第5話 初任務

「それでは早速、任務です。カレーダの東にある村で村人が魔物化する事件が起きています。調査及び討伐をお願いします」

「は、はい」


 いきなり任務か、この世界は魔族との抗争が激しくなっているらしい。


「アリシアさんと一緒の任務です。サードカテゴリーの魔導書の研究の一環として任務に就いてもらいます」


 ああああ、気まずいな。昨日、完全に私が勝利したからな。でも、今は仲間だ。王都カレーダの街から東の村までロバで半日、朝早くから出発である。用意されたロバにまたがり、私とヨルヒ、アリシアが魔導図書館を後にする。


 旅の途中で会話が無くなると、私は任務について考える。


「アリシアさん、アリシアさん……」

「何ですか?」

「アリシアさんは剣術以外に何が出来て?」

「……」


 ヤバイ、剣術以外は出来ないのか。不味い事を聞いてしまったな。サードカテゴリーの魔導書は開発段階だと言うし、仕方がないか。


 伝説のレッドバイブルの所有者として、ここは私が頑張らねば……。


 その後、簡単に整備された道を進むと、東の村にようやく着く。そこは、至って平和な村であった。


「ハイレベル魔族の臭いがする」


 うん?ヨルヒが鼻を効かせ警戒した様子でいると、私も緊張する。


 ハイレベル魔族か……。


 伝説の魔導書であるヨルヒの力が試せるいい機会だ。とにかく、村長に会おう。村人に案内されて普通の民家である村長宅に着く。


「私が村長です」


 それは、初老の品といい紳士で、この平和な村にふさわしい人物であった。


「立ち話もなんです。ささ、家の奥に……」


 私達は奥の部屋に案内されると。椅子に座りしばし待つと赤いスープを出される。


「鹿肉のスープです。是非お食べ下さい」


 それは血の臭いがするが、私には食欲をそそるモノであった。


「お姉さま、罠です!このスープを飲むと魔物になってしまいます!」

「血族による血の契約か?」


 真っ青な様子のアリシアさんがヨルヒに問う。


「はい」


 真剣な表情で返事を返すと、私達は机から離れて椅子から立ち上がる。


「……このロリただ者ではないな」


 低い声の村長の呟きと共に姿が魔族になる。私は気合いを入れて真剣な表情になり、魔族に自己紹介をする事にした。


「このヨルヒはレッドバイブル、魔王シェパードを倒したファーストカテゴリーの魔導書だ。そして、私がそのパートナーだ」

「面白い、ここで始末してやる」


 ハイレベル魔族が襲いかかってくると。


「表に出ろ、この狭い場所ではヨルヒの魔導術が使えない」


 アリシアさんが叫ぶ。私達が窓を開けて外に出ると村人は皆、魔物となり襲ってくる。


「くっ、厄介だな。しかし、殺すな!血の契約によって人間が魔物となったのだ」

「なら、どうしたら良い?」

「血の契約なら、この魔族を倒せば良いのだ」

「話しは決まりだ、アリシアさん、村人を抑え込めるか?」

「任せろ」


 よし、ハイレベル魔族と対決だ。

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