第17話 吸血鬼の城
大きな城門をくぐり、ダンジョンの中に入る。
中に入ってすぐの所にはダンスホールのような広い部屋があった。
床には赤い絨毯が引かれており、高そうな装飾がいくつもある。
・西洋の城みたいだな
・こんなダンジョン見たことないぞ!?
・この装飾持って帰って売ろうぜ
「ダンジョンの中にある物を外に持ってきても、すぐに蒸発するので意味ないですね。ちなみに経験談です」
・経験談かいww
・【悲報】デルタ、泥棒だった
異世界でダンジョンに潜ってた時に何度も試したがすぐに煙に代わってしまい、売ることはできなかった。
「ダンジョンから持って帰れる物は2つあります。一つは魔物からドロップする魔石ですね。あともう一つは……、これは後から説明した方が分かりやすいですね。先に進みましょう」
・魔石以外にも持って帰れる物あるの?
・いや聞いたことないぞ
・また新しい情報か?
俺が足を一歩踏み出すと、ダンスホールのドアが全て開き、中から黒色の羽が生えた魔物の群れが出てきた。
その群れは空中で、渦を巻くように動いたり、密になったり疎になったりしていた。
・これ全部魔物なのか?
・やべぇよ……やべぇよ……
・これ新種の魔物じゃね?
「さて、まず最初の魔物はジャイアントコウモリの群れです!その数約500匹!」
俺は両手を広げながらカメラに向かって話す。
その魔物の正体は一匹一匹が人と同じくらいのサイズの蝙蝠だった。
ジャイアントコウモリはダンスホールの中を飛び回りながら高い鳴き声を上げている。
・この数どうやって倒すんだよ!
・これはさすがに無理ゲー
・デルタ様!お願い、死なないで!
「なんで負けるのが確定してんだよ……」
俺はコメントを見て、呟く。
「正直★3まではチュートリアルです。★4からは今までのダンジョンとは少し違う点がいくつもあります」
・違う点?
・★3がチュートリアル!?
「つまり★4ダンジョンからが本当のダンジョンというわけです。まずこのような魔物の群れの対処法ですが……」
俺はアイテムボックスから鉄のロングソードを取り出す。
ロングソードを構えて魔力を流す。
【スラッシュ】
俺は剣を振ると魔力で出来た斬撃が魔物の群れに向かって飛んでいく。
斬撃は群れの中を進んでき、ダンジョンの壁に大きな切り傷を付ける。
切れたジャイアントコウモリが地面にぼとぼとと落ちる。
「今の攻撃で倒せたジャイアントコウモリは約20匹ほど。つまりこのように切っていても埒が明きません」
「「「キィーーーーー!!!」」」
攻撃されて怒ったジャイアントコウモリの群れが俺に向かって飛んでくる。
「ではどうするのか?簡単です」
俺は剣を腰に帯刀し、両手を前に出す。
【
両方の手を中心とした魔法陣が描かれ、そこから赤い粉が噴射されてダンスホールの中を漂う。
【ファイアボール】
俺はその粉塵に向かって小さな火の玉を打ち込む。
ドドドドドドーーーーン!!
すると何度も粉塵爆発が起こり、ダンスホールの中は猛烈な爆発音で包まれる。
しばらくすると爆発は収まった。
ダンスホールを包む煙が晴れると、地面を埋め付くほどのジャイアントコウモリの死体だけが残った。
「ふぅ……。まあこんな感じで、広範囲の魔法で片付けるのがいいと思います。一応どちらの魔法も比較的、魔法使いなら誰でも使える魔法ですのでぜひ使ってみてください」
・あの数のコウモリを一瞬で倒した!?
・火力えぐすぎ
・確かに誰でも使える魔法だけど、規模が違いすぎる
「皆さん知っていると思いますが、スキルと魔法は違います。スキルは先天的に持っているもの。魔法は練習すれば誰でも使えるようになります。しかし、職業やステータスの差によって習得まで時間がかかったりしますけどね」
俺はカメラの前で説明して、ダンジョンの先に進む。
ダンスホールの階段を上った所にある両開きのドアを開けると、大きな机で食事しているガリガリの吸血鬼が六匹いた。
真っ白な顔で口から牙を生やしている。
耳は長く、先が尖っていて明らかに人間ではないことが一目見て分かる。
「「「っ!!」」」
俺に気付いた吸血鬼達は急いで立ち上がり、俺を睨みつける。
「2階の魔物は吸血鬼ですね。強さは大体この前戦ったオーガと同じくらいですね」
・吸血鬼なんて魔物初めて見た
・★3のボスと同じ強さの魔物が六匹も……
・このダンジョンAランク探索者が2パーティいてもきついんじゃないか?
・それをたった一人で攻略する男
吸血鬼の一人が俺に飛び掛かってくる。
俺はそれをひらりと躱し、首を切る。
「吸血鬼はこう見えて防御力が高いので、それを貫通できる攻撃力がある場合は首を切るか心臓を刺して倒しましょう。それ以外を攻撃してもすぐに回復してしまいます。もし無理なら……」
【
俺が魔法を三匹の吸血鬼に掛ける。
「「「ギャアァァァ!!」」」
【浄化】の魔法を掛けられた吸血鬼達は体をかきむしり、悲鳴を上げる。
「状態異常を直す【浄化】の魔法を使うとこんな感じで苦しみます。★4から出現するアンデット系の魔物には有効な手段なので是非覚えておいてください」
・回復魔法って魔物にも掛けられるんですね!
・吸血鬼はアンデット系の魔物なんだな
・前々から思ってたけど、何でこんな事知ってんだよ
残り二匹の吸血鬼は俺を見てブルブルと震え始める。
そんな吸血鬼達の首を素早く切り、倒す。
六匹の吸血鬼の死体は煙を出しながら蒸発していき、そこからボーリングの玉ほどの大きさの魔石がドロップした。
「魔石は無視して先に進みます」
・は?
・もったいない!
・全部で100万以上はするぞ……
この魔石を換金すると正体がばれてしまうので拾っても意味無いからな。
俺はさらに上の階に進むと、金の装飾された大きな扉があった。
「おっ!ボス部屋ですね」
・ついに来たか……
・★4ダンジョンボスはどんな魔物かな?
世界初の★4ダンジョンボスを視聴者も楽しみにしているみたいだ。
俺はドアを開けて中に入る。
「ん?」
広い部屋の真ん中には椅子が一つ置いてあり、そこには赤い液体が入ったワイングラスを持った吸血鬼が座っていた。
その吸血鬼は俺に気付くとニヤリと笑い、立ち上がる。
「……」
俺たちはしばらくお互いをじっと見つめる。
すると吸血鬼が丁寧に俺に向かって頭を下げた。
・この魔物、知性があるのか?
・綺麗なお辞儀やな
・今までの魔物と何か違うな……
「なるほど……。今回のボスは『レッサーヴァンパイア』です。意外と手強いので注意してください」
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