第3話 団体乱立、ぼやぼやしてたら後ろからバッサリだ

 第二次UWFが躍進しているころ、他団体はどうだったのか?

 前田日明まえだ あきらら人気選手の離脱痛かったが、元々タレントが豊富な新日本プロレス、初めから居なかったかのように立て直すのも早かった。

 なんと言っても後々の大黒柱になる武藤敬司むとう けいじ蝶野正洋ちょうの まさひろ橋本真也はしもと しんやの闘魂三銃士の存在は大きかった。

 まぁ、初回の凱旋帰国直後はみんなショッぱくて、しくじるんですけども(笑)

 結局三銃士は二度目の海外遠征を経て、それぞれがステータスを上げて帰ってくることになります。

 特に武藤は大化け。世界を震撼させた大ヒール、グレート・ムタを引っ提げて帰国。

 頻繁に登場させず、大一番で出現させることで、海外に負けない人気を得るようになりました。

 そして忘れちゃいけないのは、ある覆面レスラーの誕生。

 大人気漫画家の新規アニメ作品とのタイアップで生まれたそのレスラーは、原作を越え、日本のみならず世界中で名声を得、レジェンドと呼ばれることになります。

 一九八九年四月東京ドーム大会で、颯爽とデビューした彼の名は、獣神じゅうしんライガー!

 当時、ジュニアヘビー級の本場と呼ばれるメキシコでも見かけなかった全身タイツのコスチューム。

 伸縮素材とは言え動きを制限されるはずだろうに、それを感じさせないほどの躍動感と、覆面で見えないはずの表情を全身で表すファイトは人々を魅了した。 

 ライガー→ファイアー・ライガー→サンダー・ライガーと進化を続けたのち、二〇二〇年一月、三十年余りの現役人生を全うし引退。

 彼が成し遂げた数々の偉業。

 所属新日本のIWGPジュニアヘビーチャンピオン、同階級のタッグ選手権者。

 NOAHをはじめとする国内他団体のジュニアヘビーのシングルとタッグのベルト。

 国外ではWCW、NWA、CMLLなどのメジャー団体の軽量級の王者に。

 新日主催のジュニアヘビートーナメント、TOP OF THE SUPER Jr、BEST OF THE SUPER Jr.でも複数回の優勝を誇る。

 団体の壁を越えたジュニアの祭典スーパーJカップ。牽引者となったのも彼。

 きっかけはジュニアでしたが、その後はヘビー級も他団体に参戦することが多くなっていきました。団体間の垣根を崩したのは間違いなくライガー。

 彼がいなければ、国内のプロレス団体があれほどまで交わることはなかったではないでしょうか?


 さて、国内メジャー一方の雄である全日本プロレスは、活況の元であった天龍源一郎てんりゅう げんいちろうが突然の団体離脱、新興団体SWSへ。

 一転して窮地に。

 それを救ったのは虎の仮面を脱ぎ捨てたあの男でした。

 二代目タイガーマスクだった三沢光晴みさわ みつはるが、最強の男・ジャンボ鶴田つるたの前に立つ。

 鶴田・三沢戦、あるいは鶴田の正規軍対三沢グループの戦いは全日のゴールデンカードとなり、全日もかつての熱狂を取り戻します。

 外国人選手の充実度は新日以上だったかも。

 個人的にこの時期のブリティッシュブルドックス(ダイナマイト・キッド&ディビーボーイ・スミス)対カンナムエキスプレス(ダニー・クロファット&ダグ・ファーナス)、ジョー&ディーンのマレンコブラザース戦なんて、超ハイクオリティでした。

 前回でもあげたように、興行としてのパッケージングが見事で、幅広い年齢層に受け入れられるプロレスをしていました。

 が、好事魔多し。絶対の存在であった鶴田が病気で戦線から離れ、全日はまたしても窮地に。

 そして鶴田は治療のために赴いた異国の地で還らぬ人に……合掌。

 鶴田亡き後も三沢を中心としたユニット抗争で全日は戦い続けました。

 いわゆる「四天王プロレス」が確立し、受けの全日本を体現した戦いの数々は、筆舌しがたく、一度見てください見りゃわかるの連続で、プロレスラーの凄味とはこういうものかを見せつけてくれた。

 が、団体創立者で象徴でもあったジャイアント馬場ばばがこの世を去り、団体エースだった三沢が後を託されることになる。

 しかし、その三沢自身が全日と袂を分かちます。

 馬場夫人・元子さんとの関係の悪化から、川田利明かわだ としあき以下数名のレスラーを除いた、選手・練習生・スタッフらが全日を退団、三沢と合流することに。

 全日解雇後わずか半月で、三沢は新団体NOAHを立ち上げます。

 団体名を正式発表する前に、プロレスマスコミに「新団体名はNOAH」とかリリースされまくってたり、在籍中から準備万端だったのがわかりますなぁ(笑)

 ……NOAHって、割とクリーンな印象があるけど、立ち上げ時とか見てると全然そんなことないよね~(爆)

 それまで全日本を中継してた日本テレビが、あっさりNOAHに乗り換えたりとか、じっくり練られたクーデターだったんだよなー(苦笑)


 振り返れば、新生UWF誕生後はインディペンデンス団体が乱立していきましたっけ。

 全日本を引退していた大仁田厚おおにた あつしが復帰して作ったFMW。

 全日本の乱が起きたきっかけともいえるメガネスーパーのSWS。

 SWS崩壊後に天龍が起こしたWAR。関節技の鬼・藤原喜明ふじわら よしあきのプロフェッショナルレスリング藤原組と、さらにそこから分裂し船木誠勝ふなき まさかつ鈴木すずきみのるらが立ち上げたパンクラスに、藤原組直系ともいえる石川雄規いしかわ ゆうき池田大輔いけだ だいすけらの格闘探偵団バトラーツ。

 日本初の本格ルチャリブレ団体のユニバーサルプロレスリング。ユニバからの脱退組が作ったみちのくプロレス、そこから派生の大阪プロレスとか、闘龍門(現 DRAGON GATE)などなど。他にもまだあるけどとても網羅できない(笑)

 多くは消えていきましたが、しぶとく生き抜いている団体もあったりして、インディー魂、今だ消えずです。


 さてさて、箱舟NOAH出航後、日本のプロレスは再び二強時代へ。

 新日を出た武藤敬司が全日に移籍して社長になったり、長州力がまた団体興してすぐぼしゃったりとか、SWSの残り火ハッスルの閃光とか、二千年代に入っても、なかなかににぎやかしいのですが、この頃、私は全く別の次元を目撃することになります。

 偶然つけていたCS放送から流れてきたを観たことで、私の中の価値観がひっくり返ることとなります。


 次回、黒船襲来。アメリカン・プロレスWWEとの邂逅です。

 続く。

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