第24話 言い掛かり


「ソータ? なんでソータたちが……」


「ていうか、どういうこと? どうやって、あの魔物たちを倒したのよ!」


 ソータたちがオリバたちのもとに駆け付けると、オリバたちは何が起きたのか分からず困惑している様子だった。


 そりゃあ、今まで自分たちが馬鹿にしていたパーティから追放した人に窮地を救われれば、そんな反応にもなるか。


「見ろ、ソータ。中々のアホ面を拝めるぞ」


「スピードだけでなく、威力まで跳ね上がっているみたいだ。ソータ、本当にすごいぞ!」


 ケルはヘッヘッと子犬のような息遣いをしながらニヤリと笑い、サラさんは自身の刀を見つめながら目をキラキラとさせている。


 オリバたちを助けるかのように割って入ってきたのに、誰もオリバたちの言葉に耳を貸さなかった。


そんなふうに邪険に扱いすぎたせいか、オリバがずんずんとこちらに近づいてきた。


「どういうことだ、ソータ!!」


 オリバは何に対する怒りなのか、顔を真っ赤にしながらそう言ってきた。


「……どういうことって、どういうこと?」


「決まってんだろ! おまえみたいなクソガキが、俺たちが苦戦した魔物を倒せるわけがない! 何かズルをしたに決まっている!」


「ズルって、俺はただ『火球』を打っただけだよ」


 あまりの剣幕で何を言い出すかと思ったら、自分が倒せなかった魔物をあっさり倒されたことが気に入らないらしい。


 俺が正直にただの火球を打ったことを告げると、オリバはさらにヒートアップしてしまった。


「『火球』一撃で魔物を倒せるわけがないだろ!! 俺を舐めるのもいい加減にしろよ!」


「オ、オリバ。ダンジョン内で大きな声出すと魔物に気づかれるから――あっ」


 ダンジョン内で自ら大きな音を立てるなんて、ただの自殺行為だ。


 癇癪を起しているオリバを落ち着かせようとしたが、どうやら遅かったみたいだ。


 一体のゴブリンが木製の棍棒のような物を持って。こちらに向かってきていた。


 これだけ騒いだのにゴブリン一体で済んだのは、不幸中の幸いかな。


 俺の声でようやく気がついたのか、オリバは振り向いてゴブリンがこちらに向かっていることに気づいたらしい。


 しかし、オリバはゴブリン相手に構えることなく、ニヤッと笑って俺を見た。


 いや、そこにいられるとゴブリンと重なって邪魔なんだけど。


「ちょうどいい! あいつをおまえの『火球』で倒してみろよ! おまえら、よく見ておけ! このクソガキが不正をするからな!!」


 オリバは周りにいたパーティメンバーたちに声をかけて、ケラケラッと笑っていた。


 笑っているのがオリバだけで、他のパーティメンバーたちは少し不安そうな顔で俺を見ている。


 そんなことをお構いになしに、オリバはわざわざ屈んで俺と視線を合わせてまで俺をじっと見ていた。


 ……どいてくれないなら、ここから打っちゃえばいいか。


「『火球』」


「「「「っ!」」」」


 俺がオリバの顔の横をかすめるギリギリを狙って『火球』を打つと、俺の打った『火球』は一直線にゴブリンに当たった。


「ウギャッ!!」


 そして、『火球』が着弾したゴブリンはそのまま後方に吹っ飛んで動かなくなった。


 それを見ていたオリバたちはしばらく固まってしまった。


「な、なんだ今の威力は?」


「あの子が使ったんですか? あんな威力の魔法を使えたなんて……」


「いや、威力もそうだけど、今の魔法の発射速度ありえないでしょ……」


 ロード、ナナ、リリスは吹っ飛んだゴブリンを見て、順々に驚きの声を漏らしていた。


 そして、俺の『火球』を一番間近でみたオリバはと言うと……。


「っ! なっ……は?」


 派手に尻餅をついて、驚きのあまり言葉すら出せなくなってしまっていたのだった。


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