信じる者は救われる?あぁ、それは相手次第だよ

 ビチャビチャチャー

 ゔぁアアオオオ!!オオア゙っ!


「ハァハァ…うっ…ふぅ…サトル、世の中ってさ、何でこんな不公平だと思う?」


 ゲロを大量に吐いて涙目の汚物が、不公平を語る。

 何故か眼鏡をかけ始めた、何がしたいんだよコイツは。


「私…あの後、分かったんだよ…馬鹿だったなって…父さんとか母さんにも怒られて…短大でもでもさ…」


「あぁ、お前は今でも馬鹿だよ」


「思い出すとサトルにから泣いて…本当にずっと泣いて…それから涙も出なくなってさ…」


「多分、悲しいとか楽しいって感情が…あの時無くなったんだよね…私が笑っていられたのってさ…きっと…本当はオエエ…サトルの…」


 聞いてられない、途中で突っ込んだのに無視。。それに何か必死に芸能人の休日風、黒縁眼鏡をかけ始め、髪…姫カットを整えてる。

 ゲロ付いてますよ?髪に…いや、はっきり言おう。


「いや、お前が浮気したから俺がフラレてんだろ?何言ってんだお前、何でお前がフラレてんだよ」


「アレ、フッたって言うのかな?私の心の傷…凄かったよ…君を失ったのが」


「君?いや、知らんがな…失ったんじゃなくて捨てたんだろうが…傷ついてるのは俺の方が…」


 言ってて思った…コイツ、反省してないのか?

 なんかやり直そうとしている空気だけど支離滅裂だし、何かその…サブカル風私は変わってますからそういう事もあり得ますよ感…そういう変わった奴で押し切ろうとしてないか?


「お前、まさか…まだ、男との距離間バグってんのか?」


「男との距離間って何?はいつだって正常さ…イデッッッ!?」


「イラッとくるからボクって言うなお前…」


 俺は女を叩く事を良しとしない。暴力は良くないと思う。

 でも…コイツは無理だろう、さっきも首投げしてしまったが、なんせ頭が…。


「俺、こんな事言わないと分からない幼馴染がいて恥ずかしいけどよ、浮気が良くないってわかってる?好きな人と付き合うとか?エロい事は好きな人とするっ…ていうか、浮気って意味って分かってる?ヤリ◯ンって意味知ってる?」


「わ!?分かってるよ!?バカにしないでよ!…いや、言う通り…そうだよね、浮気は良くない…でも皆やってるし、ネットでも当たり前みたいに言ってるよ?それに…やっぱり目の前で男の人が誘って来たら『やかましい』ォ゙ッ!?ヒュッ!?ヒュッッッ!?」


 俺はとりあえず黙らそうと片手で口を塞いだ。

 コイツの皆やってる理論は付き合うそれより前から注意していた事だ、もう言わない。

 皆は真似しちゃいけないよ、ゼッタイ。


オエエエエエエエエエエエエエッッッ


 そして俺の手に盛大に吐いた…何だろう、この歩く馬鹿…頭対魔忍とはよく言った。

 本当にやる馬鹿だ。


―――――――――――――――――



「んで今、普通に俺は自分の家に帰ってるからお前の実家の方に行ってるけど、お前家追い出されたんだよな?せめてお前んちまで送ってやるよ」


「ウエエオオ…オオオオ…」


 夏で良かった、俺は盛大に吐かれた腕を必死に洗った。

 人語を話していない生き物を背負い、勝手にバックの中の財布見てカエデの住む家の住所まで行く。


 そこはボロアパートだった、凄いボロさだ。

 俺は廃屋とか心霊スポットとか好きだ。

 まさにグッとクる建物…人以外の、何かが住んでるぜ…


 そして身分証から部屋番号を調べ鍵を…てか鍵開いてる!?

 20歳過ぎた女が何て不用心だ…コイツ本当に頭が…とりあえず玄関に置いたが…


「オオぅ゙…オオ…そ、そこ…空いてるところ…座って良いよ…」


 グシャッ…オエエエエエエエエエエエエエ


 いや、何処だよ…って言うぐらい部屋が汚ねぇ…まさに人以外の者が住んでいた部屋、人外女は台所に行く途中に何かのゴミで足をすべらせてその場でまた吐いた…


 俺は…四つん這いでこの世の終わりみたいな土下座姿勢で袋に顔を突っ込んでいるカエデを尻目に部屋を片付け始めた。


 何でかと言うと、余りにも終わっているからだ。


 俺が好きだった女、話が合って、どんな時も、一緒にいても話が尽きなくて、黙っていても変な空気にならない幼馴染…浮気されて別れて、知らない間に勝手に崩壊した馬鹿。


 ゴミ屋敷なんて大体ゴミをまとめるだけ、だってこうなる理由は見て分かる。

 そして自分にも言える事だ、俺の部屋も汚い。

 俺はいつか母ちゃんが片付ける、しかしコイツには家政婦はいない。


 『面倒くさい事は後回し』

 

