第84話 ゴブリンロードとの戦い
「ゴ、ゴォ?」
地面から勢いよく飛び出ていった『黒影鞭』に片足を巻きつかれて、ゴブリンロードは首を傾げていた。
おそらく、自分が拘束されたことに気づいていないのだろう。
そして、続いて地面から出てきた残りの三本の『黒影鞭』が体に巻き付いて、それらがピンと張られることで、ゴブリンロードの体は完全に動かなくなった。
「ゴ、ゴオオオ!!」
体に巻き付いた『黒影鞭』のせいで体を自由に動かせなくなって、ようやく自分が拘束されたことに気がついたようだ。
ケルに改善点を教えてもらって、俺は『黒影鞭』を四本別々に動かす術を身に着けていた。
……まぁ、全部が自在に操れるほどではないけどね。
俺は地面に手を付けたまま、今度は攻撃魔法を仕掛ける。
サラさんは俺が『黒影鞭』でゴブリンロードを拘束したのを見て、急いで俺のもとに駆けつける。
これから俺がゴブリンロードを屠る魔法を使う間、サラさんにはまた俺を守ってもらわなければならない。
俺はサラさんが守ってくれることを信じながら、一気に六つの『火球』を重ねるイメージを頭の中で作る。
そして、その発射位置を拘束しているゴブリンロードの足元に固定。
「『火球』」
六つに重ねた『火球』が一つの魔法として出力される発射口を絞ることで、ゴブリンロードを屠る準備は完了だ。
魔法の重ねがけに、発射位置の移動に圧縮率の調整。
それら全てを使って、目の間のゴブリンロードを屠ることだけを考える。
「……きた」
ゴブリンロードの足元が徐々に真っ赤になっていく様子を見て、俺はグッと構える。
赤くなった地面が赤さを通り越して、赤黒く成った瞬間、ゴブリンロードの足元からゴウゥッとすさまじい勢いの炎が立ち上がった。
そして、爆発でもしたかのような勢いで一直線に伸びていった炎は、ゴブリンロードを一瞬で包み込む。
周りにいたゴブリンたちがその勢いに負けて、転んでしまうほどの勢い。
六つの『火球』を重ねただけあって、ワイバーンを焼いた時よりも火力が強い気がする。
そして、『火球』が一気にゴブリンロードを焼いたあと、ゴブリンロードはそのまま前のめりに力なく倒れた。
……黒焦げすぎるけど、これゴブリンロードで合ってるよね?
周囲を見渡してみると、ゴブリンたちがオロオロとし始めて統率が取れなくなり始めたみたいだ。
ということは、今のがゴブリンロードで間違いないだろう。
俺は小さくガッツポーズをした後、最後の大仕事をするために回れ右をしてまた地面に手を置いた。
後方で最終ラインを守ってくれているケルたちと目配せをすると、ケルたちはこくんと頷いてから、煙と共にポンと音を出して姿を消した。
よっし、最後に最高の見掛け倒しを作りますか。
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