何故そんな事をしたのか聞いた。
『昔から知ってる歳下の男の子でね、恋愛感情の無い姉弟の様な関係で…よく挨拶とか落ち込んでる時にキスしてたのよ…久しぶりに会ったら昔に戻った気がして…それでつい…ね。でもお父さんからすれば大きな裏切りなのよね…それがこの歳になっても分からなかった…馬鹿でしょ?本当に…私は、馬鹿だ…』
母は泣きながら謝りもう二度としないと父に縋りついた。
そしてお父さんが出した結論が『許し、やり直す』事だった。
父の話だと最初は許せなかったらしいけど。
しかし、母との話し合いで自分は狭量だったのかも知れないと時間が経って思ったそうだ。
父の仕事は大きな会社で、裏切りは日常茶飯事、疑う事が仕事だと言っても過言では無いようで…それが母に向いてしまったという。
父は私達に『お父さんの勘違いだった』と謝ってきた。
私にはその複雑な感情を含めたやり取りと、その結論の意味がわからなかった。
でも、家族が壊れなかった事に安堵した。
でも、この出来事をきっかけに勉強の合間に大人の恋愛の本を見るようになった。
父や母の気持ちを知りたかったからだ。
何処かでサトルとの未来を思いながら…
そこにはロマンス溢れるといった売り文句と共に、浮気、不倫、ハーレム、スリルの中に本物があるといった内容だった。
耽美なものを読みふけ、そんな事を考えながらも男子とは普通にじゃれ合ったり話をしていた。
それから…成績の関係もあって県内でもトップクラスの高校に入った。
中学校では女子の輪に入れなかったから…盛り上がる女子達を横目にずっと勉強してたから当たり前だ。
一つ良い事があったのは、昔から遊んでいた仲の良い男の子…そう、サトルと同じ高校に入学した。
彼は親が自由を尊ぶ教育方針であったがそれに反発し、勉強を頑張っていた。
中学の3年では私が勉強を教えてあげたりもした。
彼はあまり勉強が出来ないから落ちるかもと思っていたが…まさかの合格。
もしかしたら…私と同じ高校に行きたかったのかな?彼と高校で付き合えるかも知れない、付き合ったらどんな事をするのかな?なんて妄想をした。
受験の合間も妄想にふけった、勉強はもう十分、上を目指せば際限ないが、私にそこまで勉強への熱意は無かった。
ただ、勉強しか中学はやる事が無かったから、それだけ。
そんな耽美な妄想を繰り返す私。
彼、サトルは外見や性格関係無く、無条件で妄想の中に出てきた。
そして高校に入る…世界が変わった。
昔は地域で分けられて、今度は学力で分けられた。
もう、昔の私を知る人はいない。
正直、浮かれていた。一人が良いとか言いながらも、青春…いや、恋愛に餓えている自分がいた。
多分、大人の本を読みすぎたのもあると思う。
そして入ってみて思ったのは…高校というのは頭の良い学校程、自由であるという事。
勿論成績が追いつかなければ自由は無いが、そもそも中学時代に成績の良かった生徒しかいない。
まさに皆が自由を謳歌していた。
そして私も現実に向かって踏み出した…
クラスで友達も出来た、吉田さんという背の高い綺麗な人。
高校からサッカーをやりたいらしく、サッカー部に入っていた。
その友達の関係で、私は男子サッカー部のマネージャーをする事になった。
サッカー部は強くも弱くもなかったが、同級生に中学の時に活躍した真田音取君というイケメンのエースストライカーがいた。
吉田さんはどうやら真田音取君を気に入っているらしく、吉田さんの手助けをしたりサッカー部のマネージャーとして充実していた。
大人になって考えてみれば、ここが私の人生の分岐路だったのかも知れない。
私は先輩達に気に入られた、そのおかげで運動部の女子からも一目おかれた。
高校生活で大事なのはどのグループに所属しているかという事。
その中で副部長は笑いながら身体を触ってくる事の多い人だった。
それでも副部長も部活は頑張っているし、サッカーを真面目にやっている。
私はずっと男の子としか接して無かったのでこんなもんだろうと思っていたし、下ネタにも乗って楽しんでいた。
…が、他のマネージャーは不快だったらしい。
すぐに周りは辞めてしまい私1人になった。
いつも不思議に思っていた。
女の子同士で手を繋いだり抱き合うなんてやり取りは良くある。
女の子同士でキスをする子なんてのもいた。
サトルはしなくなったけど、男の子と中学校でもふざけて羽交い締めにしたり押し倒されたりとかはあった。
私のやっている事がイヤラシイとか、おかしいという人もいたが、性的な意味は一切無い。
そもそも性的な意味で考える方がおかしいのではないかとすら思っていた。
それに色んな物語でもそうだ。
複数の女の子と付き合うハーレムものや、一晩限りの遊び。
家族でもそうだ。
母は昔の幼馴染とキスをした。手を繋いで歩いていた。
全てを性的な意味で捉えるのはおかしい、スキンシップの何が問題あるのか?
