第6話 猫と死の魔法使い

ジャックが制止した先の部屋には、今さっきホワイトスカートに入団した3人がいた。

3人とも体の穴という穴から血が吹き出して

見るからに死んでいた。そして部屋の真ん中には、ブルースの杖が粉々になっていた。

「ジャック!お前ら何した!」猫は怒鳴った。

ブルースはショックで声も出ないようだ。

「えっとその杖がいきなり暴れて、3人を刺殺したんです…」ジャックがオドオドと猫達に言う。「ブルース…」猫はかける言葉が見つからなかった。

「この3人は仲間か?」ブルースが猫達に聞く。

「今さっきブルースさんと共に連れてきた人達です」パンプが恐る恐る言う。

「コイツらお前らを殺す気だったみたいだぞ」黙っていたブルースが語り出す。

「何だって!?今さっき仲間になったばかりだぞ」猫が驚く。「さっき言ったように俺の魔法は殺意に反応する。杖だって同じさ。強い殺意に反応したんだろう。で、操縦する俺がいないから暴走したんだ…」その場の全員、息を呑んだ。あんなに危害の無さそうな3人が自分達を殺そうとは、全く想像もしなかった

からだ。

「なぁ、その事にもびっくりだが、お前の杖…直るのか?」

猫はブルースに不安げに尋ねる。

「少し見てわかったが、もう魔力が

すっからかんだ、直そうにも最低でも5年はかかる」

ブルースは静かに言った。

「でも、大丈夫だ、あの杖はゴミを集めて

毎日毎日魔力を込めて作ったものだ。

元々魔力がこもってる素材から作って

従えたほうが手っ取り早い」

ブルースは思ったよりショックを受けてなかったようだ。

「とにかく杖を早く直さないとな、

この3人の事も気になるがそっちはジャックに任す。とにかくシナモンに話してこよう」

ブルースは承諾し、皆でシナモンのところに向かった。

「どうした、通夜みたいな顔して」

シナモンに今あった出来事を話した。

「そうか…あの3人の事は俺とジャックで

何とかする。お前らは杖を直しに行ってきてくれ。それとついでに杖が完成したら、

そのまま、ブロ共和国の派閥に偵察に行ってくれ、あの3人が何者なのか分かるかもしんからな」

シナモンは驚きと怒りが入り混じった顔をしながら、猫達に命令した。

「わかったが偵察って何をするんだ?」

ブルースが聞く。

「杖が完成したら伝える。とにかくブルース、

お前は杖がないと戦力外だ。

ブロ共和国に着いたら連絡してくれ」

シナモンはそれだけ言うと、ジャックの所へ向かった。

「シナモンに言う通りだ、俺は杖がないとほぼ戦力外だ。だから、早く行こう」

ブルースはシナモンの言葉に結構傷ついたようだ。

「でも、直すたって、どこに行くんです?」

パンプが尋ねる。

「俺の兄弟のところに行く。魔法の国は

ブルースカートに占拠されてて、多分俺らを見た瞬間に蜂の巣だ」

猫とパンプは頷いた。

「兄弟の所ってどれくらいだ?」猫が聞く。

「魔法の国「ゲルスト」の近くだからB地区

から半日あれば着くな」ブルースが答えた。

「車で行くか?ガソリン買う金はないけど」

猫は車では行けないと間接的に言う。

「車だって!?ハハハ!俺は魔法使いだぞ

箒で半日って言ったんだ」

猫達は笑ってなかった。

「僕たちは魔法が使えないんですけど」

パンプがキレ気味に言った。

「そんな事は知ってる、俺がお前らを乗せてくんだよ」ブルースが反論した。

「箒なんて1人しか乗れねぇだろ」

猫もキレ気味だ。

「俺の箒を知らねえからそう言えるのさ」

そういうとブルースは叫んだ。

「カムバーーーク!!」

遠くから何か音がする。猫達は眺めた。

音は大きくなり、何が来ているか見えた。

「バイクだ」「バイクじゃん」猫とパンプは

思わず言った。

ブルースの言う箒(?)が目の前に着地した。

その箒は真っ黒でメタリックなボディに巨大なタイヤが二つ、エンジンの大きさはパンプと同じくらいだった。

「俺の愛箒だ。この大きさなら全員乗れるだろ

俺だって杖は無くとも魔法使い。

映画でできそうなことは一通りできる」

猫とパンプは唖然としていた。

「それで空飛んで行くのか?」猫は嬉しそうだ(猫はバイクが好きだ)

