第82話 ゴブリンの群れとの戦い
そして、始まったゴブリンの群れと俺たちの戦い。
ゴブリンの群れはもうすぐそこまで迫ってきていた。
『魔物呼びの笛』に誘われてやってきたようだが、今はその目の前にいる俺たちに向かって突っ込んできている。
「よっし、兄弟たち! 兄弟たちはここでゴブリンたちの足止めを頼む!」
ケルが両隣にいるケルたちに呼びかけると、俺たちを先導するケルを残して、二匹のケルたちは二手に分かれて広がった。
ケルの作戦では、二匹のケルたちに馬車近くの最終ラインの防戦を頼むことになっていた。
おそらく、ケルたちなら近づいてきたゴブリンたちを倒しながら馬車を守るという任務をやりきってくれるはずだ。
だから、問題があるとすれば、前線を任されている俺たちの方である。
「ソータ! 我が道をこじ開けるから、見つけ次第ゴブリンロードを頼むぞ!」
「うん、了解! ケルも気を付けて!」
ケルは頷いてから、とててっと一足先にゴブリンの群れに突っ込んでいった。
ケルが強いことは知っているが、さすがに今回は数が多すぎる。
地獄の門番と言われているケルと言えど、油断をしたらどうなるか分からないかもしれない。
無理はし過ぎないでくれと思ってケルを見ると、ケルは走っている勢いをそのままにゴブリンの群れに頭突きをかましていっていた。
「ウギャァ!」「ギィヤ!」「ギァアア!!」
そんなゴブリンたちの悲鳴と共に、ゴブリンたちが吹っ飛ばされていく光景を前に、俺とサラさんは言葉を失いかける。
「……大丈夫そう、だね」
「え、ええ。さすがケルです」
軽やかな足取りでゴブリンを吹っ飛ばしていく光景を見せられると、さすが地獄の門番だなと再確認させられる。
「それじゃあ、ソータは魔法に集中しておいてね。何があっても、ソータは私が守るから」
「はい、お願いします」
俺は心強いサラさんの言葉に頷いて、魔法の準備に取り掛かる。
今回の作戦はこうだ。
まず初めに、ケルたちの中の一匹が、ゴブリンたちをなぎ倒して、俺とサラさんの道を開ける。
そこを俺とサラさんで進んでいき、俺たちはゴブリンロードを見つけ次第魔法でゴブリンロードを撃破する。
ゴブリンロードとは、ゴブリンの群れを率いるリーダー的な存在だ。そいつをやっつければ、ゴブリンたちは統率を取れなくなる。
そこに少し追い打ちをかけてやれば、ゴブリンたちは巣に戻るっていう算段だ。
しかし、ゴブリンロードを倒すためには、それ相応の魔法が必要になる。
だから、ゴブリンロードを見つけ次第にすぐに仕留められるように、俺は普通のゴブリンの相手はしないで魔力を高めて魔法の準備をしておく。
それまでの間、サラさんには俺を守りながらゴブリンたちを倒して、俺がゴブリンロードを目視で確認できる所まで連れていってもらう。
目視でゴブリンロードを確認できれば、多分俺の魔法で仕留められるはずだ。
要するに、サラさんとケルがゴブリンの群れを倒してもらって、ゴブリンロードを見つけ次第、俺がゴブリンロードを屠るという作戦だ。
これなら、ゴブリンの群れと総力戦をやらないで済むから人員は俺たちだけでも何とかなる。
問題があるとすれば、ケルとサラさんの体力が持つかどうかだけど……。
「フフッ、容易い。綿毛のように飛んでいくぞ、ゴブリンたちめ」
「『一の型、白蓮』! 本当に、体が軽いよ。いつまでも戦えそうだ」
そんな俺の心配をよそに、ケルとサラさんは次々にゴブリンの群れを倒して、歩みを進めていく。
どうやら、体力面の心配はいらないみたいだ。
軽くゴブリンをあしらっていく仲間たちを頼りながら、俺はゴブリンロードを見つけてすぐに魔法を打てる準備をするのだった。
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