もし恋人が出来たとして、恋人にする行為は特別だとは思う。
しかし、その線引を決めるのは第三者ではなく自分だと、周りに比喩されて思った。
そして皆で一丸となっているサッカー部。
中学で有名選手の真田音取君というスターが入った事で数人はその熱に浮かされているのもあった。
そして真田君の入ったサッカー部は技術的な格差が圧倒的に広がった。
下手な3年、実力のついた2年、そして真田君に触発されて入部した元サッカー部やしたことなくても運動能力の高い1年。
先輩達は部内の空気を変えた真田君を、サッカーも運動能力も人間的にも出来た人なので責める事も出来ない。
更に言えば暴力的な先輩後輩の力関係が元から無いのもあるが、真田君には手が出せない理由があった。それが3人の幼馴染。
同じ高校に入った、中学時代に不良狩りやヤクザの事務所に出入りしていた男子、3年の女子達がご機嫌を伺う様な半グレと付き合いのあると噂の葛愛花さん、トラックに轢かれたまま登校したり、屋上から飛び降りたり、なんの脈絡も無くウンチを漏らす藤原さんという、奇怪な幼馴染達がいる真田君に先輩は何も言えなかった。
弱いながらに纏まっていたチーム格差から綻び始める。
そして、3年最後の試合、あの明るかった副部長や3年生のせいで絶対負ける訳無いと言われていた1回戦で負けた。
「俺達のせいで…ちくしょう…」
副部長は泣いていた。真田君は試合に勝つ事に興味は無さそうだった。
何も責めない…だから余計、3年は辛かったんだと思う。
自分のせいで…そう思って泣く明るい先輩を見て、そんな事はありませんでしたよという気持ちで…
…という気持ちでキスをした。
「先輩…先輩は…頑張りましたよ。皆知っていますから」
何でそうしたかは分からない。
母親の話を聞いていたからだろうか。
自分でも分かる、恋愛感情は無い。
これは多分、同情だ。でも慰めたいと思った。
「ん…んん!?くちゅんはあぁ♥んふ♥」
先輩が甘える様に舌を入れてきて、私はそれを受け入れた。
抱きしめて来た、だから抱きしめ返した。
いつものボディタッチではない、身体中を弄り弄られ、体温が熱くなった。
「ん…んん♥ンあ♥せんぱぁい♥」
1人でそういう事はした事がある。
でもこれは、自分以外の感情が入ってくる感覚。
何とも言えない感情が湧く、そして子どものように甘える先輩。
既に痛みは起きない、中学時代に妄想にふけるあまり疑似体験を済ませてしまっていた。
そして私はその日、快感の何たるかを知る。
1人でするソレとは大分違う、この感覚。
目が覚めた様な、世界が変わった様な、大人の扉を開けた様な、表現出来ない世界がそこにはあった。
そのまま流れで、男性との初体験をした。
後悔は無い、後悔どころか…私はこの時の為に生まれて来た様な錯覚に陥った。
私は先輩と卒業するまで付き合う事は無かったけど、たまに部室で身体を重ねる関係になった。
後から考えればセフレという関係、同じ部活の人間が数人程度知る秘密の関係だった。
