第33話 王都まで道のり
第四王子の隊は兵士や魔道兵の数をリーンでまた減らし、300人ほどの人数で王都へと移動となった。
新たに2人の魔道兵が配備される事になったが、それは味方の死の上で成り立っている事だ。新しく魔道兵になった兵士上がりの人は嬉しそうにしていたが、僕の気持ちは複雑だった。
魔道兵同士にあまり交流もなく、みなが積極的に声を掛けずリーディアとだけ話す様子がよくわかってしまった。
僕やアルスさんも新たに加わった魔道兵に興味は持ってない。あの持っているグリモワールはロッツさんの物やバーグランスさんの物だとしたらと思うと、あまりいい気持ちではないからだ。
そんな人らを加え魔道兵はギレルさんを除き12人となって、王都への行軍が続いた。
ポタポタと雨が降る日
「雨か・・・じめっとしてるな」
「・・・そうですね」
ナタリアさんは新たに加わった魔道兵の教育係にも任命され、行軍中はそっちにつきっきりになり僕とアルスさんは2人でいることが多くなった。
ケープに着いたフードを被り、雨の中僕らはぬかるみの中を歩いていく。
「あと2,3日かで王都だな。ここは見たことある道だ」
「へー、僕王都なんて初めてですよ」
「俺は兵士になって1度行ったことがあるぜ、20日ほどの滞在だったが、演習や勉強が2日に1回とかで休暇みたいなもんだったなあの時は」
「いいですね、王都はどんな所なんですか?」
「一言では言えば都会だな」
アルスさんの王都の説明が始まった。
ウォリック王国の王都、ウィンザー。ウィンザーにあるウィンザー城は城でありながら強固な防衛設備を有しているそうだ。魔法3発や4発程度ではやぶれない分厚い城壁に囲まれている要塞のようだとアルスさんは語る。
また、街の周囲にも4mもの高い壁でぐるりと囲っている城郭都市になっているという。
「どうだ、すごくないか」
「はい、街の様子はどうでした?」
アルスさんの話は城や兵舎などの施設などの軍の話がメインだった。それも気になるが、王都という響きに街中の様子の方が僕は気になっていた。
「あー・・・物が高くてよ、街にはそんなに行ってないんだよ」
「えっ?そうなんですか?」
「あぁ、給金も月に銀貨1枚だろ?俺達もその頃兵士になったばっかりで、手持ちも少なくてよ・・・店で飯を食おうもんなら、一回で銅貨2枚とんじまって街にでたのは一回きりだったぜ」
「それは・・・残念でしたね」
「あぁ、さほど美味くも無いパンに野菜と少しの肉でだぜ?あの時はスナイプに店を選んだのが俺だったから、ぼろくそに言われたな・・・」
「・・・その光景は簡単に目に浮かびますね」
「だろ」
亡きスナイプさんも思い出し、遠い目をしその先に何を思いだしているのか。
そこで話は途切れ、今だ降り続く雨の中を歩き続けた。
◇
雨がふりつづけたために、移動は難航した。馬車がぬかるみにはまり何度も動けなくなることがあり、その度に立ち往生した。
2、3日とアルスさんから聞いた日からすでに3日は経ったが今だ王都につく気配はない。アルスさん曰く王都へ続く道は途中から石畳が引かれていると言っていた為、それがない限りはまだまだなのだと。
予定よりも大幅な変更を強いられているのか、食料が底をつきたとジェフさんは言っていた。リーンを出て、ヨークという村を一週間前に経由してから補給は出来ていないからか、物資はもとからギリギリだったようだ。
僕やアルスさんや魔道兵の荷物は、リーンで先に捜索のためにバルグ砦に入った兵士達に荒らされてしまい、持ち物も少なくなっている。
だが兵士達に文句は言えない。そういう取り決めであるし、盗みは現行犯でなければほぼ罰することが出来ない。アルスさんも、自分が今兵士だとして目の前に金品が放置されているなら取っていたなと諦めていた。だが、流石に時計を失ったことはショックだったようだ。
背負いカバンごと無くなり、気に入っていたゴブレットや携帯食料、着替え、村から持ってきていた水筒なども全てなくなり、あの時身に着けていた物だけが今残されていた。
ポーチが3つに、神聖のグリモワール、古代のグリモワールが入ったメッセンジャーバッグ。僕の持ち物はこれだけだった。
ポーチにいれたナッツやドライフルーツももうそこを尽きかけている。あと5掴みほどしか残されていない為慎重に食べる必要があった。
「はぁ~・・・この空腹感、兵士時代を思い出すな」
「ですね・・・魔道兵になってまだ一か月ですか・・・空腹に弱くなりましたね・・・」
兵士の時は。薄い麦がゆをのんでお腹を膨らませていたが、魔道兵になりお腹に溜まる物を毎日食べていたからか少し食べないだけで。何か口に入れたくて仕方なくなっていた。
「はぁ・・・腹減ったな・・・」
「ですね・・・」
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