地球調査報告
通信開始。
「ザクシーだ」
『地球には慣れたか、ザクシー?』
「多少な。地球の通信機器の操作がなかなか難しい。物質機器しかないんだ」
『それは不便だろうな。『根源テクノロジー』がまだ開発されていないのか』
「それなのだが、どうやら地球人には『根源』が無いようだ」
『……どういう事だ? それならどうやって意志の統一をするのだ?』
「統一されていないのだ。だから事あるごとに地球人同士で揉める。領土や思想によって常に争い続けているようだ」
『そういう事だったのか……。我々が観察していない時からずっとそうだったのだな。しかし、そんな事をしてよく生き残っているな。お前が転送してきたような兵器を撃ち合っていたら滅んでいそうなものだが……』
「ああ。それについては調査中だ。もしかしたら地球人はあの兵器に耐えられる生態なのかも知れない」
『うーむ……そうだとしたら地球人なら、未だ炎に包まれている我らがユーシーでも生き残れるのやも知れぬ。ユーシー再生に力を貸してくれるような関係になれれば良いのだが』
「何人か母船に誘拐して解析してみたいものだな」
『ハッハッハ、さすがにそんな恐ろしい事はお前が演じている悪い宇宙人でもするまいよ』
「フフフ、冗談が過ぎたな」
『しかし生態調査はしているのだろう?』
「そうなのだが、調べれば調べるほどわからなくなるのだ」
『どういう事だ?』
「日や気分によって性別が変わる個体がいるらしい」
『なんだと!? 成長過程で変わるのでは無く、気分で変わるのか!?』
「そのようだ。最近そういう個体が出てきたらしい」
『うーむ……何という生物なのだ。信じられん』
「しかも性別は2種類だけでは無いらしい」
『……我々が強化ボディのデザインを変えるような、そういう、変身というか、そういう能力がある?』
「そういう事ではなさそうなんだが……ちょっとまだ理解が及ばない。これからも調査を進めておく」
『……ああ、そうしてくれ。地球では他の生物もそうなのかも知れないしな、送ってもらったデータもこちらで研究しておく。……しかし、事前に遠くから観測しただけである程度理解できたと思っていたのは甘かったな。やはり実際に現地で調査する事が大事なのだな』
「それなのだが、私は更に踏み込んで行こうと思う。地球人の中に紛れ込んで実際に彼らと接触してみるつもりだ」
『大丈夫か? ザクシー、お前に何かあれば作戦を引き継げる資質を持つ者は居ないのだぞ?』
「一応、地球でも治安が良く、住人も温厚な傾向にあると思われる日本という島へ行くつもりだ。前回の作戦もそこで行ったし、その影響も現地で確認したい。何かあればとすぐに強化ボディを出して撤退するし、心配は要らない」
『気をつけろよ』
「ああ、問題ないさ。ユーシーは地球人の子供に似ているし、肌や髪の色を変えればほぼそのままで行けるはずだ」
『お前なら上手くやるだろうな』
「では、またな」
通信終了。
もしも地球人が見ていたら独り言を言っているだけに見えただろうが、彼らはテレパシーのようなものを技術として確立している。『根源テクノロジー』の1つだ。
「ひとまず、地球の食べ物を食べてみたいな」
ザクシーは基地の通信機器を用い、ネットサーフィンを始めた。
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