そして2年になり…セフレの関係は卒業と同時に無くなった。
先輩がいなくなり吉田さんとは違うクラスに…そのかわりに仲良くなったのが葛愛花さん。
葛さんは2年で有名人だった。
化粧の仕方、立ち振舞、自分の見せ方、色々教えてもらった。
『楓は素材が良いんだから!もっと自分を見せなきゃ!あのゴミ
親しくなると分かる。
この人は既に大人の世界の住人だ。
その葛さんがこんな事を言っていた。
『セックスは簡単でも、気持ちの入ったセックスをするのはとても難しいよね』
好きな人…恋人にしたい…そんな相手は誰だろうと思った時に頭に出てきたのがサトルだった。
1人でしていた時も想像のサトルが私を押し倒していた。
先輩と同じ様に強引にされても…サトルの場合だとどうなってしまうんだろう…
サトルとは未だに友達…気の置ける大事な、家族より近い関係。
いや、腐れ縁のような、幼馴染と言うか、付かず離れずの関係が続いていた。
だから、私から手紙を入れて下駄箱に入れた。
告白…ラブレターだ。
そして、サトルに呼ばれた先で、言葉でも伝えた。
「サトル…ずっと好きだったの…付き合って!」
サトルは軽音楽部に入っていて、OGの人と仲良いなとは思ったけど、それでもまだお互いが意識していない時で良かった。
私と彼には歴史がある、だから上手く行かない訳ないと思った。
そして何となくだけど…私に気持ちが向いているのは気付いていた。
「うん、良いよ…だけど本当に俺で…」
「良いんだよ!サトルだから付き合いたいんだよ!」
それからサトルと付き合ったが…何も進展が無かった。
いつもと同じ毎日、平穏、だけど大人の扉を開いた私には焦らされている様な、何か足りない気持ちのまま過ごしていた。
葛さんに言われた。サトルと付き合ってるのを知っていたからかな。
「付き合えたんだ、おめでとう!楓は綺麗だから忠告しとくけどさ、自己顕示欲とか、承認欲求という誘惑に負けたら駄目だよ?多分、楓の周りにはそういう人間も集まると思うから。気をつけてね?」
そしてその葛さんは、吉田さんと真田君の事で喧嘩をして、2年の2学期頃にはその喧嘩とは別の理由で葛さんが退学になった。
その理由は分からないけど、だけど最後に会った時に言われた。
『どんな事をしても…この人と決めた人と結ばれる努力を…付き合ってセックスするだけが全てじゃない…その人を理解し、自分を理解されないと結ばれてるとは言えない。私は偉そうな事を言って、自分の事だけしか考えてなくて、結局何も叶わなかったよ』
意味が分からなかったが、葛さんの恋が終わった事は分かった。
誰かから聞いた、付き合っていた幼馴染の根多君、彼は葛さんに性的な事は何もしなかったらしい。
そして…葛さんは同じ幼馴染の真田君に手を出した。
そう考えれば私は恵まれていたのかも知れない。
反面教師として葛さんが先に失敗したと言っていたから。
多分、その彼も、そしてサトルも…大事にしてくれてるから手を出さない
でも、本当の恋、本当の愛…私にとって真実は何だろう?
