第30話 ダンジョン深層部
「そういえば、このダンジョンって俺たちが初めに潜っているんですよね?」
「確か、エリさんがそう言っていた気がするね」
新しい『火球』の使い方を覚えてから、俺たちはさらにダンジョンの奥へと進んでいった。
ダンジョンの最下層にいるであろうボスを倒すまでの道は問題なく進めているのだが、思っている以上にお宝が見つからない。
そんな現状を前に俺は小さくため息を漏らしていた。
「お宝、あんまり見つかりませんね」
今回の勝負はより早くボスを倒してその素材を持って帰ること。それは分かっているのだが、ここまでお宝に縁がないとは思わなかった。
俺が周辺にお宝がないかとキョロキョロとしていると、サラさんがそっと俺の頭を撫でる。
「ソータはお宝とかが好きなのか? ふふっ、神童と言ってもちゃんと冒険者らしいところもあるんだな」
サラさんはそう言うと、優しい笑みを浮かべる。
サラさんには俺がパーティを追放された身であることを話してある。
それなのに、俺が古代魔法を使えるからか、えらく俺のことを買ってくれているみたいだ。
……神童だなんて、サラさん以外に言われたことないんだけどな。
「もちろん、興味はありますよ。いつも金欠なので、可能な限り回収したいですね」
「金欠? あぁ、そう言えば、ギルドから支払われるお金はオリバたちが管理していたんだったな」
サラさんは俺を撫でていた手を止めると、眉を下げて小さくため息を漏らす。
エリさんから聞いたけど、俺が貰っていたお金はオリバたちが貰っていた額と比べて、あまりにも少ない額だった。
ほとんどを殉職金の保険のお金にあてられていたのだから、俺の手元に残るお金は少なくもなる。
……通りで年中金欠なわけだよ。
俺がオリバたちにされたことを思い返してため息を漏らすと、サラさんが人差し指をピンと立てる。
「それなら、ダンジョンのボスを倒してからお宝を散策してみようか」
「本当ですか?」
俺がパァッと明るく顔を上げると、サラさんはこくんと頷く。
「うん、そうしよう。C級ダンジョンだから、運が良ければ結構値が付くお宝もあるかもしれないからね」
値が付くお宝……。
俺はその言葉に思わず生唾を呑み込んでいた。
もしも良いお宝を見つけられれば、いつも泊まっているボロ屋みたいな宿屋じゃないところに寝泊まりできるかもしれない。
そう思うと、俄然やる気にもなる。
俺が小さくガッツポーズをしていると、ケルがぶんぶんと尻尾を振る。
「そうだな。それに、C級ダンジョンならボスが良い物を隠し持っているかもしれないぞ」
大抵ダンジョンのボスはそのダンジョンにあるお宝を守っている。
ダンジョンでは、強い魔力が込められているような物や、黄金に輝くお宝などを持っていることは分かりやすい力の証明になるのだろう。
だから、ボスはダンジョンの最下層という一番防犯的に宝を守りやすい所にいるとされている。
そして、そこにはそのダンジョンで一番良い宝が隠されているのだ。
ボスがいるところに、そのダンジョンの一番の宝ありといった感じなのだ。
C級くらいのダンジョンなら、稀に珍しい宝が出るとも聞くし、少しは期待してもいいよね?
「さて、何があるか楽しみだな。ソータよ」
ケルはそう言うと、大きな扉の前で立ち止まって振り返った。
どうやら、俺たちは案外早くダンジョンの最下層までたどり着くことができたみたいだ。
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