第16話 世界初の★4ダンジョン
俺はドローンのスイッチを入れて、配信を開始する。
「さぁ、皆さん!こちらが世界初の★4ダンジョンでございます!見た目は小さな城っていう感じですね」
意気揚々とカメラの前に向かって喋る。
家の近くに★4ダンジョンが出現したのは好都合だったので、すぐにこうしてやって来た。
「見てください、このダンジョンの入り口には★が4つ描かれてるでしょう?間違いなく★4ダンジョンになります!」
・デルタが動画で言ってた事ってガチじゃん!
・★4なんてマジであったのか……
・デルタ様~~!!早く攻略して!!
世界初の★4ダンジョンを見た視聴者は次々とコメントを書く。
ふふふ……。俺が前々から言っていた★3よりも難易度が高いダンジョンが出現したのだ。
これで俺が発信している情報の
・【1000円】応援してます!絶対に★4ダンジョン攻略配信して下さい!
「こ、これはまさか……スーパーチャット!?」
初めて自分の配信に色の付いたコメントが流れたので、思わず後ずさる。
1000円あれば2日間はご飯が食べられるぞ!
「ごほんっ!ダンジョン攻略についてはダンジョン協会との兼ね合いがあるので、今からは行けません。もし機会があれば★4ダンジョンで気を付ける事などを配信出来ればいいなと思って――」
ブー
その時、スマホの通知が鳴った。
「あっ!ちょっと待ってくださいね」
俺はスマホを開くと知らない番号からメッセージが来ていた。
『初めまして、私はダンジョン協会の者です。★4ダンジョンについて今からお電話致しますので、必ず電話に出るよう協力お願い致します』
ダ、ダンジョン協会!?
「す、すいません!カメラとマイク一旦オフにします!」
俺はドローンのカメラとマイクをオフにするとすぐに電話がかかってきた。
「はい、もしもし」
『初めまして、私はダンジョン協会日本支部の支部長をやっております、荒木と申します』
「は、初めまして」
し、支部長!?どうしてそんな偉い人が俺に電話を?
ダンジョン協会には世界各地に支部があり、日本の支部長とはつまり日本全てのダンジョンや探索者達を管理するめちゃくちゃ偉い人というわけだ。
『急にお電話してしまってすみません、皆川悠真さん。いや、この場合デルタさんと言ったほうが正しいですかね?」
「っ!!」
ば、バレている!しかもよりによってダンジョン協会に見つかるなんて最悪だ!
俺はダンジョン協会にこき使われて、一生自堕落な生活が出来なくなるのか……。
『皆川さん?』
嫌だ!俺はゆっくりDanTubeを見ながらゲームをして、貯金が足りなくなったらダンジョンで小銭を稼ぐような半分ニート生活を送りたかったのに!
『皆川さん!』
終わった……。
こうなったら日本から出て海外に逃げるしかないのか。
俺英語とか全くわからないけどこれからやっていけるのだろうか……。
『皆川さん!!』
「は、はい!」
俺はスマホから聞こえた大きな声に思わず返事してしまう。
『どうかしましたか?さっきから何度も呼んだんですけど……』
「す、すいません。つい考え事をしてしまって」
『いえ、構いません。早速本題ですが、今回お電話したのはある要件をお伝えしたからです』
「ある要件?まさか俺を奴隷のように扱い、死ぬまでこき使うんじゃ……」
『奴隷?あはははっ、いやまさかそんなはずないじゃないですか。まあ配信の件などはまた後日ゆっくり話をするとして、今回の要件は皆川さんの目の前にある★4ダンジョンの事です』
俺は荒木さんの言葉を聞いて、ほっと胸を撫で下ろす。
「★4ダンジョン?」
俺は電話で話しながら、目の前にあるダンジョンを見る。
『そうです、単刀直入に聞きます。皆川さん、今から★4ダンジョンを配信しながら一人で攻略できますか?』
「……」
はたしてこの人をどこまで信用してもいいのだろうか。
俺は返答に迷ってしまい、しばらく荒木さんの言葉に答えずに沈黙する。
『皆川さんは何が目的でこのような配信をしているかは分かりません。ただ一つだけ言えるのは我々ダンジョン協会は、あなたの持つ知識と非凡な実力を認めていますし、お互いに友好的な関係を結んでいきたいと思っております』
「友好的な関係……」
『きっと正体を隠しているのにも事情があるのでしょう。もし我々に協力して頂けるなら我々も皆川さんを全力でサポート致します』
正直、ダンジョン協会と関わると面倒ごとも多くなるだろう。
しかし日本の支部長との繋がりを作れるのはかなりでかい。
『改めてお聞きします。皆川さん、今から★4ダンジョンを配信しながら一人で攻略できますか?』
俺は覚悟を決め、深呼吸をする。
「できます」
『そうですか!ありがとうございます!本当は色々な手続きを踏んでから攻略になるのですが、今回は特例で★4ダンジョンを攻略してください。全責任は私が持ちます』
「わかりました。できるだけ他の探索者にも役立てるように詳しく解説していきます」
『助かります。それではご武運を』
荒木さんはそう言うと電話を切る。
「さて、やるか」
俺はカメラとマイクをオンにする。
「みなさんに朗報です!なんと特別にダンジョン協会が許可してくれたので、今から★4ダンジョンを攻略していこうと思います!」
・うおぉぉぉぉぉ!!!
・ダンジョン協会ナイス
・★4ダンジョン突撃じゃあぁぁ!!
俺の言葉にコメントは大盛り上がり。
同時接続数も12075人になっていた。
「それでは世界初★4ダンジョンにレッツゴーー!!」
そう言うと俺は数多くの視聴者達に見守られながら★4ダンジョンに足を踏み入れた。
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