少しだけ葛さんが羨ましかった。幸せな日常と、溺れるような欲。
二つの相反するものを手に入れた気持ちはどんな気持ちなんだろう。
そう思いながら、自分も同じ轍を行くとはその時、知らなかった。
その後も…サトルとは何もなかった。
ただ、遊び…一緒にゲームしたりマンガ読んだり、買い物したり…それは楽しかったけど…そして昔から付き合いがあるから、クリスマスや初詣なんかは最初は二人で、その後に両親と弟含め家族のイベントとして参加して…
足りなかった…私の憧れ…青春や恋…特にクリスマスは二つの家族が揃っている事が私には不快な気持ちすら生まれていた。
胸のドキドキ…全身に埋まる充足感…身体と身体で繋がる、お互い有るものと無いものを交わらせる男性と女性の繋がり…
サッカー部に関しては、真田君はサッカー部に来なくなった。
そして3年と2年の実力も離れていた。
去年と同じ現象が起きる…が、今回の3年は来なくなった。
同級生でサッカー部に入っていた粉川明君、アキラ君は2年のまとめ役、先輩が来なければ部をまとめる役割で次の部長と言われいた。
各学年の間に入って、いつも心をすり減らしていた。
悩みを聞くのもマネージャーの仕事、そう思って相談を受けていた。
弱音を吐く姿に去年の副部長の姿と重なる。
思い出してしまった、身体の繋がり、男性と女性の交わり、あの興奮を。
サトルは私がサッカー部のミーティングで遅いのを気にしていなかった。
当然だ、彼も部活に入っていて、そして課外活動は夜のライブハウスだ。
彼のライブは、たまに見に行った。
日常では味わえない興奮を、私が先輩と共有した様な興奮を、彼はライブハウスで、音楽で発散していた。
だから…私も…自由にして良いかなって…心のどこかで決めていた。
冬の大会は、2年にとって実質最後の大会だ。
人数が沢山いた時代と違って、3年は来ず、数人は大学受験でサッカーから離れる。
既に、エースと言われた真田君は幽霊部員になっていたので試合には出ない、冬の大会はあっさりと負けた。
去年、3年に気を遣わず実力だけでメンバーを決めて大会に出たら勝っていた。
今年は誰もやる気を出さずに実力外の所で負けた。
夜、部室でアキラ君が泣いていた…私も涙が出た…もう我慢できなかった。
夜の部室、埃っぽいサッカーの道具が転がる中で、唇が重なった。
多分、私から…思い出してしまっていたから。去年の事を。
そしてアキラ君が覆いかぶさって来た。
「マネージャー!いや、楓!好きだ、好きだったんだよ!皆のマネージャーだから言えなかったけど!好きだったんだよ!」
私はなんて答えたかは分からない、彼の本気の気持ちだ、サトルの代わりしては駄目だと思ったけど…
不思議な事に、サトルの事は頭から消えていた。
快楽の中で思う、色んな選択を間違えた。
心の片隅では気付いていたのかも知れない。
でも、止められない。
サトルと付き合っているのは、極親しい友人以外は特に言ってなかった。
サトルも同様だ、別に公式にする必要は愛する二人に必要無いと思っていた。
だからアキラ君は知らない。
サトルの部活での様子を見ていると分かる。
本当は勢いに任せて、子供の様に無茶苦茶をする人で、他人の気持ちは無視して、自分の考えや、我を通す人だ。
そのサト
ルが、私をとても大事にしてくれた、気を使って、話を聞いて優しくしてくれた。
私もサトルに気を使い、サトルに嫌われる事はしないように努力していたと思う。
でも私を無茶苦茶にして欲しい…とは言えなかった、私はサトルが来るのをじっと待っていた。
私の性癖とでも言うのか、自分に責任を持ちたくないだけなのか、こんなに妄想が激しいのに受け身だった。
でもそれは、サトルと同じように周りを気にしての事だったのかも知れない。
例えば家族付き合い、付き合いが進めば親も違う考えを持つだろう。