 そりゃ一緒に居て落ち着く訳だ、同族だもの。

 アカネさんに言われたな。


――サトルは何でも後回し、もうちょっとお金とか、将来の事、考えてよ――


 いや、一応就活とかしたんすよ?でも駄目だったな。


 俺は金や仕事に、カエデは男にだらしないんだな…一緒にするなと言ってもそうはいかんよな。


 一通り部屋を片付ける、掃除機もかける。

 こういう奴って何故か掃除機は持ってるんだよな、機能してないけど…幸い食器は無い、てゆーか自炊の気配が無い。


 俺もちょっと酔ってるけど、不思議なもので人んちだと徹底的にキレイにしたくなる。

 実家だと全然やらないのにね…


 掃除して気付いた…こいつ…公共料金払ってねぇ…そして家賃も滞納している。

 何か異臭がするからクローゼットを開ける…クセェ!?

 大量にコスプレ衣装がある、が、カビがファぁっと!

 こいつ何か芸能事務所に所属してるとか言ってたけど…

 あ、レインボ◯ミカだ。懐かしい。子供の時はかなりやったな…ハイレグだわ、あれで性癖狂ったわ。足開く技してポーズボタン押してな。

 カエデの前でも躊躇わずやったわ、カエデが使ってたからな、俺も力士や電気出す奴ばっかり使ってたわ…まぁいいや。


 そんなこんなで、俺は人んちの片付け才能が発揮され、ランドリーに片っ端から突っむ事にした。

 ついでにコンビニに行って気持ち悪くても食えるもんとさっぱりした飲み物を買い、23時頃には部屋が綺麗に、洋服と変なコスプレ衣装はしっかり洗濯された。

 

 この金は何としても請求しよう。


 チラッと色々な明細が見えた、てか片付けていると見えてくる。

 コイツの生活が。


 男に貢いでいる訳じゃない、就職して半年無いぐらいか。給与明細が出てきた、手取り17…ブラックじゃね?

 そしてボーナスも出てない時期に馬鹿だからローンして家具やら電化製品を揃える、不必要な物まで。

 そして芸能活動?に必要なのかコスメ?やらジム?やらの領収書、家賃払わないと殺すぞ手紙…家賃は何故か駅近くで7万のボロアパート…残り10万…どころか滞納で消えてら…


 俺も金にだらし無いが、ローンはしとらんぞ?実家だけど。

 

 その間「ォ゙ッオ゙ッア゙ア゙ッ」と、まるで妖魔からハードプレイを敢行されている様な声を出しながら、今度はトイレで土下座しているカエデ。

 帰る前に一言言っておくか。

 

「お前、今度、清掃料を請求するからな?払えなかったから親に言う。ここに飲み物とさっぱりしたもん置いとくから、明日仕事かどうか知らんけどこれは俺の奢りだ、達者で生きろ」


 そう言い残して去ろうとしたら『マッディ!』と謎の外人の名前みたいな事を言いながら洋服を掴まれた。


『ゴンバン…イッジョニ…イデェ…ツライヨォ…サビジイカラァ…』


 喉が死んだ声で言われても、俺は同じつては踏まない。

 馬鹿らしいったらありゃしない。


「知るか、適当に男呼べよ、いんだろどうせ」


 俺はクールに去るぜ…と言うか、アカネさんとの事を考えながら帰ったが、冷静に考えたらフラレたばっかで一歩間違えたら託卵寸前だったんやぞ!?

 女は怖えよ、もう怖え。真田と吉田さんまだ飲んでのかな?連絡取ろうと思ったけどやめた。

 ヤッてたら申し訳ないからな…


 何か性的な珍事が多過ぎて、このご時世にまだセルで売ってるエロビデオ屋に入ってダラダラ過ごした。

 ついついコスプレ物のコーナーで立ち止まり、先程まで洗濯していた衣装を思い出した。


 そういや、昔、アイツと一緒にやったゲームとか、一緒にハマった漫画の衣装が何個かあったな。


 今日夜、一緒にいて付き合うとか言ってたら…いや、一緒にいたらヤッてたのかな…据え膳食わぬは…と言うが、まぁそれをしないのが俺だ、と勝手に思いながらせめてコスプレ物を買おうとしたら財布が無い事に気付いた。


 終わった…決め台詞言って、財布忘れる。

 俺はどこまでもヌけた男だ。


 来た道を戻りながら思う…やっちゃおうかな…でも親知ってんだぞ?

