第2話 酔うほどに騒ぎがデカくなる。

 夕刻、カレーダの街に着くと、旅の青年は馬車に乗せていた毛皮を納品して、出店の多くある通に私を案内する。


そこはカレーダの街が王都であり貿易都市らしく色々な食べ物が並んでいた。ヨルヒも魔導書から現れて二人でガツガツ食べるのであった。


「そう言えば、自己紹介がまだだったな」


 青年は『サンダース』と名乗る。ここは、私も『細川 秋菜』と名前を言う。


「よろしく、秋菜」

「あいよ、サンダース」


 その後、私達はグータッチをして友情を深めるのであった。


 そして、自己紹介の後、私とヨルヒは更にガツガツたへる。うん?ヨルヒがトムヤムクンに近いスープを呑むと。 


「ひっく、ひっく。お姉さま。大好きです」


 そう言うと酔った様子で抱きついてくる。どうやら、魔導書であるヨルヒは唐辛子の成分に弱いらしい。


「わかった、わかったから離せ」

「ダメです、むぎゅーとなのです」


 道の真ん中で抱きつく様は出店街を騒然とし始める。


「何の騒ぎだ!王都治安維持委員会だ!」


 不味いな、国家権利に目をつかえられた。


 私は急いで酔ったヨルヒに水を飲ませると事態の沈静化をはかる。


「私の名前はカナル。騒ぎの元は魔導書か、登録番号を言え!」


 数人居る、王都治安維持委員会のリーダーらしき黒髪の女性が質問してくる。不味いな、絶対セカンドカテゴリーの魔導書だと思っている。異世界から来たファーストカテゴリーの魔導書だと信じるかな……。


 仕方がない、ダメ元で言ってみるか。


「このヨルヒはレッドバイブルなる魔導書、ファーストカテゴリーだ。私はこの魔導書に導かれて、異世界から転生してきた」


 ……―――。


 当然、連行されて、近くの王都治安維持委員会の事務所で待機である。


「すまなかった、ファーストカテゴリーの魔導書だと確認された。お前は魔導図書館行きだ」


 カナルは微妙な態度で接してくる。絶対、本心はファーストカテゴリーだと信じていない様子だ。


 ここは……。


「ヨルヒ、ファイアボールを空に放て!」


 酔いの冷めた様子のヨルヒに命じてみる。


「はい、お姉さま」


 ヨルヒは両手を空にかざし、炎の塊を放つと。空中で爆発する。


「バカな、これがファーストカテゴリーの魔導書なのか!?」


 ひひひ、驚いている。私の勝だ。

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