子供らしさ

「お母さん、俺決めたんだよ!夢を、持たなきゃいけないって思ったんだ。」

「おかしいって思うことだって周りの認識から少しずつ解いていくことができたらいつのまにか世界がそれを普通として認識してくれるようになるんじゃないかって思うんだ。」



「急にどうしたのよ?」



「香水は本当にごめんなさい。でも、俺は香水で少しだけ大人になれた気がした。楽しかったんだよ!いつもより学校がね。それなのになんでそれを我慢しなきゃいけないの?」



「アントワーヌ………?」



ステージの上で堂々と語るあの姿、胸や背中全てが俺にとっては本当の大人に見えた。夢を持たず、意見を持たずに周りに流されるような人々よりも俺はそんな人を大人だと信じていたい。


いつだって。



「俺はパリで1番のスターを目指す。誰かの胸の中で輝き続ける本当の大人になりたいんだよ!」



「………香水、実はまだ予備が何個かあるのよ。アントワーヌに1つあげるわ。好きに使いなさい。」



「え!?ほんとに!?いいの!?」



「いいよ。でも一つだけ約束してちょうだい。」

「………大人を履き違えないようにね。」



その言葉を理解することは出来なかったが、別に無理に理解しなければいけないほど深い意味はないだろう。そんなことより明日からの学校が楽しみでしょうがなかった。


 ◆

「アントワーヌッッッ!!!」



「なんですか先生、そんなに声を張り上げて。」



「その香水をどうにかしなさい!」



「なんでですか?」



先生は机を叩いて教室に響くほどの大きな音で俺を威嚇して説教をする氷のような空気に一瞬で変えてきたが、俺はそれをのらりとかわすような返事をした。



「明日は絶対につけてくるな!」



 ◆

「アントワーヌッッッ!!!なんだこの匂いは!!」



「すいませーん。」




「アントワーヌッッッ!!!!」



「はいはい」



「アント、、ワーヌ、」



「だからなんなんすか!」



「もういい加減にしてくれよ………なんで分かんないんだよ。香水をつけるなって言っているだけだろ。」

「お前はついこないだまで真面目な生徒だったじゃないか、なぜ香水をつけ始めたんだ。」



「おかしくないですか?先生だって香水つけてるじゃないですか。なんで生徒はダメなんです?」



「大人は大人らしくいなきゃいけないんだよ。アントワーヌのような学生は大人じゃないからダメなんだ。」



「ルールは同じコミュニティの中にいる人たちは全員が守るべきだと思います。それが出来ないならば俺たちにだってそのルールを無くして欲しいです。そう思うのは、当然じゃないですか?」



「校則を守るんだ、それに意味がある。」



「大人が大人らしくいなければないなら、なぜ子供には制限をかけるんですか?先生。学校で恋愛をしちゃダメ、勉強は1日必ず3時間はしなきゃダメ。」

「子供にも子供らしさを守らせてください。子供だって大人になりたいんです。その憧れを簡単に潰して欲しくないんです。」



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