 当時、カエデとは絶縁したがカエデの両親と弟とは実は良好な関係だ。

 良好で無ければ俺は流石に家…地元を出ている。

 実家を出ていったのは、いや、出させられたのはカエデだった


 悩みながらカエデのアパートに戻ると声が聞こえた…


『アッ♥アン♥アッアッ♥アア―ン♥』 


 俺は頭を抱えた…危ねえ…昔と同じ事する所だった。1時間ぐらいしか経ってねえぞ?

 さっきまでの『ア゙ア゙!』と違い『アア♥』と意味合いがだいぶ違う。


『サトルウウウウウ!!♥♥ナン♥アアアアアッゥ♥』

 

 え?1人でやってんの!?俺の名前呼んだよな!?マジか!?

 俺はワクワクしながら部屋への階段をカンカンカンと登ったが…



パンパンパンパンパンパンパン 


『ちげぇよ!俺はサトシだよ!何で今更名前間違えんだよ!』


『ダッテエエエ♥あああああーーー♥♥♥』 


 カクッと膝が落ちた。馬鹿みてぇ…あー…こういう時動画撮るんだっけ?

 ウチの学校でいたな、動画撮った奴。

 何か幼馴染4人組で1人と付き合ってたけど寝取られて?それをずっと撮って、その後も6か月ぐらい?撮り続けて最後別れるとか訳のわからん事してた…確か1年の時一緒だったヒロだっけ。

 寝取ってたのが真田ってのは笑ったが…3年で自分が同じ事になるとは思わなかったな。


 ヒロは良い奴だけどもう一人の女の幼馴染相手にだけ、たまに人殺しみてぇな目をしたり校舎から落としたり殴りかかったりしてたな。

 それと付き合ったってんだから意味分からないけど。

 

 とにかく撮ろう、撮ろう?何で撮るんだろ?

 まぁまぁ、おあつらえ向きに安アパートだから台所の柵窓から中が見える、俺は幼馴染の痴態をスマホで撮った。

 しかしアレだな、サッカー部の部室でベロチュー見た時は気が狂いそうになったけど、彼女でもない、気持ちも無い、信用してないとなると、さっき一緒に居てとか言われたけどマジでショック無いな。

 コイツどうしよもねぇなぐらいだ。


 あ、男がコスプレ着させてる…懐かしいやつだ。


『それはダメぇ♥…あっちにしてぇ♥』


 手に持ってたのは2人でハマった格ゲーのキャラ…俺が好きだった、レイ◯ボーミカ…それは駄目らしい。

 何だよ、好きなキャラだけど人気無いせいでエロが極小数だったけど同人誌買ったぐらいだから懐かしい気持ちでシコ…まぁこの動画を使おうとは思わないけど…


 何か見た事ある最近のアニメの衣装に着替えさせる男…カエデというマグロにズルズル着替えさせてる。

 まぁ泥酔してゲエゲエ吐いてたからな、体力なんて残っちゃいねぇわな。アレで着替えさせてヤって楽しいんかな?


 そして一通りマグロプレイが終わりピロ―トークが始まる。

 何で俺がまだ玄関にいるかって?楽しいからだよ(笑)

