第55話 見当違い
「おまえら……ハハハッ! なんだ、馬鹿なのか?」
俺たちのやりとりを見ていたバースは、ニヤニヤと笑いながら仲間の弓使いのケインを見る。
「おい、こっちに向かってきている魔物はなんだ?」
「ハイリザードだな。オリバさんとこのガキがどうにかできる相手じゃないだろ」
ケインは鼻で笑って俺を見下すように見る。
ハイリザードというのは中型くらいの魔物で、翼のないワイバーンみたいな存在だ。
ワイバーンのような翼がない分、剣などでも攻撃をすることもできるし、ワイバーンよりも倒しやすい。
だから、ワイバーンを倒した俺たちが倒せないような相手ではないのだ。
それでも、バースたちは俺たちが下級の冒険者パーティだと思い込んでいるのか、手を叩いて笑い出した。
「だってよ、分かるか? クソガキとその仲間じゃ何しても死ぬだけだって言ってんだ。ほら、おまえらみたな雑魚も守ってやるから、有り金全部寄こせって」
バースはそう言うと、俺たちに手招きをする。
……どうやら、これ以上話していても時間の無駄みたいだ。
そう思った俺たちはバースたちのいる場所を経由して、馬車の出入り口までトコトコと歩いていった。
「お、おい! 馬鹿、待てよ! 死なれたら俺たちが迷惑なんだぞ! おい、聞いてんのか⁉」
そんなバースの声を無視して、俺たちは馬車から降りてハイリザードがいる方角へ向かう。
「『魔力探知』によると、こっちから来るはず。あっ、もうけっこう近いね」
俺が馬車をぐるりと回ると、目視で分かる距離にハイリザードがやって来ていた。
地面を速く移動できそうな強靭な脚に、鋭い爪が特徴的な橙色をしたハイリザードは、俺たちの存在に気づいたようで、こちらに突っ込む勢いで向かってくる。
あの太くて硬そうな尻尾や、鋭い爪で攻撃をされてらひとたまりもないだろう。
「さて、ソータよ。今回はどうやって倒す?」
「普通のハイリザードよりも小ぶりだし、『火球』を三つくらい重ねれば十分だと思う。ケルは俺が魔法を打てるまでハイリザードの足止めを、サラさんはハイリザードがこっちに跳んできたときに攻撃から守って欲しいです」
以前にワイバーンを倒したときほどの火力はいらないし、気持ち抑えめで攻撃をすることにしよう。
今回は威力よりも速度重視でいきたいしね。
オリバに試したときみたいに地面から攻撃をしてもいいんだけど、あの攻撃は魔物みたいな早く動く相手には使ったことないし、今回はやめておこう。
俺が二人に『支援魔法』を二人にかけると、二人はこくんと頷く。
「ハイリザードか……どれ、軽くだけじゃれついてやるか」
ケルはそう言うと、こちらに向かってくるハイリザードのもとにとててっと軽やかに向かっていった。
じゃれつく?
そんな余裕しか感じない言葉と、フリフリっと元気に振っている尻尾が気になったが、俺は急いで『火球』を打つ準備をすることにしたのだった。
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