第12話 話し合いの決着

うーん、どうしようか。


「とはいえ、婚約破棄を申し出てきたのは殿下なのですから、自身の発言の責任はご自身で取ってくださいとしか言えません。」

「…お前、前はそんな話し方だったか?」


え、今そこ?


「その話し方ちょっと怖いぞ…」

「確かに話し方は変わりましたが、怖いのは単に私がイラついているからかと。」

「う、そんなこと言わないでくれ…」


どんどんオスカル殿下から覇気が無くなっていく。一国の皇子がこんな情けなくていいんだろうか。


「そう言われましても、私は魔法研究所で働くことが決まっていますので、今さら断ることはできません。」

「皇族の妃になること以上に大事なことがあるわけがないだろう!」

「そうかもしれませんし、実際殿下が命じれば入所を取りやめさせることもできると思います。」

「それなら…!」

「しかし、よろしいのですか?アンベシル魔法研究所は帝国の技術面ほぼ全てをになっていると言っても過言では無いのですよ?そんな魔法研究所にそのような要請をしたら、機嫌を損ねて特に軍事で支障がでるのでは?」


まあ、魔法研究所が私を取られたくらいで怒るとは思えないけどね。


「ぐう…それならどうすればいいというのだ!」


オスカル殿下のそういう素直に人の意見を聞くところは嫌いじゃない。


「ふーむ…ではこうしませんか?実は私、まだ魔法研究所での役職は決まっていないんです。それで今日受けたテストの成績で決めることになっているのですが、もし私が雑用の仕事しか与えられなかったら私は魔法研究所の入所を諦めてオスカル殿下と改めて婚約を結びます。雑用係を取られていちいち怒る人はそういないでしょうからね。反対に、研究員か研究員見習いになれた場合は婚約は諦めていただきます。どうでしょうか?」

「…婚約できなかった場合私はどうすればいいのだ?」

「それは頑張ってくださいとしか…そもそも、なぜそんなに殿下が焦っているのですか?特に後宮の管理を任されているとかそういう訳では無かったですよね?」

「それは…婚約破棄のことを父上に報告したら、お前との婚約破棄はまずいと言われ叱られたのだ!そして私自身で連れ戻してこいと…!だからお前が戻ってこなかったら私はまた怒られる!」


つまり皇帝にこれ以上怒られるのが嫌で焦っている、と。


なんだか友達と喧嘩しちゃって母親に"ごめんなさいしてきなさい!"って言われた子どもみたいになってるな…


「なるほど…でもそれなら私には余計に関係ありませんね。」

「そんな…」

「とにかく、こちらも妥協案を出しましたのでご判断ください、オスカル殿下。」

「…わかった。お前の案を飲もう」

「ありがとうございます」


――――――――


「では、また来る」

「はい、リナの婚約者としてならいつでも歓迎致します」

「ぐ………では。」


そう言ってオスカル殿下は帰っていった。


「シェリーお姉様!」

「リナ」

「大丈夫でしたか?無理な要求はされませんでしたか?」

「大丈夫だよ、ひと段落着いたから。」

「それならよいのですが…」

「疲れたし、戻ろうか」

「はい!」


さて、勢いで殿下と約束しちゃったけどテストの結果どうなるかな……まあとりあえず結果が分かってから考えればいいか。

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