第61話 バースたちの計画
一方バースたち。
バースたちは停留所のすぐ近くにある宿の一階にある酒場で一服していた。
バースたちのような護衛をする冒険者や、御者たちの貸し切りの場所となっているその場で、バースたちは早い時間からお酒を呷っていた。
「バース! なんであのときもっとキレなかったの!」
すると、馬車の護衛に当たっていた女性冒険者のモモが机を叩いて、正面に座るバースとケインに抗議をした。
「あいつて、オリバさんとこのガキでしょ! やられっぱなしでいいの⁉」
モモもオリバの下について、街で大きな顔をしているメンバーのうちの一人だった。
それだけに、普段のソータの扱いについても知っている。
だからこそ、ソータにいいようにされた今回の事態を前に、怒りを隠せずにいられなかったのだった。
しかし、そんなモモの言葉を前に、バースとケインは顔を見合わせてからニヤニヤッと笑みを浮かべる。
「な、なんで笑ってんのよ」
「モモ、俺たちがやられっぱなしだったことなんてないだろ?」
バースはそう言うと、胸の内ポケットから手のひらサイズの禍々しい色の笛を取り出した。
「なにそれ?」
「『魔物呼びの笛』。この笛を吹くと、魔物がやってくる仕様だ」
そう言うと、バースはニヤッとすでに勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
バースの表情から笛の効果を察したのか、モモは生唾を呑み込む。
「ど、どこで手に入れたのよ。それ」
「オリバさんからもらった。なんでも、裏ルートから手に入れた物らしい」
バースは得意げにそう言うと、『魔物呼びの笛』をモモに渡す。
「……ふーん、オリバさんって裏とも繋がりがある人なんだ」
モモは『魔物呼びの笛』を見つめて、うっとりとしながらそう呟く。
「せっかくもらったんだ。試すのなら、オリバさんとこのガキがピッタリだろ」
バースの持つ『魔物呼びの笛』を見ながら、ケインはククッと笑って酒を飲む。
ケインが馬車の中で耳打ちしていた内容は、馬鹿にされた仕返しにソータたちを使って『魔物呼びの笛』の効果を実験をしようというものだった。
バースもケインもまだ貰ってから一度も試したことがなかっただけに、以前からその効果がどんなものか気になっていたのだ。
「オリバさんもあのガキは好きにしていいって言っていたし、有効活用してやろうぜ」
「有効活用? ふーん、そういうこと」
話の流れからバースたちの計画に気づいたのか、モモは悪いことを企むように笑う。
「どうせ、帰りの馬車の護衛はアイツがやる流れになるだろ? そんなにやりたければ、やらせてやろうぜ」
バースはそこまで言ってから、ニヤッと笑う。
「護衛任務って言うのが、どれだけ難しいのか教えてやんないとな。オリバさんの子分として、冒険者の先輩としてな」
バースたちが浮かべている笑みは、冒険者というよりもただのガラの悪いヤカラにしか見えないものだった。
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