「そうさ、俺の魔力なら余裕を持って着ける」

ブルースが箒のハンドルのある所に乗った。

「お前らはここだ」そうブルースが言うと

ボディから皮の椅子が出てきた。

「かっこいいな」パンプも見惚れてるようだ。

「よし!行くぞ!さっさと乗れ!」

2人は促され、ボディに傷つけないように箒に乗った。

箒はけたたましいエンジン音と煙たくなるような煙を吐きながら勢いよく空に飛んだ。

「すげぇ!俺さ空飛ぶの初めてなんだ!

興奮するな!」猫は大興奮のようだ。

「そういえばさブルースさんの兄弟も魔法使いなんですか?」パンプが箒酔いをしながら

聞いた。

「あぁそうだな、俺の住んでた国の奴らは全員

魔法使いだぜ」ブルースが箒をふかせながら答える。

「魔法使いって話でしか聞いたことなかった

から、今になって新鮮だな」猫も混じってきた。

「俺だって、猫とカボチャと話すなんて考えてもなかったな」ブルースも答えた。

「俺はB地区から出た事がないから、他の国の

事を少ししか知らないだよな〜」

猫は席にもたれた。

「僕もずっと兵器をカボチャ大帝国で作り続けてたから他の事は知らないな」

ブルースは2人に驚いているようだ。

「じゃあ、そんな状態で他の国の派閥と戦う気だったのか!?」

声を上げたブルースに2人は言う。

「今はシナモンに従ってるし、ここの戦力は

お前も入る事で底上げする。他の事なんか

知らなくても全然余裕さ」猫は余裕そうだ。

「まぁ確かに、猫はキャンプタワーをパンプと制圧したからな。でも、少しは知ってた方が良いぞ。シナモンが言ってた「ブロ共和国」は名前の割にかなり好戦的だ。

それにあの国に近づいた奴らは皆んな

行方不明になっている。気をつけろよ」

ブルースは慎重そうだ。

「お前、何でずっとキャンプタワーにいたのにそんな情報知ってんだ?」猫は聞いた。

「俺の耳や目は兄弟と共有されてるんだ。

そこで情報を得たりあげたりするんだ。

今の状況も兄弟は知ってると思うぞ」

へー、と猫は相槌をうった。

「着いたら起こして」「じゃあ僕も」

猫とパンプはブルースの真面目な話に耐えきれず寝てしまった。

「マジかよ」ブルースは不安になった。


10数時間後「着いたぞ!起きろ!」

猫とパンプはブルースに叩き起こされた

「ふぁ〜あ、やっとか、しっかり10時間睡眠したせいで頭いてぇ」猫はあくびしている。

「…」パンプは何も言わない。まだ意識は夢の中なんだろう。

「この小屋がお前の兄弟の家か?」

ブルースは猫に何も言わず、小屋に入って行った。

「兄さん、戻ったよ」ブルースが話しかけた先には兄らしき人物がいた。

そいつは体の所々が輪切りになっていて切られた所が浮いている。そして頭から、いや

頭が炎だった。

「紹介する。俺の兄、「レズ」だ」

ブルースは何故か緊張していた。

「ブルース、この家のルールを忘れたか。

むやみに人を連れ込むんじゃあない!」

レズは怒っているようだ。

「兄さん、状況でわかるだろ?」

ブルースはレズに言い返す。

「とりあえず、そこの猫とカボチャは外で

待ってろ」

そういうとレズは小屋の扉を閉めた。

「いきなりこれかよ、なぁパンプもいい加減

起きろ!」

猫がパンプを引っ叩く。

「うわぁ!なんですかいきなり!」

パンプは目を覚ました。

「お前が起きないからだ」

猫はタバコを吸っている。

「あれ、ブルースさんは?」

パンプが辺りを見渡す。

