第27話 個人面談?

「ギレル様!」


先ほどと変わり、俯いた顔をあげてギレルさんの方へとすぐに向き直したナタリアさん。


「もう、何もないのう・・・何をしておったのじゃ?」


「アルスとノエルが部屋に戻らず、探しにきましたら・・・水遊びがてらにお皿洗いをしておりまして・・・すぐに連れて戻ります!」


「ち、ちげーだろ!皿洗いがてらに少し水遊びだ!」


ナタリアさんの発言にすぐにアルスさんは訂正をする


「ふぉふぉふぉ、変なやつらじゃの。まぁよいこっちに座って少し話でもするかの、お主らも座りなさい」


「はい!」


「まじか・・・」


「はっはい」


露骨に嫌そうな顔が出来るアルスさんを、僕は尊敬してしまう。


ギレルさんは上座とか関係なく、一番近い席に座り僕とアルスさんは正面に座るとナタリアさんは僕らの後ろに控えた。


「いや、お前も座れって。ギレル様は座りなさいと言ってんだぜ?」


「そうじゃな、今はワシらしかおらぬは、堅くならずともよいぞ」


「えっ・・・ですが・・・」


「ギレル様の言葉を無下にするなよ、ほら座れって」


アルスさんは椅子を引き、ナタリアさんを隣に座らせた。


「し、失礼します」


「ふふ、そんなに堅くならなくてもギレル様は優しいじゃないですか」


僕もナタリアさんの様子を見て、少し余裕そうにそういうと


「何を言っておるのじゃノエル、お主も王子の前ではカチコチもいいとこじゃったわ」


僕の言葉にギレルさんはツッコんできた。


「えっ・・・アハハ・・・」


「まぁよいかの。さて、2人は魔道兵としてどうじゃナタリア」


ギレルさんからの話が始まった。


「えっ・・・はい。アルスの方ですが・・・詠唱や記憶力に少し難がありますが、魔力は恐らく人の倍はあるかと。此度の戦で”火炎”を7発連続使用し、戦場でも凛とした態度で集中力を発揮しておりました。まぁ・・・集中しすぎて回りが見えていない事もありましたが・・・潜在能力は高いかと思います」


ナタリアさんは良いところ、悪いところをギレルさんに話、隣にいるアルスさんは少し照れているような顔で目線はどこにもなく、どこかへ外していた。


「そうか、倍か。思ったよりもやるのう。ふぉふぉふぉ、ノエルはどうじゃ?」


「ノエルの方は、近くにおれず戦での話は聞いた限りになるのですが・・・詠唱に関しては問題ないかと、聞く限りでは魔力も人より少し多いほどです。頭もよく吸収力もありこれからドンドン成長をしていくと思います。ですが・・・やはり若いという事もあり知らない事も多々あります、それに性格も弱気な性格ゆえに戦場に立てば注意がそれて、詠唱を上手くできないのではないかと心配する事がありますね・・・」


僕もナタリアさんからの評価を聞き、照れてしまい俯いた。


「そうかそうか。一週間かそこらでよくみとるの2人の事を」


ギレルさんは嬉しそうにナタリアさんに言う


「い、いえ・・・それが勤めですので・・・」


そしてナタリアさんも俯いた


「次は2人に聞くが、ナタリアはどうじゃ?」


ギレルさんは僕らに質問をしてきた。


人の事をとやかく言っていいのか悩む僕とは反対に、すぐに喋り出したアルスさん。


「ナタリアか・・・正直分からないな。俺達に遠慮して本心で接してくれてないようだからな、今も飯食ってないっていうから、まだ手を付けてないその皿の飯やこの果物を食べろっていってるんですが食いやしないんですよ」


「それは、違うじゃないの・・」


「遠慮かの・・・まぁそうか」


ギレルさんは、その蓄えた白髭を人差し指と親指で掴むように上から下へなぞらせて聞いている。


「ただ・・・胆力はあるやつですね。今回の俺達の東側の塔を落とせたのはナタリアのおかげだと思います。戦地でも冷静に周りを見て、詠唱中の俺や隊長に助言をしてくれたからこその成功だと思いますよ、俺は」


「そうかそうか。ならナタリアもこの食事を食べる資格はあるわけじゃな」


「ほらな、こう言ってるぜ?後からでもいいから食えよ、加熱ぐらいはしてやるよ」


「じゃな」


「は、はい・・・頂きます」


ギレルさんの言葉であれほど頑なに断り続けていたのに、頷いた。


「ノエルはどうじゃ?ん?」


「そうですね・・・ナタリアさんは優しいですかね?」


僕は思いつく限りの事を喋っていく


「は?優しいか?お前どういう風に見てんだナタリアの事!?」


「ちょっとどういう意味よ!」


僕の言葉にアルスさんが先に反論した


「えっと・・・正直、僕からみてもアルスさんの物覚えは・・・悪いかと。ずっと隣で詠唱を聞いていましたが、中々覚えないアルスさんに対してずっとナタリアさんは嫌な顔せず、この一週間つきっきりで教えてました」


「・・・ナタリアの話だよな?聞かれてるの」


「・・・」


「ふぉふぉふぉ、それでなんじゃ?」


「はい、厳しさはありますが・・・その中に優しさが垣間見えることばかりで、僕らの事を思っての言葉が多いなと・・・」


僕は歯切れが悪く、話を終わらせた。


「ふぉふぉふぉそうか、まぁ一応この話も次の軍の振り分けに考慮させてもらうかの。魔道兵としてどうかと最初は2人の事を思ったが・・・ナタリアの教育がよかったようじゃな」


「それは・・・間違いないですね」


「そうですね」


アルスさんが肯定し、僕も続いてそういうとナタリアさんは顔を赤くしていた。


面談のような話が終わり、僕らはグリモワールの事など事を逆にギレルさんに質問をしたりと話が切り替わっていく。


話の途中で、ナタリアさんのお腹がぐぅ~っとなり、恥ずかしさの余り爆発しそうな顔にはなっていたが、ギレルさんに勧められ食事をとりながらナタリアさんは会話をつづけた。


ナタリアさんは常に堅くはいたが、話にはちゃんと返事をするあたりが緊張してどもる僕と違うんだなと思わされた。


そのまま会話をしていると、他のリーディアの人達が食器を片付けにきたのか部屋へと入ってくる。その中にはセラさんとグランドさんの姿が見えた。


「あっ失礼します、片付けをと・・・」


グランドさんがギレルさんに声を掛けた。


「よいぞ、儂らももう退散するとこじゃわ。アルス、ノエル邪魔になるから儂らはいくかの」


「はい、悪いな俺達が食った分なのによ」


「すいません、よろしくお願いします」


ギレルさんが立ちあがり、アルスさんがリーディアの人達へ声を掛ける後に続き僕もお断りをいれておく。


「私は一緒に片づけをするから、2人とも真っ直ぐ部屋に戻るのよ」


「へいへい」


ナタリアさんはそのまま片付けをするという事で、僕らはギレルさんと部屋を退出していった。


「すまんな、疲れているのに年を取るとつい話が長くなるわい」


「まぁ・・・そうですけど、いい話も聞けたので」


「ったく、アルスはもう少し気持ちを隠す事を覚えた方がいいか・・・まぁよい。2人はずっとそのままでいてくれることを願うぞ。ではの」


ギレルさんは早々とどこかへ行ってしまう。


「俺達も戻るか?」


「・・・僕、ずっとびしょびしょで風邪ひきそうなんですが」


話の間中、髪の毛から滴る水を吹きながらの会話だった。

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