サトルは継ぎたくないと言っていた親の会社に入る努力を、そして将来、音楽だってやめなければいけない。
私だってサッカー部のマネージャーをしている場合ではない、多分、勉強して父の会社に入る為、一流の大学に入る事が必要になる。
そんな事をいつも、どこかで考えていた。
それが互いのストレスになっている事も知っていた。
そんな気持ちを裏切った…悪いと思っている、してはいけないと思っていた。
だけど止められ無かった。
「んおあ゙あ゙あ゙っっ♥あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙♥♥♥」
獣の様に叫ぶ、私の本心、突き上げられて、それがそのまま声に出る。
「もっどぉ!♥もっどじいいいいでええ!!♥♥」
溜まりに溜まった感情が叫ぶ…
下腹部、身体に、声に出る。
私は止められなくなってしまった。
「イグううううううううう!!!♥♥♥」
それから…収集がつかなくなるまではあっという間だった。
行為をやめられず、繰り返し部室で行い、サトルがライブで夜居ない日は隣町のホテルにも入った。
アキラ君との関係はハッキリさせず、要はセフレ。
だけど 自然とサトルとの距離が離れていく。
3年でアキラ君はキャプテンになった。
真田君も後輩へのコーチをすると来るようになったが、サトルと真田君が友達なので、2人でしている事は内緒にしようと言った。
後ろめたい気持ちがあるから…サトルにもアキラ君にも嘘をついた。
ある日、サトルに言われた。
「昔から人との距離感バグってるけど、最近ちょっと酷くない?」
何となくバレている気がした。
アキラ君は同じクラスだったから。
いや、私が日常で我慢できなくなっているだけだ。
よくドラッグとかでやめられないと言うけど、それと同じ状態だ。
3年になるとサトルとは完全にすれ違っていた、もしかしたら冷たい事も言ったかも知れない。
だって、いつまでも手を出して来ないから。
不満が態度に出ていた…不満が出るという事は天私はまだサトルが好きなんだ…私の気持ちに気づいて欲しいと勝手な事を思っていた。
3年の半ばにはアキラ君は様子がおかしくなってきた。
アキラ君が正式に付き合おうと、俺の彼女になってほしいと言ってきた。
何処かで、誰かに聞かれたんだろう。
クラスでいちゃつく…私とアキラ君、だけど楓には彼氏がいた筈だとか言われたんだと思う。
私の誤算…アキラ君は周りに誤魔化してセフレだという事には出来ない…運が良くも悪くも…アキラ君は真面目な人だった。
冷静に考えればそうだろう、この学校はおかしな人もいるが基本的に真面目な生徒か多い。
「コレを続けるなら彼氏と別れてくれ、そして俺の彼女になってくれよ」
彼とは…付き合う気は元々なかった。
趣味…私はサッカーのマネージャーが楽しいだけでサッカーは見るのもやるのも好きじゃない。
だからサッカーやスポーツの話をする彼をつまらないと思っていた。
性格…見栄っ張りで自信家、の様に見えて芯がなく弱い。彼が弱っている時は母性をくすぐられるが、普段の少し偉そうな態度は好きになれない。
相性…セ○クスはする…しかしこの人だという訳では無い。先輩と同じだ。本当はサトルとしたかった。
この人は私の欲の発散でしか無い。
考えてみると、高校時代の私は思ったよりゲスだった。
「今は駄目なの…お願い…もう少し待って…遅くても卒業までには…」
私はアキラ君に卒業まで待ってほしいと、適当な理由と言う名の嘘を並べて誤魔化した。
同時にこのままでは駄目だと、サトルと今年のクリスマスまでにはしようと思った。
だって彼とは運命だから…とか言ってる間に、案の定、バレてサトルにフラレた。
高校2年からの不貞行為…よく今までバレなかったと後から考えれば思うけど…
当時は『何で今更…』と思ってしまう程、予定外だった。
