第21話 チャンネル登録者数20万人超えてた
「わぁ~、これが配信で言っていた聖遺物なんですね」
荒木さんが聖遺物を見た後、部屋に入って来た謎の女性が聖遺物を近くで見ていた。
「取り乱してすいません……」
荒木さんが汗を拭きながら、俺に謝罪した。
「ねえねえ、皆川君!この聖遺物持ってみてもいいですか!?」
「えっ?ご、ご自由にどうぞ」
いきなり初対面の女性に名前を呼ばれたので、少し困惑してしまう。
荒木さんと仲良さそうだし、この人も俺がデルタだと知っているのだろうか?
「ありがとうございますぅ!では、早速……」
「佐々木ちゃん、ずるいぞ!僕はまだ触ってないんだぞ!?」
すると佐々木ちゃんと呼ばれた女性は聖遺物を持って、じっと見ている。
「す、すごい武器……」
「僕にも持たせてくれ!」
「ダメですよ!今は私の番じゃないですか!」
「クソッ!遠慮せず僕も触っていいか聞けばよかった……」
たかが聖遺物くらいでこんなにはしゃげるとはな……。
この人達に、異世界で拾ったもっと強力な聖遺物がアイテムボックスの中に500個くらいあると言ったら気絶するかもな。
「そうだ、皆川さん」
荒木さんは先ほどとは違い、真剣な顔で俺を見る。
「この聖遺物なんだが……良かったら売ってくれませんか?こんな貴重なもの売ってくれというのは大変申し訳――」
「いいですよ」
「ですよねやっぱり……いいんですか!?」
荒木さんは目を見開いて、大きな声を出す。
「色々して頂きましたし、差し上げますよ」
たしか効果は『吸血鬼系統の魔物に対して与ダメージ+20%』だっけ?
使い勝手が悪すぎるし、+20%という微妙な数字。
正直、はずれの部類に入ると思う。
まあ★4ダンジョンでドロップする聖遺物なんてこんなものか。
「えええぇぇぇ!!ほ、本当にいいんですか!?」
「はい」
「協力感謝致します。佐々木ちゃん、その聖遺物を鑑定部に見てもらってくれ」
「了解です!」
佐々木さんはビシッと綺麗な動きで敬礼した。
「その代わりこの魔石は買い取ってもらえますか?」
俺はアイテムボックスから★4ダンジョンコアが魔石に変化したものを出す。
「これはまた見たこともない大きな魔石ですね……」
そのサイズはボウリングの玉のもう一回り大きなサイズの魔石を荒木さんに渡す。
「このサイズの魔石は初めてなので、これも鑑定部に渡して、後日振込させて頂きます」
「分かりました。ところでこの女性は誰なんですか?」
「紹介がまだだったね。この子も君がデルタだという事は知ってるよ」
やはりこの人も俺がデルタだという事は知ってるみたいだ。
「は~い。初めまして、皆川君!私は
そう言って女性は俺に握手を求めて来た。
「初めまして、皆川悠真です」
俺は佐々木さんの手を握る。
「やったぁ!デルタ様と握手しちゃった!」
佐々木さんはその場でぴょんぴょんと跳ねた。
その時、大きな胸が上下に動いていたのを俺は見逃さなかった。
スーツの上からでもわかるこの大きさ……只物ではない!
「佐々木ちゃん落ち着いて。すまない、この子は君のファンなんだよ」
こんな可愛い子が俺のファンなのか!嬉しいな~。
「デルタ様の配信を見ているとわくわくします!」
「ただ普通に戦いながら解説してるだけなんですけどね」
ネットだけじゃなくリアルで反応をもらえると嬉しいよな。
モチベーションになるわ。
「ごほんっ。それともう一つ、あのダンジョンの周りにいたマスコミ達だが……」
荒木さんは空気を変えるようにわざとらしく咳ばらいをした。
「そうですよ!あれは何なんですか?」
「実はあるテレビ局が君の配信を取り上げてね。そのせいで君は良くも悪くも有名人になってしまったんだよ」
有名になることは悪い事だけではない。俺のチャンネルが伸びるし、収益も出る。
しかし、その一方でいろんな人に絡まれたりすることも多くなるだろう。
「なるほど。まあしょうがないですね」
俺はスマホで自分のチャンネルを確認する。
チャンネル登録者数は約23万人で今日の配信はすでに200万回以上再生されていた。
こ、この前見た時と比べて2倍くらいになっている……。
「まだ君の配信を嘘だと思っている人が大勢いるから、チャンネル登録者数と知名度が釣り合っていないのだろう。今日の配信でほとんどの若者や探索者達は『デルタ』という配信者を認知したはずだ」
それは願ったり叶ったりだな。
早く俺に楽させてほしい。
「僕達もきみの正体がバレないように裏で手を回すつもりだ。このくらいの事はさせてくれ、聖遺物も貰っちゃったしね」
有名になっても普通に暮らせるように仮面を付けて配信しているんだ。
ダンジョン協会という大きい組織が、俺の正体がバレないように動いてくれるのはかなりありがたい。
また聖遺物見つけたら、あげるか。
「ありがとうございます。助かります」
「さてそろそろ暗くなってきたし、これ以上僕たちに付き合わせるのも申し訳ない。この辺で皆川さんは帰って頂きましょう」
荒木さんは窓の外を見て、そう言った。
「では俺はそろそろ行きますね。また何かあったら電話してください」
「これからもよろしく頼むよ」
明日も学校だし、早く帰ってゆっくり休もう。
◇
「と思ったけど、お金が一円もなかったわ」
ということでデルタの格好をして、練馬ダンジョンに来ました。
ダンジョンキャンプの中で適当に換金しよう。
ダンジョンキャンプの入り口に立っていた男に探索者カードを見せた。
「あ、あなたは!どうぞお入りください!」
この人も俺の事知っているのかな?
俺も有名になったもんだぜ……。
「どうも」
そう言って俺はダンジョンキャンプの中に入ると、探索者の姿はほとんどなかった。
さすがにこの時間からダンジョンに入る人は少ないのだろう。
「換金所、換金所……」
ダンジョンキャンプ内を歩きながら換金所を探す。
「あーーー!あなたってデルタさんですよね!?」
「ん?」
すると見覚えのある赤い髪の女性が話しかけて来た。
「君は確か……」
その子は俺が電気屋で配信用ドローンを買う時にアドバイスしてくれた子だった。
「え?私の事知ってるの?」
「い、いや知らないよ」
「いきなりこんな事言うのも何なんですけど……」
そう言ってその子は俺のローブを軽くつまんで引っ張った。
「今から私と配信でコラボしませんか?」
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