第6話 竜種
力なく地面に転がるアルフレートには目も向けず、周囲の辺境伯領軍兵士たちに殺気を放っているのは見上げるほどに大きな一頭の魔物であった。
蛇の頭部と尻尾を持ち、人の胴回りほどに太い四本の足。
身体全体が獅子の金毛で覆われて、背中には亀のような甲羅がある存在。
それが【『混成竜』ペルーダ】であった。
シャーシャーと威嚇音を上げながら、自らの縄張りへと侵入してきた人間たちを縦長の瞳孔の瞳で睨みつける魔物は、下級とは言え紛れもなく
遠巻きにペルーダを取り囲む領兵たち。
いくら彼らが
その足元に転がっているアルフレートを助け出したいのは誰もが一緒ではあるが、ホイホイと近づけば防ぎようもないほどに強烈な攻撃を喰らうために打つ手がなかった。
一方でペルーダも、奇襲には成功したものの自分の姿を見て逃げまどっていた
「待てッ!ファン!」
そんな膠着する状況の中、制止する父親の腕を振り払ってドラゴンへと駆け出す男がいた。
すんでのところをアルフレートに生命を救われたファンだった。
「ファンがあそこにいるのに、糞兵士どもは何呆けてやがるッ!砕け【ポラリス】―――くるみ割り人形」
ファンが手にした【
持てる魔力を対価に、ファンは武器に秘められた権能を解放する。
『
「そこをどけやがれッ!糞ガメがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
自分がアルフレートに助けられたことを理解しているファン。
彼は、一刻も早くアルフレートを助け出さなければならないと気が逸っていた。
音で分かるが、あれほど強烈な攻撃を受けた以上、アルフレートが無事でないことは分かっている。
鋼鉄よりも堅固なはずのミスリルの鎧が粉々になっているのだ、『もはや手遅れではないか』という疑念が脳裏を過るも、アルフレートを一生助けていくと誓った者として、無二の親友として、そして、生命を助けられた者として、そんな不吉な言葉は決して受け入れることは出来なかった。
ファンがありったけの魔力を込めて、
だが、現実は無情だった。
ペルーダの甲羅は硬質な音を鳴らすと、呆気なく【
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
前話に一部手を加えています。
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