 ヒロの気持ちが分かる…いや、分からないな。

 付き合ってたら泣きながら脱兎の如く去るわ、こんなん。


『そーいや部屋が綺麗じゃん、今日泊まってくよ、そのまま会社一緒に行こうぜ』


『え…ああ…スーツ持ってきてるの?』


『あぁ、電話来た時ホテル行こうと思ってたから』


『ん?部屋が綺麗?なにそれ…あれ…ホントだ…サトル?…あ…』


『いや、だから俺はサトシだって…流石に会社入って4ヶ月、付き合って2ヶ月経ってんだから覚えてよ…』


『確か…サトルが…え?アンタと付き合ってんだっけ?』


『え?こういう事してるから付き合ってんじゃないの?』


『ん―あーそう、付き合ってるのかな…でも告白されてないよ?』


『いやいや、お前から誘ってきといてそりゃないだろ?俺は、彼女いねぇし?告白っていくつだよ?』


『そっか…じゃあ…ん~別にどっちでも…じゃ駄目だって言ってたな…ん〜もやもやする…ちょっとそれは保留で…』


『え?カエデ、彼氏いんの!?それとも事務所の関係で彼氏いたら駄目とか?結構俺等やってるけど…』


『いや、そういうんじゃない…ただちょっと…違うかもって思っただけ』


 聞いていて思った。コイツ、マジで終わってんな。

 流石に今日、さっきまでの話だ、俺に悪いと思ったのか。

 ただ、目線が合いそうだから玄関横で音が聞こえる位置でウンコ座りしているが、男に腕枕されていう台詞じゃないし、男が本気だったら失礼過ぎるだろ。


 まぁ聞いてる感じ、男は本気じゃないんだろうな。で、カエデも本気じゃない。

 いや、本気っていうのもおかしいな。


 サッカー部クラッシュの時も聞いた話と同じ感じだ。

 ただ、中学卒業して間もないリアル厨二病の性欲少年兵にカエデの理屈を理解しろというのが無理だわ。

 だって長年一緒にいた俺も無理だから。


 俺だってフリーター2年目、色々知り合いが出来たし、色んな話も聞いた。

 こういうカエデみたいなのは男でも女でも一定数いる。

 病気でもない、特殊な理由も無い、ただ距離感や感覚が一般教養から見ればバグってるだけの人。

 治るのか治らないのかは知らない。ただ、ご両親は悪手を選んだな。

 何故ならそのタイプは1人にしたらろくなことしないからだ。

 それが幼馴染たぁ…ついてないぜ、俺。


 さて、帰るか。明日仕事らしい、まぁ頑張れ。

 俺は休みだけどなぁ…て、財布…まぁ鍵は合鍵をポストにいれるという愚行を犯していたからな。

 勝手に取ろう。


―――――――――――――――――――――


 そして次の日、財布回収しようと昼前にアパートに行った。

 地元の駅のすぐ近く、カエデももうちょっと遠くに引っ越せよな…親相手にかまってちゃんかよ…


 ポストの手を突っ込んで鍵を取る。

 やってる事は泥棒だけど取りに来たのは俺の財布だし、まぁ良いだろう。

 正直、昨日は清掃代とか思ったけどもう関わりたくないわ。

 俺は職場の男というのにトラウマじゃないが疑いしか無い。

 あんな男の影がチラつくだけで無理だし、脳味噌が無理。


 鍵開けようと思ったら開いてた、まだいんの?

 ヤベー…ガチャガチャやってしまった…でも気配もないし大丈夫か…


 カーテンも開けてない暗い部屋、エアコン付けっぱなしで出たようだ。


「懐かしかったな…レインボーミカ。プロレスラーの衣装はエロいよなぁ」


 しかし、どうしようかな。昨日アカネさんの事を思い出してたらムカムカしてきた。

 ブログに凸でもして俺の赤ちゃん返せとかコメントしようかな…まぁでも赤子に罪はないし?


 そんな事を思い出しながら財布を探す。

 カエデの家は奥に繋がっている2Kで、手前で最後作業してたからここらへんに…


 ガサガサゴソゴソ…


 何か音するわ…やっぱりいる?丁度財布あったしさっさとトンズラしよう。

 と思ったら…急にふすまが開いた。


 そこには黒髪の目だけ出ているハチマキしたツインテール、引き締まっていない、だらしないボデーの女子プロレスラーが立っていた。

 そして何か玩具の声がマイクみたいになるやつで喋り始めた。


「未来のあたしはどこにいる?探してるのはこの先の輝く未来のあたしッス!必ず会えるその日まで明日をずっと追いかける!!レイン…


「いや、お前に輝く未来はねぇから。せめて子供出来ない様にしろ」


 バタン


 俺はカエデがレイ◯ボーミカの勝ち台詞をベラベラ喋り始めて一瞬困惑したが『レインボーッッッ!!!』と決め台詞を言う前に、言うだけ言って玄関を閉めた。


 玄関にダッシュしてきたので開けられないように廊下に出ていた良く分からん靴置きみたいな棚を玄関前のドアの前に置いて開けられないようにした。

 外出るならベランダから出たくれや。


 するとガチャガチャしながら『何で開かないの!?』とか言ってるカエデ…さて、家に帰って寝よう。

 仕事サボったんか?まぁ良いや、帰ろう。


 すると家の中からさっきの玩具マイクを使った叫び声が聞こえた。

 

『ゴムは絶対してるっす!ピルも飲んでるっす!』


 いや、そういう話じゃねぇから。


※6話ぐらいで終わると思い…ます?

 

 


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