第49話 リコリア戦3
ゴーーーーー
そんな音と共に振ってきた炎は、着弾と同時にあたり一面を火の海に変えた。
「あっあっ・・・」
「がぎゃー!!」
「・・・」
「ごふっ・・・」
そこには阿鼻叫喚が炎と共に広がる。それは味方の兵士と異教徒が入り身だっている。
敵の魔導士は一点突破の為に仲間もろともに魔法を繰り出し、包囲の穴を作ったのだ。
僕の魔法内にいるのは数名の騎士と兵士と、魔道兵が3人。
その他は炎に焼かれ燃えつくされている・・・が炎があまりにも大きく回りの状態が確認できなかった。
先ほどまでの勇んだ勝ちへの気持ちは一気にそがれてしまった、魔法の被害を受けていない兵士達は、茫然と立ち尽くしていた。
「おっかねぇ・・・味方もろともかよ」
「ギレル様に聞いて神聖持ちの近くにいて助かったぜ」
「どのくらいの規模の魔法だこれは・・・」
徐々に炎が散っていくため、僕の魔力は持ちそうな事に安堵するが・・・
「うっ・・」
「これはひでぇ・・・」
炎の海が引いてき、魔法の後は散々樽物に、目を覆いたくなる光景が広がっていた。
人が燃えている。肌が焼かれ皮膚が焼け落ちている。
人によっては骨まで見えていたり、まだ息がある者は呻きをあげている。
それが100mほどの距離に広がりを見せ、僕らはその焼け野原の中にポツンと立っていた。
火の粉が舞い、熱で空気が揺らめいていた。
「ノエル君!解除からもう一度詠唱!!すぐに!」
「えっあっはい!」
そうだっ!ここからだ。魔法がなりを潜めたという事は敵がここに雪崩れ込んでくるという事。魔力を節約しなければ!
ベルトリウスさんのまたの言葉に助けられ、一度領域を解除する。
すると、熱が一気に僕らを襲いまるでサウナにいるような熱さと鼻を刺す臭いに、腕で鼻を覆った。
「助けて・・・助けて・・・」
「うぉーーーーいてーーーー」
「うっうっ・・・」
だが僕らを襲うのは鼻だけではない。先ほどまでは領域内にいたため音もある程度、遮断してくれていたのか魔法をとくと同時に一気に呻き声と助けを呼ぶ声が入り交ざったのだ。
即死した人の方がすくないのか、大半が生きているようだった。
味覚以外の5感、全てを刺激された現状でも・・・詠唱しなけば!
僕は聖なる領域の詠唱に入った。
「だずげ・・・おね・・・ごふっ・・がい」
「うわぁ!?えっセシリアさん!?」
「いっ生きてるかそいつは」
僕の耳に嫌な会話が届いてきていた。隣にいるベルトリウスさんをチラっとみるも、目をつぶり詠唱を始めていたが、その表情は苦痛に顔をゆがませている。
「ごふっだずげで・・・」
「えっ!えっ!あっノエル君!セシリアさんが!」
僕はヘンリーさんの言葉を無視し、聖なる領域の詠唱を続ける。
「おっおい・・・いいのか、仲間じゃないのか・・・」
「だずげ・・・」
「ノエル君!セシリアさんが!」
必死にヘンリーさんは僕へと声を掛けるが、僕はヘンリーさんを見て顔をゆがませ首を振った。
すでにこちらに向かってくる敵の騎兵が見える。今、聖なる領域の詠唱を破棄すれば、僕らは全員やられてしまう・・・
非情のようだが・・・僕に今できることはセシリアさんにはなかった・・・
「敵がくるぞ!」
「うわぁ!雪崩れ込んでくる!?」
ポッカリと空いた王国側の陣形に、そこを目指して騎兵に続き歩兵たちも一斉にこちらに向かい始めていた。
王国の兵もその穴を塞ごうと隊列を広げては行くが、それよりも我先にと包囲殲滅から逃れるための活路を見出した異教徒の方が、動きが早いのは明らかだった。
包囲殲滅で数を減らしたと言っても、まだそれなりにいる異教徒の勢いは最初にもまして強かった。
味方、敵そんな物はおかまいなしに燃えた死体・・いや生きている者も踏んでいく。生きていた人も異教徒に踏みつぶされ命を落としていく。
異教徒の一番先に僕らにたどり着いたのは、異教徒の騎兵が3。
パカパカと怒涛の勢いで近づいてきていたが、僕らにちかづずとじゃっかんスピードを落とした様子・・・そしてよく見える距離まで近づいたと思うと、その手にはグリモワールが開かれていた。
「火礫!やれ、マリーナ、ドミトリー」
「火礫!」
「火礫!」
そしてすぐに放たれた炎の礫に、僕はまだ聖なる領域の詠唱を終わらせていなかった。
バンっと騎士が一つを受け止めると、爆発音と共に弾ける・・・が。
「ぐおぉ!?」
ベルトリウスさんに一発あたり、地面に転がっていく。
僕は目を見開きならがも、必死に詠唱を続けていく。
バンッ
「くっ痺れる・・・」
更に続けて、火礫を撃たれ僕を守るように立ちはだかる騎士が集中して狙われていた。
「うぉーーー!!!」
残っていた兵士が2人、そのまま武器を構え異教徒の魔導士に突進していく。
「火礫!死ね、異教徒!」
「てめーらが異教徒だ!」
バンっと王国の兵士に相手の魔法がぶつかり、兵士一人は転がった。
「火礫!兄貴、そろそろ撤退だ!」
そしてもう一人の兵士も魔法にやられ地面に伏せてしまう
「くそ!神聖だけでも殺す!」
「兄貴!」
僕が狙われていた事に気が付くが、僕を守る様に必死に騎士は耐えてくれていた。
「この!じゃまだてめーは火礫!」
バンっという弾ける音と同時に、カキンと騎士の持つ盾が割れる音が聞こえた。
「今だ!マリーナ!」
「火礫!しねー!」
僕を守ってくれていた騎士は僕の目の前で、崩れ落ちた。
「やっとお目見えか・・・、どんなやつが邪魔してくれてんだと思ったが、ただのガキか」
「兄さん、こいつ足が震えてるよ」
「兄貴もマリーナも!さっさと撤退するぞ!」
「また、神聖だけ貰って帰るか、ボソボソボソ」
僕を罵るこの魔導士3人のうち、一人が僕を見据え・・・小さく詠唱をはじめていた。
まだ僕の詠唱は終わりを見せない。それに恐怖と涙でグリモワールが読めていないのだ。
目をこすり、必死に読もうとしていたが、視界はぼやけ日本語のルビが頭に入ってこない。
それでも必死に読もうとしていたが・・・やつの魔法名が先に唱えられようと、口をゆがませ大きく開こうとしていた・・・
「火炎!!」
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