サトルが最初、キスをしたいと言うからした…いよいよかと思ったが、突然キレて罵声を浴びせられた。
サトルは頑なに話を聞いてくれなかった。
これだけ付き合いが長い幼馴染なのに、突然顔も見たくないと言われた。
私は焦った、こんなに怒っているサトルを見た事が無いから。
話を聞いてほしくて、つけまわり、縋った。
誤解だとか色々言い訳を言ったが当時は喋れば喋るほど関係が悪化していく事に気付かなかった。
そんな事をしている間にサトルは軽音楽部の先輩と付き合っていた…
サトルを待ち伏せしてると先輩に言われた。
「よぉクソ女!浮気しといて何を追っかけ回してんだ?人の男追っかけ回してんじゃねーよ!性根ブスが!」
「ヒィ!?」
胸ぐらを掴まれ、凄まれ、怖くて私は諦めた。
私は元から女子は苦手だ、怖い。
男子は皆優しくしてくれる。それに引き換え女性は…
そこから…サトル別れてからとにかくツイてなかった。
ヤケになっていた、私が誰でもヤラしてくれるという噂に便乗してきた1年と2年…私はとにかく不安で、味方が欲しくて、名前も覚えて居ないようなヤンチャな後輩としてしまった。
今度はそれを知って荒れ狂ったアキラ君、サッカー部は最早壊滅だ。
そう、文字通り、サッカー部は私が壊した。
すると今度は1年の時に仲の良かった吉田さんが普段は優しい顔が嘘のように、鬼のような顔で迫ってきた。
「テメェは何がしてぇんだよ!サッカーに何してくれてんだよ?ああぁんっ!?」
ブレザーのネクタイを揺らされ、怒られ、脅され、凄まれ、罵声を浴びせられた。
暴力ではないが口を掴まれ歯が折れるかと思った。
まるでドミノの様に崩れていく日常、吉田さんの怒ってた通り、サッカー部は活動停止になった。
暴力事件が起きたからだ、私のせいで…
同級生のアキラ君が、私と関わった1年と2年をボコボコにして、アキラ君とサトルも殴り合いの喧嘩になる直前で真田君やその幼馴染がが間に入って喧嘩を止めたが…
クラスにいても白い目で見られるだけ…
もう私の居場所は完全に学校から無くなっていた。
それこら学校には逃げるように行かなくなって…短大に逃げたのだ…
喧嘩の仲裁に入っていた…確か藤原さんに…言われた。
『外から見たら間違えだらけ、お前みたいな奴を頭対魔忍って言うのかな?』
ずっと間違えている、だから私は居場所を無くし続ける…
―――――――――――――――――――――――
「話が長いんだよっ!お前のメンタル話が長い!!」
パァーーーーーーーーーーーーン!!!
「イタッ!?ごめんなさい!」
私はコスプレした状態で椅子に縛られ、身動きが取れず、何やら見知った人であろう覆面を被った女性にハリセンで殴られた。
「もっと短く、内容をギュッと詰めて話せ!このコケシに!NTR耐久卿はお怒りであるぞ!」
とりあえず今までの事を分かるように、テーブルの上のコケシに説明しろと言われたのでしていたが、怒られた。
「お前、バラされたくないだろ?だったらもっと短く、スピーディーに!分かるな!?もしまた長くなったら…【ガチャ…】」
あぁ…サトルの声だ…謝っても謝りきれない…感謝を伝えたくても伝えられない人…その人の声で…
『あぁ…カエデの事?どうやって?だから【ジー…ガチャ】殺す【ガチャ】だから言ってるじゃん?俺のこ【ガチャ…ジー】殺すんだよ。だからカエデ【ジー…ガチャ】殺す』
そう、私はここまで言わせる事をしたんだ、だから私はもう、私では生きていいけない…バレる訳には…いかない…
彼女に従うしかない、私は卒業してからの事をコケシに向かって語った…
※吉田、アカネの話は端折りました。気になる人は多分いないと思うと自己判断です、誤字脱字申し訳無い、ゆっくり改稿したいですが文字数か…。
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