宇宙人と宇宙人
ザクシーはA国が作った立体映像であり存在しない。
ザクシーは日本が作った改装人間。
ザクシーと侵略宇宙人や怪獣はグル。
ザクシーはC国と裏で繋がっている。
ザクシーは謎の病原菌を撒き散らしている。
ザクシーは地球の歴史を裏から操作してきた組織が崇める神。
ザクシーは人間を滅亡させにやってきた悪魔。
この世はザクシーが遊んでいるゲームの中の世界。
と、このように様々なデマが溢れている。
なんとも想像力豊かで疑い深い種族だ、地球人というのは。
『根源』を持たなかったらユーシー星人もこうなっていたのだろうか?
『根源』で繋がっていたからこそユーシーは協力して進歩し、天体衝突からギリギリ生き延びる事が出来た。
地球人は100年も前に地球の衛星に到達していたというのに、そこで宇宙への進出は歩みを緩めてしまった。
もっと無重力空間での実験を勧めていれば技術革新も起きていただろうし新たな物質の発見や肉体的な進化もあっただろうに。
もしもユーシーのような大きな天体衝突が起きたら全滅は必至だというのに。
いくら国同士の小競り合いに勝ったところで隕石1つですべてが無に帰す事くらいわかっているはずだ。
手を取り合って先へ進むのではなく、足を引っ張りあってどこへも行けないなんて悲しい連中だ。立ち止まっているその場所が永遠に立ち止まっていられる場所とは限らないのに。
ザクシーには不思議でならなかった。地球人は滅びたいのだろうか。
宇宙人の出現によって地球人同士の紛争は休止していたが、ほんの数ヶ月でもう小競り合いが発生している。
これには地球人からも落胆の声が上がっている。
平和を願う地球人も沢山いるというのは、ザクシーの作戦にとっても重要な要素だ。
出来る事なら騙すような真似はせずに、ユーシーと地球人が協力してより良い生命体へ変わっていきたい。あの古臭いロボットの持ち主や、どこかにいるかもしれないそれ以外の異星人達も、みんなが協力出来ればどんな事が出来るだろうか。
地球人だけが『根源』を持たないのだろうか? 逆にユーシーだけが『根源』を持つのだろうか?
ユーシーは死後『根源』に帰る。大きな一つの命の光に戻り、また別の命へ循環する。
地球人は死後どうなるのだろうか。幽霊みたいな存在があるということは死後もその辺をうろつき回っているのだろうか? あまり考えたくない。地球人もよくわかっていないようだ。
「じゃあ今日はね、そんな地球人にとって宇宙人とは何なのかを調べていきたいと思います」
モニターに向かって一人でなにやらセリフ口調で喋りだすザクシー。
「まずは地球で1番有名な宇宙人。コレはグレイと呼ばれる奴だね」
モニターに映し出されたグレイ。身長はユーシー星人と同じくらいだが、その名の通り灰色でヒョロい身体に大きい頭がついていて大きな目と小さな口と穴だけの鼻。
「気持ちわるっ」
地球人が描いたその姿を見てザクシーは反射的に呟いた。
「空飛ぶ円盤を作れるのになんで裸なんだコイツは。しかも動物や地球人を誘拐して悪戯したり、無駄にUFOの姿を晒して驚かせたり、何がしたいのかわからないな。本当にいるのかコレは? うーん、ちょっとナイフアームに似て……いや、気持ち悪いな。コレと一緒にされるのは心外だな。次はコレを倒す展開でもやってみようか」
モニターに新たな宇宙人が映る。
目がついた頭と思しき塊から細長い触手が何本か伸びている。
「気持ちわるっ。コレは地球人が火星人と呼んでいる化物だ。コイツも裸だ。なんでUFOを作れる奴らが裸なんだ? 一応仲間に調査してもらったが火星にこんなヤツ居ないらしいぞ。創作だろうが触手で光線銃を持って撃ってくる事もあるらしい。次はこれ」
モニターに出されたのは地球人の子供のように見えるが、白目の部分まで真っ黒だ。
「黒い目の子供というらしい。だからなんだと思ってしまうな。地球人ってのは気分で性別まで変わるのだろう? 目が黒いくらいで宇宙人扱いはよくわからないな」
次にモニターに出てきたのは爬虫類のような顔つきの二足歩行宇宙人達だ。
「こういう人間に擬態しているトカゲみたいなヤツとかいろんなタイプがいるようだ」
今まで出てきた宇宙人を画面上に並べてみる。
「実在する可能性が高いのは擬態して地球人に溶け込んでいるタイプと、目撃例の多いグレイタイプだろうな」
グレイを拡大してマジマジと観察してみるザクシー。
「トカゲみたいな顔にも見えるし目が真っ黒で子供のような背丈だし、全部コイツの事なんじゃないのか?」
ふと振り返り、ロボットのフィギュアを手に取る。
「まさかコイツも……」
すべてが1本の線で繋がったような、軽い戦慄を覚えてザクシーは天を睨んだ。
――――――――――――――――――
「は? ぶん殴るぞ」
エイホが叫ぶ。
新聞を読んでいたおばあちゃんがエイホを見ると、何やらテレビに向かって怒っているようだ。
そしておばあちゃんは何事もなかったように再び新聞を読む。
テレビ画面には宇宙人危険度ランキングと書かれたフリップ。ダイオーは最下位だった。
自称軍事評論家がつけたランクのようだが、つい先日の瞬殺された偽ザクシーはダイオーの一つ上のランクだった。
「もう一度やれれば……」
エイホは唇を噛み締めてテレビを睨みつけた。
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