「兄貴と話してるよ俺たちは入るなってさ」


十分後

「終わったぞ」ブルースが出てきた。

「悪かったな、兄さんはよそ者が嫌いなんだ。

事情を話したんだがここにはないらしい。

全てブルースカートに盗られたんだとよ」

残念そうにブルースが語る。

「それは残念だが、ブルース、お前の兄貴は何をしてる奴なんだ?体が変だったぞ」

猫は普通に失礼な事を聞いた。

「兄さんは杖職人だ、体は生まれつきあんな風だ、作ってもらおうと来たが無駄足だったな、これからどうしようか」ブルースは困っていた。

「盗まれたんなら盗み返せばいい」猫が言った

「ゲルストに行く気か?それは無理な話だ

あそこはキャンプタワーの何倍も強いんだ

勝てるわけがない」

なブルースが否定する。

「何も真正面から行こうって話じゃない、

盗むんだ、お前の故郷なら何がどこにあるか分かるだろ。隠れて盗めば大丈夫さ。

素材を見つけたらお前の兄貴に渡す、これでいいだろ?」猫は笑って言う。

「盗むたってそんな事、バレたとしたら戦争になるぞ」ブルースは話を聞いてくれなかった

「ブルース、お前は強いだろ。戦争になってもお前が居れば100人いや1000人力だ!

たのむから協力してくれよ」

猫は懇願する。パンプは寝ぼけている。

「ん、わかった…でも、条件がある!

猫とパンプ、お前らは来るな」

猫は何言ってんだという顔になった。

「何言ってんだ、1人はまずいだろ」

「お前らに道案内しながら行くのはリスクが

ある。慣れている俺が1人で行くのがちょうどいいんだ」

ブルースはそう言うと、何も言わずに行ってしまった。

「まぁ、アイツの言う通りだ、盗むくらい 

大丈夫だろ」

猫は少しの不安を残し小屋の前で待つ事にした。


十数分後

「おい!お前らぁ!」

レズの声だ。「なんだ、いきなり声上げて」

パンプも起きてしまった。

お前らを殺すと言ってるかのように

炎が赤かった。

「ブルースが!ブルースが!」

レズはパニック状態だった。

「とにかく落ち着け」猫はなだめた。

レズは深呼吸しゆっくり話し始めた。

「あぁ、そうだな、ブルースから聞いてると思うが俺とブルースの目と耳は共有されている。そして今、ブルースは…信者に捕まってるのが見える」

猫の不安は的中してしまったようだ。

「そうか…でも俺たちは武器を持ってない。

荒っぽい事は厳しいぞ」

猫とパンプは戦う事はないと、武器を全て

置いてきてしまったのだ。

「アンタは?アンタだって魔法使いだろ、

戦えるはずだ!」猫がレズに言う。

「俺は…無理だ…行けない」レズは弱々しく

言う。

「あそこにはもどれない、俺は無理だ!」

レズは頑なに断る

「俺達が行っても死ぬだけだ、アンタもお願いだ、手伝ってくれ。…ブルースが死ぬぞ」

猫は脅しを交えて提案した。

「でも…ん…はぁ、わかった」レズは決意を固めたようだ。

猫は安堵した。

「ありがとう…ブルースを助けよう!」

パンプは何が起こってるか分かっていなかった。

「でも、攻撃ができると言ってもこのまま

正面からはダメだ、変装して行こう」

そう言うとレズは青いスカートと白いフードを持ってきた。

「これを着て行こう、このまま行くよりは

いい」

猫達はレズの持ってきた変装を着た。

「よし!助けに行こう!」

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